ENCOUNTER 9
キラはアスランをAA内で宛がわれた士官室に案内していた。
アスランもラクス同様コーディネイターという事で色々と問題が起るかもしれないという意見から、皆で寝泊りするような共同部屋ではなかった。
キラは少しだけ残念な気持ちになる。
アスランにしろ、ラクスにしろ決して危害を自分から与えたりする人ではないという事をキラは充分理解しているが、戦争中という事もありナチュラルはコーディネイターに対してかなりの敵意を持っている。
それは、昨日の廊下であった出来事が如実に語っていた。
「ねぇキラ、ここ二人部屋だけど俺一人で使用していいのか?」
キラはアスランの声で考え込んでいた意識を現実に戻す。
「あ、うん。一人部屋の士官室は今居る軍の人が全部入っているから」
「そうか」
キラの説明にアスランは特に気にした様子もなく、周りをキョロキョロと見る。監視カメラなどの類が一切無い室内に自分としては好都合だが、敵対する側の民間人を保護するといっても無用心だと思わず思うアスランだった。
一方キラはラクスを初めて部屋に案内した時の様子と酷似している事を思い出して小さく笑う。
「何で笑うんだ?」
キラの笑みを察知したアスランは、キラに振り返ると不思議そうな顔をする。
「あのね、ラクスを初めて案内した時もラクスもアスランみたいに部屋をキョロキョロと見てたんだ。それをちょっと思い出してね」
「そういえば、ラクスがココにいるんだったな」
アスランは、先程の艦長達との事情聴取の時に数日前にラクス・クラインが来ていた事を話していたのを思い出す。何より、今回自分を足つきに来るよう計画を立てた張本人がラクスなのだから、いなければおかしい。
そしてラクスも恐らく自分と同じ様に監視カメラや盗聴器などを探していたのだろう。
「うん!ラクスもいるよ。部屋で大人しくしているかは…わからないけど」
キラは気付けば部屋から抜け出して色々と艦内を散歩しているラクスを思い出し小さく溜息を吐く。
「わからない?」
「気付けばどこかに出歩いているんだ」
「……ラクスは好奇心旺盛だからな」
アスランもラクスの行動パターンには不明な点が多すぎる為、その一言で終わりにする。
「そうなんだ」
キラはアスランの言った「好奇心旺盛」の言葉に納得したのか頷く。
(ラクスが出歩くのだから、盗聴器も無いという事か)
キラからラクスの様子を聞き、アスランは本当にここはただの部屋だという事を理解した。盗聴されている場合迂闊にAAを「足つき」と呼べば怪しまれる為、アスランは敢えてこの艦を『ココ』と言っていたのだが、それは杞憂に終わった。
「キラこっち来て」
何の規制も無いこの状態に満足したアスランはベットに腰掛けると隣をポンポンと叩いてキラを呼び寄せる。
キラは大人しくアスランの横に腰を下ろすと、そのままアスランに抱き倒される。
「うわっ!!」
抱きしめられながら、ベットの上に押し倒される形になりキラはビックリする。
「ア、アスラン!?」
キラは天井から目線をアスランの後頭部に向ける。
「三年も離れてたから、まだキラが足りない」
キラの左肩に顔を寄せながらアスランは呟く。
「キラと離れてから、キラが直ぐ側にいないって事に気付いた時…凄く寂しかった」
「アスラン…」
キラはアスランの背中におずおずと腕を回す。
キラとてアスランと離れていた間どんなに寂しかったかを思い出す。
「僕も…君と離れていた時凄く寂しかったし、悲しかった」
「キラ」
アスランが顔を上げてキラを見つめる。
「会いたかった」
アスランは言いながらキラの額と両頬にキスをする。
キラも両目を閉じてアスランのキスを受け入れる。
「うん。僕も同じだよ」
キラもアスランの額と両頬にキスをし、再び二人は目線を合わせるとクスクスと笑いあう。
「ねぇ、キスしていい」
アスランから突然言われてキラは一瞬キョトンとするが、言われた意味を思い出し顔を真っ赤にする。
実は月にいた頃から二人はキスをしていた。当然、好きの延長という意味で。恋人同士というのでは無かったがお互いに相手を好きだったので、別にキスをしても全く嫌悪感など無かった。
むしろ相手の熱を感じられて嬉しく思ったのだった。それから、二人きりの時は良くキスをしていたのだった。
「キラ?」
耳まで赤くしながら俯くキラを内心「可愛い」と思いながら、アスランはキラにお伺いをたてる。
「………うん」
キラは真っ赤に染まったを俯かせながら了承する。
「キラ、それじゃキスできないよ」
アスランは一向に顔を上げないキラに苦笑しながら、だけど瞳は蕩ける程優しい色でキラの顎を持ち上げる。
「キラ…」
アスランの少し熱っぽい声を聞き、キラは両目を閉じる。
それが合図のように、二人は唇を重ね合わせた。
何度か啄ばむキスを送られ、キラは無意識に唇を薄く開けると、アスランはキラの口内に舌を差し込み、キラの舌に絡める。
「んんっ…ぅ…!?」
キラは突然ぬるりとした存在が口の中に入り、自分の舌に絡まる存在にビックリして思わず舌を引っ込めようとするが、キツク吸われて身体から力が抜けてしまう。
アスランはキラの身体の力が抜けた事に気付くと、一旦唇を僅かに離しキラに呼吸させ更に口付けを深くする。
「ふぁ…ぁ……、んぅ…ぅ…」
歯列をなぞり、舌を絡み取られ、互いの唾液が混ざキラの顎から溢れる。
何度も合わさる唇の角度を変えられ、キラは頭の芯がぼぉっとしてくる。
既に身体には全く力が入らず、アスランにされるがままの状態になっていた。
「…ぁ……」
アスランが唇を離しようやく長い口付けから開放され、キラは今まで上手く息継ぎができなかったので酸素を取り込もうと大きく肩で息をする。
ようやく呼吸が落ち着いたキラは間近にあるアスランを見て顔を真っ赤にすると目線をアスランから外す。
今までただ唇を合わせるだけのフレンチキスしかお互いにした事が無かったのに、いきなり舌を入れられてあんなに深い口付けにキラは恥ずかしくて正直、どうしていいのか分からなかった。だが、アスランはキラから目を逸らされ切なげな顔を浮かべる。
「嫌だった?」
アスランの言葉にキラは不思議そうな顔で顔を上げる。
「キス、嫌だった?気持ち悪かった?」
キラはアスランの言葉の意味を考え、自分が思ったままの事をそのまま声にした。
「嫌…じゃないし、気持ち悪いなんて全然思ってないよ!ちょっとビックリした…あと…恥ずかしかったケド」
「良かった」
アスランはキラの気持ちを聞いて胸を撫で下ろす。
「アスランにされて嫌な事やまして気持ち悪いなんて事一回だって無いからね!」
「俺もだよ。キラにされて嫌だったり気持ち悪いなんて思うことなんて無いよ」
キラの必死な顔にアスランは破顔する。
「またしてもいい?」
アスランのお願いにキラが頷くと、唇に音の鳴るキスが送られた。
「大好きだよキラ」
「僕もアスランが大好きだよ」
唇が離れ二人はまた幸せそうに微笑んだ。
「ねぇアスラン、どうして君はAAに来たの?」
ベットの上でアスランの胸に凭れる格好で抱きしめられながら、キラはずっと聞かなければならないと思っていた事をアスランに問う。
「さっき言っただろう?『シャトルでトラブルがあって、救助信号を出したらたまたまこの船が拾ってくれただけ』だって」
「そんな嘘僕に通用すると思ってるの?アスランに限って乗る前に動作確認やをしないなんて事まず無いでしょ。それに少しのトラブルなら自分で直せるんだから。何よりザフトに連絡を取る手段なんて君なら簡単にできるでしょ」
「キラにはお見通しなんだな」
アスランは苦笑を浮かべる。
「もう!君はザフトの軍人なんだよ。もし、その事がバレたら捕虜にされちゃうんだよ!それにアスランはイージスのパイロットじゃないか」
普通に考えればこの状況はかなりアスランに分が悪い。
アスランと一緒にいられるのはとても嬉しいのだが、今の状況は非常に危険なのだ。
「今は休暇中だから一応軍人として足つきには来ていないよ」
だが、アスランは敢えてはぐらかす。
「そういう事じゃなくて…もしアスランが捕まっちゃったら僕はどうしたらいいの?」
キラは目に涙を溜めてアスランを見る。
「キラ。大丈夫。大丈夫だから」
「でも…」
「本当に大丈夫なんだよ。キラは少し心配しすぎ」
アスランは苦笑すると、耳元で「でも心配してくれて嬉しい」と囁くとフッと息を吹きかける。
「――っつ!アスラン////」
キラはビクリと小さく身体を揺らすと、アスランを軽く睨む。
「もう知らないからね」
「本当に大丈夫なんだよ。俺の正体を足つきにいる誰かに聞かれていなければね」
「僕、アスランがザフトだってこと絶対に言わないもん!」
アスランの言葉にキラは即答で断言する。
「キラが誰かに言うって事は考えてないよ。まぁこの部屋かラクスの部屋で大声で話さなければ大丈夫だよ」
「君ね…」
何処からくるのかと思える程自信満々に言うアスランにキラは呆れた声を出す。だが、内心今でも変わらず自分を信頼してくれる事が嬉しくて仕方ない。勿論アスランにはそんな事思っているというのは内緒だ。
(本当に計画通りだから問題は今の所ないからな)
キラには大変な事態だと思っているらしいが、アスランはきちんと計画を立てて来たので特に問題は無かった。
キラが自分がザフトの人間だと話さない限りバレる事は無いので(キラが話す事は100%無いだろうが)このまま暫く様子を見る。
それに何よりタイミングが重要なのだ。今はまだその時期では無い事はアスランが一番分かっている。
アスランは今回キラを地球軍から離すという計画を実行する為に敵艦であるAAに乗り込んで来た事を一人の人物を除いた他、艦内の人間は誰も知らないのだ。
「そうだっアスラン、ラクスの所に行かないと」
アスランの腕の中からキラが思い出したかのように言う。
「そうだね」
アスランも自分が既にに足つきにいる事を知っており、来るのを待っているであろうラクスを思い出し名残惜しいがキラから腕を離す。
「ラクスもアスランに会いたがっているよ……『婚約者』なんでしょ?」
キラは自分で言いながら胸がツキンと痛む。
ラクスからいくら自分達は表面上だけの付き合いと言っていても、アスランはもしかしたら違うかもしれないと思う。
「ラクスから聞いたのか?」
「うん」
キラは素直に頷く。
「婚約者と親が勝手に決めた相手表面上で実際にお互いにその意思は無いよ。ラクスもそう言ってただろう」
アスランは自信有り気にキラに告げる。
「ラクスも言ってたけど…」
「ラクスも俺を応援してくれているから、婚約もその内二人で白紙にする予定なんだよ」
話しながらアスランはキラの頬を撫でる。
「それに俺の一番はキラだからね」
だから結婚はしないよ。と囁くアスランにキラは林檎のように顔を真っ赤に染めたのだった。
「今日は赤くなってばかりだね」
「君のせいでしょ!」
未だ赤くなっている頬を指先で突きながらアスランは面白そうに笑う。
キラはムキになり更に顔を赤くすし、ますますアスランにからかわれるのだった。
「ほらキラ、もうむくれない。可愛い顔が台無しだよ」
「可愛くないから構わない」
キラは顔を横に背けたままアスランと視線を合わせない。
「そんな事言わないの」
アスランはキラをからかい過ぎた事に内心やり過ぎたと思いながらも、キラを両頬を両手で包むと半ば強引に自分の方へと顔を向かせる。
「ごめんね。少しからかい過ぎた」
アスランはキラの顔を覗き込む。
「…アスランが謝ったから許してあげる」
唇を尖らして仕方ないとばかりの台詞だが、声はとても嬉しそうな音色でキラはアスランの鼻先にチュっとキスをする。
「ありがとう」
アスランもお返しにキラの唇にキスをする。
「それじゃぁ、ラクスの所に行こうか」
キラが何か言う前いアスランはキラの腕を引っ張りベットから立ち上がらせる。
そして二人はラクスの部屋へと向かうのだった。
コメント
バカップルです!もう書いていて自分がヤバイと思いました。糖度は少し高めです。でもこれから二人はこんな感じです。
取り合えず、キスシーンを入れてみましたが甘くなっているのか微妙。
一応二人は月にいた頃からキスは当り前という設定で…それ以上はさすがにまだやっていません(断言)
これから先に進むかな…進めないといけないのか!?そこら辺はまだ決まってないので気分でいきます。