Encounter 6
『救命ポットに乗ってAAに来てください』
「俺が救命ポットに乗って足つきに行くんですか?」
アスランは思わず大声で聞き返す。
「その通りですわ。私は別にイージスでも良いのですが、そうしますとアスランが捕虜という事になってしまいますので、救命ポットが無難だと思いました」
相手もそんな事を気にするでもなくきちんと答える。
「…ラクス」
おそらく今両手を合わせて名案を思いついた顔をしているのだろう相手を想像し、アスランは本気で頭痛がしてきた。
「俺は軍人です。その前に、二度も救命ポットが落ちていて、しかもコーディネイターが現れれば連中だって不振に思うでしょう」
アスランは自分自身にも言い聞かすように話す。
「それは多分、問題無いとは思います」
「理由を聞いてもいいですか」
ラクスの妙に自身のある口調にアスランは疑問に思う。
「キラは以前オーブのヘリオポリスの救命ポットを拾っていましたの。そして今回は私の救命ポットを拾いましたし、今更一つ増えた所で問題ないですわ!…キラが物を拾うのは既に公認ですし」
「はぁ…」
ラクスの言い分に如何なものかと考えながらも、キラの優しい性格が変わっていない事にアスランは嬉しくなる。
「アスランは確か今日から休暇が2週間でしたわね。でしたらシャトルに乗り、何処かでシャトルを下ろし救命ポットを、AAの軌道上で浮遊させておいて下さい」
アスランがキラの事を思い出していると、ラクスがどんどんと今後の予定を伝えてくる。
「ちょっと待ってください。何で俺の休暇を把握している…いや、それよりも、俺は足つきにはいけません」
「何故ですの?」
「何故って…幾ら休暇とはいえ俺はザフトの軍人です。それに今は足つきは敵です。何より…キラは俺が会いに行っても…困るだけだと思います。あいつは“守りたい友達”の為に戦っているんですから」
アスランはキラから言われた「守りたい友達がいる」という台詞を聞いてショックを受けた。今までキラの親友だと思っていたのは自分の思い込みだと思い知らされた。
それに会いに行っても、キラはきっと自分がザフトの軍人である事を直ぐに地球軍の奴等に話すかもしれない。もうキラと俺は認めたくないが、立場は敵同士という関係になってしまったのだから。
アスランは一人考え込んでいると、目の前にいるハロの目がピカピカと光り始める。
「こんな機能付けた覚えはないぞ?」
「わたくしが付けました」
一人言に返事が返ってきてアスランは驚くが、それよりもラクスが通信機能以外に他に何を付けたのかが気になりそのまま黙る。
「通信機能と映像機能を新たに加えましたの。映像と言ってもそんなに綺麗なものではありませんけど。まだAD…西暦と言われた時の『映画』というのを見る為の映写機というのと同じ機能ですわ。面白そうでしたので、お願いして付けて貰いましたの」
「あぁ、確かそんなものがありましたね」
アスランは資料で見たことのある、大きな白い布に向かってフィルムというので映像を出す機械の事を思い出す。
だが、それを作らされた人物は非常に苦労をしたんだろうなぁとアスランは頭の隅でふと思った。今の技術より遥かに劣るモノをこの時代の部品で作るのだから…。
「私のピンクちゃんは録画機能がありますので、録画したデータを相手のハロに通信で送れますの」
「…それで今画像をこっちに転送しているんですか」
ラクスの説明と目の前のハロを見てアスランは理解する。
「その通りです。うじうじと後ろ向きな貴方の考え方を治すにはいい機会ですわ。キラが好きならもっと大胆になったらどうですか」
ラクスは強い口調でだが、どこか呆れを含んだ声で告げる。
「それに…キラの言っていた守りたい友達がどういう存在かを貴方は知るべきですわ」
「ラクス?」
僅かに間を空けたラクスにアスランは不思議に思ったが、ハロの目から出た光が壁に移り映像が出てくる。
アスランは映画は暗室で見るモノだという事を思い出したが、どうやら明るい室内でもハッキリと映像が見える仕様になっていた。
そしてラクスが録画した足つきの様子をアスランは黙って自室で見るのだった。
「これが、キラの守りたい友達…?」
映像が終わり、アスランは自分右手を爪が食い込む程強く握り締める。
「こんな奴等がキラと一緒に……」
アスランはラクスから送られた映像を思い出す。内容はあまりにもキラに取っては幸せな環境とは言い難いものだった。
『何よ!コーディネイターなんて遺伝子操作して作られた化け物じゃない!!』
『やっぱりコーディネイター同士だから気楽に話せるんじゃないのかな』
『コーディネイターとナチュラルには差があると思った』
『キラにもキラの事情があるんだろ。俺達がどうこう言ったってキラにしかキラの気持ちは分からないんだ』
『それにキラは私達を守る為にMSにも乗っているんだもの…友達じゃなかったらそんな事普通しないわ』
ラクスから送られて来た映像はキラの守りたい“友人”が映っていた。
だが、その内容は誰もがキラの事など考えてもいない。
自分達の意見だけを言って、納得して、キラの意見などまるで無い。
そしてコーディネイターとナチュラルの差を埋めようともしない。
アスランはキラが守りたいと思う人物の姿を一部だが垣間見て、激しい怒りに駆られる。
だが、直ぐにこんな中にいるキラを思い、心配になる。
「ラクス…キラはこの事は?」
アスランはキラがこの会話を聞いて、傷ついているかもしれないと心配になる。
「実は初めの紅い髪の方がいた時はキラ一緒でした。その後の会話の時はキラはいませんでした」
「そう…ですか」
アスランは初めのあの映像の時にキラがいた事を知り、自分が守れなかった事に酷く後悔する。
「アスラン、これでもまだキラの元に来る気はないと?」
ラクスはあくまでAAではなく、キラの側にと告げる。
「勿論…行きます。キラの元に」
「ふふふ。それでこそアスランですわ」
アスランの返事を聞き、ラクスは満足する。
「ですが、さっきの作戦は少々リスクが多いです」
「何か良い案があるのですね」
「えぇ。俺の一人乗りシャトルを使います。あれなら母の墓参りで使うので誰も不振に思う者もいないでしょう。何より、シャトルを弄って足つきの軌道上に浮かばせて置けば問題ないと思います。一人乗りシャトルは軍の私物ではないので、直ぐに攻撃されて打ち落とされるという確率は低いでしょうし」
「そうですわね。アスランの作戦の方が直ぐにできますね」
ラクスはアスランの提案を良案として受け入れる。
「でしたら、早速これから準備しますので、今の足つきの位置と明日の軌道を教えて下さい」
「あら、明日来られるんですか?」
「勿論です。キラが傷ついているのに放ってなんておけません」
キッパリと言い切るアスランにラクスは小さく笑う。
「では、アスランが来るまでは私がキラを慰めておりますわ」
「ラクス!?」
「ふふ、安心して下さいな。アスランとキラの事は応援していますのよ。お二人には是非一緒に幸せになって貰いたいですから」
やはり何処か黒い部分が垣間見えた気がしたがアスランはその思いを無視する事に決めた。
「…言葉通りに受け取らせて貰います」
「あら、それ以外に何か意味がありまして」
「…いえ、別に」
アスランは盛大な溜息を吐きつつも、AAへ向かう為の準備の為ラクスと計画を経てるのだった。
コメント
突っ込み所満載…もう引き返せないのでオカシイまま突っ走ります(汗)
今はADで合ってますよね?西暦だし、確かADの語源はラテン語で『Anno Domini 』主の年って意味だった気がします。主とはいわずと知れたキリストですけど。私はあまり詳しくないので、違ってたらすみません。でもBCが紀元前でBefore Christなのは覚えてます。何で紀元前が英語で紀元後がラテン語なのかがサッパリ分からないけど。
ハロは何となく映写機…すみません。もうネタが思いつかない。初めはテレビ電話みたいなのにしようかな〜とか思ったのですが、ハロのどこに付ければいいのか正直分かりませんでした。
そろそろラクスの出番も少なくなるかな…アスキラにが無いのでかなり困ってます(滝汗)