Encounter 2
食堂で話し込んでいた二人をフラガが少し呆れた口調で付いて来る様言われ、二人はフラガの後をついていき、一つの部屋に入った。
そして、ラクスは救命ポットに乗った経緯などを艦長、副長、そしてフラガに話した。
ラクスの地球軍に襲われたという話を聞いて、マリュー達3人が険しい顔をしたが、ラクスは終始穏やかに話していた。
艦長達の話し合いの結果ラクスは「人道的保護」という事でAAで客人として受け入れられたのだった。
「ここが私の部屋ですか」
ラクスが士官室にはいると部屋の中を見回す。
ハロも部屋の中でポンポンと飛び回る。
「できればここで待っていて下さい。あまり外に出ると危険ですし」
キラはラクスがコーディネイターという事で傷つけられる事を遠まわしに言い渡す。
「戦艦ですので危険だと思いますが、艦内でしたら問題ないと思うのですが?」
だが、キラの言葉の裏にラクスは気付いていないのか、ほえほえとした口調で返答する。
「…でも…ここには…コーディネイターは少ないので…」
キラは目線を床に向け、ラクスに言う。
ナチュラルのコーディネイターへの風当たりは決して良くない事はキラが一番身を持って知っている。
ラクスには言葉の暴力で傷ついて貰いたくないとキラは一人思う。
「でしたら、キラと一緒なら外に出ても大丈夫ですわね」
ラクスはポンと両手を叩き名案を思いついたかのようにキラに言う。
ニコニコと屈託の無い笑みで微笑まれてはキラももう何も言えなかった。
「…わかりました。出かける時は一緒に行きましょう。但し、戦闘中は決して外に出ないで下さいね。貴方に何かあると…悲しむ人たちが沢山いるんですし」
キラは渋々了承という形でラクスの意見を受け入れる。そしてラクスにもし何かあったらとてもじゃないけど、アスランに顔向けができない。
「それはキラも同じですわ。キラに危険な事が及んだら悲しむ人がいますわ。私もキラも同じですのよ」
ラクスはハッキリとした口調でキラに諭す。
「少なくても、もしキラが危ない目にあったら私はアスランに殺されてしまいますわね」
「はぁ…」
ラクスの言葉にキラは曖昧な笑みを浮かべるしかできなっかった。
その後、部屋にマリューがやってきて、ラクスは「キラと一緒なら艦内を歩く事」を半ば強引とでも言っていいかもしれない方法でもぎ取った。
マリューは疲れた顔で『でも、なるべくなら室内で大人しくしていて下さい』とだけ言い部屋を出て行った。
キラはマリューのその表情を見て、物凄く同情した。
キラは先程までの遣り取りを思い出す。
「貴方は客人ですが、ここは地球軍の戦艦の中なんです」
「それは説明して頂きましたので分かっておりますわ」
「でしたら、コーディネイターという立場だけで危険という事もお分かりになりますね」
「それは理解しております。今の戦争はナチュラルとコーディネイターという事で起きておりますので」
「それでは私の意見を受け入れて頂きたい」
「先程、キラと一緒でしたら外に出歩くという事をお願いしましたら、キラは了承して下さいました」
「キラ君…」
「…すみません」
「キラも私と同じコーディネイターですわ。でしたキラと一緒に行動すれば問題ないのでは?」
「確かにキラ君はコーディネイターですが…」
「なら、一人では無く二人でしたら大丈夫だと思うのですが。それにキラのお友達もいますし」
言っている意味が通じていない状態な上、終始邪気の無い笑顔で言われ、しかもその内容があまり反発できるものでは無いのと、おそらくマリューの性格が軍人にしては優しすぎる為、不承不承という形でマリューはラクスの意見を飲んだ。
「但し、戦闘時はかならず部屋にいて頂く事と、ブリッジと格納庫は危険ですので許可無く入らないで下さい。そしてもし何か…攻撃的な事態になりましたら直ぐに言って下さい」
マリューは真剣にラクスに話す。
「わかりました。では早速ですがキラでかけましょう」
「え!?」
「キラがいれば出歩いて大丈夫なのでしょう。いつキラがお仕事になってしまうか分かりませんもの」
と、いう感じで今に至る。
「ではキラ、案内して下さいな」
「…分かりました」
ラクスの有無を言わせない笑顔にキラは逆らえる事なく、ザフトの歌姫に地球軍の戦艦を案内する事が決まったのだった。
取り合えずランドリー、シャワールームや休憩所など共用場所を案内する。
キラの顔には困憊が色濃く出ていた。
ラクスを案内すると同時にハロがあちこち跳ぶし喚くしでキラは終始謝ってばかりだった。
「次は何処に案内して下さるのですか?」
ラクスは本当に楽しそうにあちこち見ながらキラに話しかける。
勿論、ハロもあちこち跳び回っているがもうキラには止めようという気力が無かった。
「次は食堂を案内しますね。できれば…ハロをなるべく大人しくさせてくれると有り難いんですけど」
一応食事してると思うので…。小さな呟きはラクスに聞こえたかは分からないが、ラクスは「ピンクちゃん少し大人しくしていて下さいね」とハロに声をかけてる。
『ミトメタクナーイ、ミトメタクナーイ』
ハロはラクスの声を聞きながらそれだけ音声を出すと直ぐに大人しくなった。
キラはその光景を見て少しだけホッと胸を撫で下ろした。
これで少しだけ気を揉まれずに案内できると内心思いながら…。
「何でコーディネイターが客人としてこの艦にいるのよ!納得できないわ!!」
食堂に続く廊下を歩いていると、キラの耳に聞き覚えのある少女の声が入ってくる。
そしてその放たれた言葉にキラは顔を辛そうに歪める。
「キラ、どうかしましたの?」
突然立ち止まったキラにラクスは小首を傾げてキラを見上げる。
「…あの、食堂はまた今度にしませんか」
キラはこのまま食堂に行けばラクスが辛い目に合う事が分かり今日はこのまま部屋に戻ろうと提案する。
「大体、私達はコーディネイターを倒す為に戦っているのに、何で敵であるコーディネイターを保護しなきゃなんないのよ!捕虜にして閉じ込めておくべきだわ!」
「フレイ、あなた言いすぎよ!」
「――ッ」
キラはビクリと肩を震わす。
聞き覚えのある二人の声、それはヘリオポリスにいた頃自分が密かに憧れていた少女であるフレイと友達のミリアリアの声だった。
だが、フレイから言われた言葉はキラにとっては信じられない言葉だった。
幾ら戦争をしているからと言って、民間人までも捕虜扱いにしろという言葉にキラは激しいショックを受ける。
「まぁ、あちらにどなたか人がいますのね。私、お話したいですわ」
ラクスは食堂から聞こえた声を耳にして、キラの横を通り抜けるとそのまま食堂に向かっていく。
「ちょっ、ラクス!」
キラは食堂に向かうラクスを慌てて追いかける。とはいっても、無重力なので床を蹴るだけだったりするのだが。
「何よ!コーディネイターなんて遺伝子操作して作られた化け物じゃない!!」
キラが食堂の入り口に着くのと同時にフレイの叫び声が室内に響き渡る。
食堂の中が一気に静まり返る。
食堂には幸いな事にカレッジグループの5人だけがいた。
一つのテーブルを挟んでフレイとサイ、トールとミリアリアとカズイで立っていた。
そんな中キラはフレイの言葉に頭が真っ白になる。
――コーディネイター ハ イデンシソウサシテツクラレタ バケモノ…
ズキン、ズキン…とキラは自分の胸が痛みだすのを耐えながらも、無意識に右手を胸に当てる。
「フレイ、いい加減にしろよ!」
静寂をやぶったのはトールの声だった。
トールは眉を寄せてフレイにキツイ口調で言い放つ。
「何よっ、私が間違ってるとでも言うの!」
フレイがそんなトールの言葉にムッとしながら反論する。
「大体、キラだって同じコーディネイターなんだぞ!アイツの事も化け物だなんて……キラっ!」
「「「え!?」」」
トールがフレイから目線を外し、食堂の入り口に目を向けるとそこには自分の友人であるキラと、客人として保護されたコーディネイターの少女がいた。
そして他の4人も入り口を見て驚く。
「あっ…あの、その……フレイはちょっと気が立ってただけで、悪気はないんだけど二人共嫌な気分にさせちゃってごめんなさい」
「そうだぜ。俺達からみてもキラと…ラクスさんだっけ?別にその…全然…化け物ってもんじゃないんだから」
ミリアリアとトールが焦った様にキラ達に向かってに話す。カズイもコクコクと頷いて同意する。
「トールとミリアリアの言う通りだ。フレイは…少し神経質になってるだけだから。な、フレイ」
サイはすまなそうに言いながら、自分の隣に立っているフレイの肩に手を置く。
「う…ん…分かってるから」
キラは一生懸命自分達に対してすまなそうに言う友人達に向かって、精一杯の笑みを浮かべる。
キラの言葉を聞いて、5人は安堵の笑みを浮かべる。
「……で………に…」
「フレイ?」
一人俯いたままのフレイのから小さく漏れた呟きをサイは耳にし、フレイに呼びかける。
「…な…んでっ、何で、何で皆して、この二人をっ、コーディネイターを庇うのよ!私は間違った事なんて言ってないわ!コーディネイターがいるから戦争が始まったんじゃないの!」
フレイはキッとキラを睨み付けながら捲くし立てる。
キラは思わずフレイの目から顔を逸らして床を見つめる。
自分が一時でも憧れていた人物からの思いもしない言葉の暴力を直接受け取り、このまま直ぐにでもこの場を離れたい思いでいっぱいになる。
「キラ…大丈夫ですわ。そんな顔しないで下さいな」
隣から優しい声をかけられ、キラは自分の隣にいるラクスを見る。
「あっ…その…」
ラクスもコーディネイターで傷ついていない筈などないのに自分を励ましてくれるラクスにキラは何と言っていいのかわからず、口籠(くちご)もる。
ラクスはそんなキラに優しく微笑むと、食堂の中に入っていく。
フレイの目の前までやってきて、正面に立つとフレイが思い切り身構える。
「なっ、何よっ!アンタなんて怖くないんだからっ!」
ラクスに叫びながらもフレイは隣にいるサイの軍服を握り締める。
「初めまして。私はラクス・クラインと申します。確か…フレイ様と呼ばれておりましたがお間違いありませんでしょうか?」
だが、ラクスはそんなフレイなど一切気にせず笑顔で自己紹介を済ませる。
「アンタになんかに私の名前呼ばれたくないわ」
フレイは半ば怒鳴るようにラクスに言う。
「この子は『ハロ』といいますの。私の大事なお友達ですの」
ラクスはフレイの言葉を気にした様子もなく、ポンポンと周りを跳ねるハロを両手で抱き上げると、フレイの前に差し出す。
『ハロ!ハロォ〜!ゲンキー!』
するとハロが耳をパカパカさせながらラクスの手から離れるとフレイの元へと跳んでいく。
『ア・ソ・ボ!ア・ソ・ボ!』
ぴょんぴょんと飛び跳ねるハロにラクスは「ハロはフレイ様が気に入ったみたですわね」と楽しそうに言う。
そしてハロがフレイに飛びつこうとした途端、フレイは思い切りハロをテーブルの上に叩き倒す。
ガンッという鈍い音が聞こえると同時にフレイはラクスを思い切り睨み付ける。
「私にそんな得体のしれない機械を近付けさせないで!飛び跳ねて攻撃でもされたらたまったものじゃないわ!
「私は攻撃など考えてなどおりません」
ラクスは微笑みを崩さずフレイを見る。
怒りなど微塵にも感じさせない程の穏やかに話すラクスに、フレイは更に苛立ちを感じていた。
「そんな顔してっ…アンタ私がナチュラルだからって見下してるんでしょ!コーディネイターは心まで広いって事?冗談じゃないわ!」
「ちょっとフレイ、あなた本当にいい加減にしなさいよ!彼女は別にフレイの事何も言ってないじゃないの」
フレイの余りの態度にミリアリアが窘(たしな)める。それに同意するようにトールも「ミリィの言う通りだ」と同意する。
「なによっ……私は悪くないんだからっ!」
フレイは目の前にいるラクスの横を通り抜けると、入り口にいるキラにキツイ視線を向けてそのまま食堂を後にした。
「フレイっ」
サイもフレイの後を追うように食堂を後にするのだった。
コメント
AAの中に休憩所ってあるのかな?まぁ…書いている奴がアバウト過ぎなのでできれば見逃して下さい。お願いします。
ラクス出番多くなってしまった。キラ出番少ないし。アスランは出番なし(汗)
フレイ嬢登場です!彼女にはキツイ事を言って貰わないと先が進まないので頑張りました。ハロを叩き倒す彼女が実は書いてみたかったので、入れちゃいました。
ウチのキラはアスランに甘やかされて育ったので、基本的に守られている側の人間です。ラクスも同じ立場ですが、キラはアスランに物凄く過保護に育てられたので普通の人より数段弱い設定。
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