ENCOUNTER 14
アスランは一人自室で通信機を片手に持ちながら連絡を取る。
そして通信が繋がると、モニターには若草色の髪をした少年が柔らかい笑みを浮かべていた。
「久しぶりニコル」
「どうやら成功は…しているみたいですね」
若草色の髪の少年、ニコルはニッコリと笑みを浮かべた。
「と、まぁ状況はこんななんで、できるだけ早めに来て貰いたい」
一通りアスランは今までの出来事などをニコルに報告する。
ニコルはアスランから告げられた、AAの内情を聞きコーディネイターに対してとても宜しくない環境だという事が話を少し聞いただけで直ぐに分かった。
「…想像以上にハードだったんですね」
ニコルの答えにアスランは苦笑で返事を返した。
「それにしても通信機よく使えましたね。普通没収される物だと思うのですが…」
自前の小型通信機を使用して話しているアスランを見てニコルは当然の疑問をぶつける。
「あぁ、荷物検査が無かったから持って来た荷物は全部手元にある」
アスランはAAに来た時の状況を思い出す。
「事情聴取をして部屋に連れて行かれて後はもう自由に出歩きできたからな」
アスランはここ数日の艦内での生活を思い出しながら答える。
「…戦艦なんですよね?」
「あぁ」
ニコルの溜息まじりの声にアスランは肯定した。
「警備が厳しいより甘いほうが行動を起こしやすいので僕には有難いです。では、開始日時は現在アスランから教えて貰った足つきの位置からだと急いだ状態だと4日後に合流できそうです」
ニコルが通信機越しにいつもと変わらぬ笑みを浮かべてアスランに問う。だが彼の瞳は真剣だった。
「了解。こちらからも定期的に連絡を入れる」
「分かりました。ですが、仮にも敵軍の戦艦内ですので気をつけて下さい」
「あぁ。分かった」
「イザークとディアッカには今回の事は話しておきますか?今の段階ではまだ僕しか知らないのですが、一応彼等にも言った方が後々が楽だと思いますよ」
ニコルは思い出したかのように残り2人の同僚の名前を出す。
「…判断はニコルに任せるよ」
アスランはイザークの行動パターンを思い出して大きく溜息を吐く。
足つきの中に居る状態だったら勿論突っかかってくる。かと言って言わなければ後から知る事実と彼等に伝えなかった事でやはり突っかかってくるのだ。
昔から自分の行う事に対してどっちをえらんでも突っかかってくるので、アスランはニコルに一任した。
「ふふふ。アスランも大変ですね。僕の方から上手く説明しておきます」
ニコルが楽しそうに笑いながら話す。
「分かった」
「ではまた近いうちに、ラクス嬢とアスランの大切な幼馴染の方と一緒に会えるのを楽しみにしています」
「あぁ」
ニコルが手を軽く振る映像が表示された後通信が切れたのだった。
「こっちも準備をしておかないとな」
アスランの呟きを耳にする者は誰もいなかった。
「イザーク、ディアッカ!」
ガモフの艦内でニコルは格納庫でデュエルとバスターの調整をしている二人に声をかける。
「何だ?ニコル」
ディアッカがコックピットから顔を出してニコルを見る。イザークも暫くたってから顔を出す。その表情は物凄い不機嫌だったがニコルは気にせず、いつものニコニコとした笑みを浮かべ二人に「大事な話がありますので、待機室まで来て下さい」とだけ伝えて格納庫を後にする。
ニコルの様子にイザークとディアッカは顔を見合わせる。
「話があるならココで話せばいい事だろう」
イザークが眉間に皺を寄せて呟く。
「まぁココじゃ言えない話なんだろうけど…アスランの事かもしれないな」
ディアッカはどこか楽しそうに呟く。
「大体アイツのせいで俺は休暇を駄目にされているんだぞ!ラクス嬢がいなくなったからといって勝手に連絡もせず探しに行くなんて軍人としてあるまじき行為だ!」
イザークは憤りを隠さずに怒鳴る。
そんなイザークを見てディアッカは苦笑する。
「おいおい、俺はかもしれないと言ったんだ。所で俺は待機室に行くけどイザークはどうする?」
ディアッカは退屈な整備を切り上げる口実ができたので早速コックピットから降りる準備をする。
「俺も行く!」
イザークもパネルを数度操作をした後、コックピットから降りる。
そして二人はニコルの待つ待機室へと向かうのだった。
「二人とも来てくれて良かったです」
待機室に現れた、イザークとディアッカを見てニコルはいつもと変わらない笑みを浮かべる。
だが、アカデミーの頃から一緒にいるイザークとディアッカはその表情に何か黒いモノが含まれているのを本能で感じ取った。
((さっさとココから出て行かなくては!!))
イザークとディアッカは同時に心の中で思い、相手の方へと目線を向けると視線が直ぐに合う。
そして二人は互いに頷き、足を一歩後退させる。
「二人共、もちろん僕の話を聞きに来たんですよね。立ち話もなんですから、座って話しましょう」
だが、ニコルはそんな二人の考えを分かっているかのように待機室のソファを指差す。
勿論このまま逃げる事もできるが、そんな事をしたら後で何があるか分からない。
普段は一番温厚な態度で誤魔化しているが、実は一番紅の中では腹黒なニコルをみすみす敵に回すという行為は二人共避けたかった。
二人は逃げ場を絶たれてしまい、ちらりと隣に目線を向けると相手と目が合った。
ディアッカは苦笑、イザークは眉間に思い切り深い縦皺を寄せている。
「まぁ、仕方ないだろう」
ディアッカがイザークの形相を見て小さく溜息を吐きながら諭すように言う。
暗に「諦めて話を聞く」という意味を込めたディアッカの言葉にイザークは小さく舌打ちをすると、そのままソファまで歩みそのまま腰掛ける。
ディアッカもイザークの隣に座ると、ニコルが二人の正面に座る。
「で、堂々と話せない話とは何だ?」
ニコルが座ると同時にイザークが不機嫌な表情を隠さずに問う。
「アスランの事です」
ニコルの言葉にイザークが直ぐに反応する。
「アイツは今何処にいる!休暇中に行方不明の軍人なぞ軍人の風上にもおけん!」
イザークはダンっとテーブルを拳で叩く。
休暇中の間にラクス・クラインが行方不明という事で婚約者であるアスランのいるクルーゼ隊がラクス嬢を探す任務を急に任されたのはいいが、肝心のアスランが行方不明状態だったりする。
調べでは、自宅には帰っていないらしく、アスランの所有する小型シャトルが無くなっている事が判明したが行き先も分からない。レーダーで探しても見つからず、通信機で連絡をしても応答が全く無い状態で、現在クルーゼ隊はラクス嬢とアスランの捜査任務をしているといっても過言ではなかった。
「アスランの居場所なら僕は知ってます」
「何だと!」
ニコルの返答に、イザークとディアッカは驚く。
「奴は今何処にいる!!」
イザークがニコルに掴みかからんばかりの勢いで問い詰める。
だが、ニコルから告げられた事実に更に二人は驚く事になる。
「アスランは今足つきにいます。そしてラクス嬢も一緒です」
「アスランもやるねぇ」
ディアッカはヒュ〜と口笛を吹きながら茶化す。
イザークはその場で固まってしまっている。実は密かにラクスのファンだったりするイザーク・ジュールだった。
「言っておきますが、二人で旅行をしていたというのでは無いです。事の起こりはラクス嬢が追悼慰霊の為ユニウスセブンに向かう途中、事故があり足つきに保護されたらしいです。そして偶然足つきの中にアスランの幼馴染も乗っていたんです。所詮ナチュラルとコーディネイターという事で環境的にあまり良いとは言えない状態でアスランはラクス嬢に呼び出されて足つきに向かったと…短く纏めると内容はこんな感じです」
ニコルの話を聞いていてあまりの無いように二人共驚愕する。
「あ〜……それってマジ?」
ディアッカが何とも言えない表情でニコルに問う。
何せニコルの話では、探し人二人共現在、敵対している足つきの中に居るのだ。普通に考えて状況としてはかなりヤバイ。
「本当です。ただアスランはどうやら軍人とはバレていないみたいです」
ニコルの何処か的のずれた言葉に二人は脱力する。
「何を考えているんだ!アスランは!!」
正気に戻ったイザークは今度こそ怒りを露に怒鳴る。
「まぁまぁイザーク…少し落ち着けって」
ディアッカが吼えるイザークを落ち着かせる。
「そうですよ。それにこれで足つきを完全に落とす事ができるんですから」
「何だと!?」
「どういう事だ?」
二人はニコルに問う。
「アスランとさっき作戦を練っていたんです。但し、二人にも協力して貰わないと成功率は低くなるので協力してください。足つきを落とせる千歳一隅のチャンスかもしれませんよ」
フフフと黒い笑みを隠さず表に出すニコルに二人は聞かなければ良かったと思うが、今まで一行に落とせなかったAAを落とす事ができるという作戦に非常に興味があった。
「…その作戦、詳しく聞いた後協力するか判断をする」
「俺もイザークと同意見。面白い内容だったら乗るぜ」
イザークとディアッカの返答にニコルは満足げに頷き、そして”作戦”を二人に説明するのだった。
トリィが『トリィ』と鳴きながらキラの肩に止まるとキラの頬を嘴で軽く突く。
「トリィ、くすぐったいよ」
キラはトリィの頭部を指先でチョンチョンと突きながらも嬉しそうに目を細める。
『トリィ、トリィ』
トリィは再び鳴くとキラの肩から離れ部屋の中を旋回する。
「トリィはキラが大好きなんですのね」
ラクスが戯れる二人を見て微笑む。
アスランは少し用事があるので一緒に待とうととラクスに言われ、キラはラクスの部屋に来ていた。
「アスランの用事はもう終わるのかな?」
キラは部屋の入り口を見て呟く。
「私にもいつ終わるのかは分かりませんが、用事が終われば直ぐにキラに会いに来ますわ」
ラクスがキラに答える。
「そうだね」
キラはトリィの頭を撫でながら頷くと同時に、部屋のドアが開かれる。
「キラっ!」
ドアの向こうから現れたのはアスランで、キラの名前を呼びながらギュッと両手で抱きしめる。
「アスランもう用事終わったの?」
抱きしめられながらキラはアスランに視線を向ける。
「あぁ。ちょっと協力してくれる仲間と連絡をしてたんだ」
アスランはキラの身体から手を離しすと、そっとキラの左頬に右手を添える。キラもアスランの手の上に自信の手を乗せる。
「そう…」
キラは俯きながら返事を返す。
「大丈夫。誰も死なないし、酷い扱いもしないから」
アスランはキラの唇にチュッと音を鳴らし唇を塞ぐと直ぐに離す。
「ア、アスランっ!!」
「俺を信じて」
真っ赤になり慌てるキラにアスランは笑いを噛み殺す。
「…アスランを疑った事なんて一度も無いよ」
アスランの肩にキラは額を押し付ける。
アスランはそのままキラの背中に両手を回し抱きしめる。
すっかり二人の世界を作り上げるアスランとキラをラクスは嬉しそうに見ていたが、アスランと目が合う。
そしてアスランから唇だけで『四日後』と告げられラクスは頷く。
四日後…それが作戦の決行日。
そしてAAが落とされるまでの日数だった。
コメント
久々の更新。そして尻切れ(汗)何かもう話し進まなくてどうしようです。
でも最終話まであと少しなので頑張ります。
どんどんと原作とかけ離れすぎですが、このまま突っ走ります。
そして地球軍好きの方すみません。ちょっと扱い悪いです。