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デートのその後 



 不動峰中の部長、橘の妹の杏が帰っていった後、コートは静まるものもいれば試合を挑むものと多種様々な光景になった。

「今日はウチに寄っていくよね裕太?」「帰る」

「じゃあ一緒に試合をしようよ」

「ぜってー嫌だ」

 相変わらず弟思い(かなり屈折しているが)な不二がいつもと変わらぬ笑顔で溺愛する弟に話しかける。裕太の方も、今では昔ほど兄の事は嫌いではないが弟という立場で散々色々なことをされているので身の危険を感じて断っている。

「んふっ、だったらまた僕と試合をしない?不二周助君」

 観月はここぞとばかりに不二を誘う。先程から無視されまっくて、相当腹にきているらしく目が据わっている。

「じゃあ一緒に買い物に行かない?」

 だが不二もめげることなく最愛の弟と何とか一生懸命過ごそうと、あの手、この手で誘い出す。

「…買い物だけなら別にいい」

「嬉しいな〜じゃあもう少ししたら行こう」

 不二の“もう少し”という言葉に観月は目を光らせる。

「じゃあ僕と試合の後に兄弟水入らずで買い物でも何でもしてきてくれたまえ」

 観月はラケットを取りにコートの壁に向かっていく。

 そんな観月の存在自体を無視して不二は裕太に尋ねる。

「裕太着替えある?」

「何で着替えなきゃいけないんだよ」

「まさかテニスウェアのまま街で買い物するの?」

「いいだろっ。別に」

「よくないよ。着替えがないなら一度ウチに寄ってから買い物に行こう。母さんがいるから喜ぶだろうな〜母さん裕太があんまり連絡してくれないから寂しがっていたし」

「……わかった」

 母親の名が出てきてしまえば裕太は仕方ないと一度家に帰る事にした。着替えは実家のも置いてあるのだ。寮では殆ど私服は着ないの大半の私服は家に置いてある。

「裕太は本当に家族思いだね」

 ニッコリと綺麗な笑みを浮かべる不二。

「別に」

 照れたように返事を返す裕太。

「取り込み中悪いんだけどさ」

 ふと男にしては少し高めの声が2人に話しかける。声の主は既に制服に着替えたリョーマだった。

「どうしたの越前君」

 ニコニコと不二が笑顔で返す。

「桃センパイ邪魔ナンデ置いて帰ってもイイっスカ」

 対するリョーマは何でもないようにかなり先輩に対するには失礼な内容の話を淡々と話す。

 その会話の内容を聞いて裕太は心の中で

『っていうか、先輩に対しての態度じゃねぇ』

と思った。口に出さないのは一応他校の部員の話だからだ。部外者は口出ししないほうが良いのだと裕太は思った。

 こういう所は不二とは違いまだスレてない裕太の良いところで不二が可愛がっている原因の一つだ。弟の裕太は兄の周助みたいに表と裏を使い分けたりしてない。見事な直球少年なのだ。

「どうして僕に聞くの?」

 不二は表情はそのままでリョーマの質問に質問で返した。

「先輩だから」

「そっか今は僕しかいないもんね」

 どこかひっかかる言い方をする不二に内心リョーマは苛立つ。

「そっス」

 リョーマは返事をして桃城の方を見る。

「いいんじゃない?それに迎えが来るだろうし」

「迎え?」

「うん」

 不二の言葉に疑問を持つが、まぁ不二が置いていってもいいというならきっと平気だろう。命には別状無いと思う。

 リョーマには黙っているが、今テニスコートの入り口である階段の下では乾を初めに、大石、菊丸、河村の4人がいるのだ。もう少ししたらここに来るのは目に見えている。だがそれよりももっと面白い光景が先に見れる事も不二は既に分かっていた。

「ところでリョーマ君は今日の予定あるのかな?」

 人好きの笑顔で不二は訪ねるが、性格をある程度把握しているリョーマは嫌そうな顔をして返事を返す。

「あるっス」

「そうか〜でももう少しここに居てね」

「何で?」

 不二の言葉にリョーマは怒って反抗する。

『折角これから国光の家に行くのに!!』

「どうしても」

 不二は一瞬開眼してから再び笑う。

「…ハイ」

 流石のリョーマも開眼の威力には勝てないらしくおとなしく返事をする。その光景を隣で見ていた裕太はリョーマに少しだけ同情した。

 

 

「桃センパイのせいだからねっ!」

 コートに今の寝転がっている桃城にリョーマは仁王立ちして文句を言う。

「越前。頼む、今はそっとしておいてくれ」

 杏に恋人がいると聞かされショックのど真ん中にいる桃城はリョーマを見てすまないという顔をする。

「じゃあ俺先に帰りますんで」

「マジで?」

「マジっス」

「お前はこんなにボロボロになった先輩を置いて先に返るのか?」

「俺だって今日は予定あったのに誰かさんのせいで今こんな所に居るんだけど」

 越前の言葉に桃城は体を起こし立ち上がる。

「用事あったのか?」

 悪いことをしたな〜と顔にハッキリ出しながら桃城はリョーマに問いかける。

「それも結構大事なね」

 棘を含んだ声音でリョーマは桃城の顔を下から睨みつける。

「悪かった!そんじゃあ帰りに俺が奢ってやる。ついでに慰めてくれよ〜」

「だから俺は用事があるって…」

「でも用事ってもう1時間以上前のだろ」

「でも人と会うし」

「だったら諦めろ。1時間も待っている人間なんてそうそういないぜ。だから俺を慰めてくれよー」

 桃城の言葉にリョーマは時計を見る。たしかに手塚の家に行く約束の時間からは既に1時間は経っている。流石の手塚も1時間も待ってはくれないかもしれない。

『どうしよう…国光きっと怒ってるかな。連絡もしなかったし……俺のこと…嫌いになっちゃうのかな…ヤダよそんなの』

「おい?越前っ!」

 俯いてしまい顔をあげないリョーマに桃城は狼狽える。どうやら自分の言った言葉が彼に何らかのショックを与えてしまったことに後悔する。 

 リョーマは俯いたまま、どんどん悪い方向に考えが向かっている。

「リョーマ」

 対して大きくない声だがとてもよく響く声がいきなりコートの入り口から聞こえた。途端にコートの中にいる全員が声の主の方に振り向く。

 リョーマも顔を上げると、そこには約束の相手がいた。

「くにみつ〜」

 リョーマはそのままダッシュで走っていき思いきり抱きつく。

「「「「「「!?」」」」」」

 不二を覗く全員が一瞬にして固まる。そんなギャラリーはお構いなしにこの2人は会話をはじめた。

「ごめんなさい。連絡しなくて…俺のこともう嫌いになった?」

 手塚は小さい子供にしてあげるようにリョーマを持ち上げて目線を同じ高さにする。リョーマも手塚の肩に両手を起き泣きそうな声で謝罪する。

「桃城のデートに付き合わされたんだろ?」

「何で知ってるの!?」

 まさかの手塚の言葉にリョーマは大きな目を更に大きく見開いた。手塚が今日の事を知っているとは夢にも思わなかったのだ。

「まぁそこら辺は乾がな」

「そうなんだ」

 手塚の答えにリョーマも納得をする。乾なら知っていてもおかしくないと思える人物だからだ。

「もしかして迎えに来てくれたの?」

 リョーマは事情を知っていながらココに来ている手塚に期待を込めて言った。

「当たり前だろう」

 手塚は2人だけの時に見せる穏やかな表情をリョーマに向ける。

「くにみつ大好き〜」

 嬉しさを隠しきれないまま、リョーマはそのまま手塚にガバッと抱きつく。

「俺もだ」

 手塚は嬉しそうにリョーマの頭を撫でるのだった。




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