Excessive worries
今日も部活の終わった男子テニス部の更衣室には大勢の部員達が着替えをしている。
もちろん、レギュラー陣全員もその場にいる。
そして今日もテニス部の王子様であるリョーマの機嫌は最悪だった。
ムスっとしたまま黙々と一人着替えている。
ここ数日手塚が生徒会の仕事で中々部活に参加できなかったのは周囲も知っている。そしてそれが原因でリョーマの機嫌が悪い事も一部の人間は知っていた。
だが、今日は部長である手塚が久々に部活に参加するので皆はリョーマの機嫌が良くなると踏んでいたのだが王子様の機嫌は悪かった。
手塚がいない時と比べて怒りの度合いが低いのだが、それでもムスっとしながらリョーマは一人黙々と着替え始める。
勿論そんなリョーマを可愛がっている先輩達はリョーマの方を遠くから観察しながらコソコソと話し合う。
「ねぇオチビ何であんなに機嫌悪いにゃ?」
「今日は手塚が部活に参加するから機嫌の良さはいつもより80%は上回ると予想していたのだが…外れたな」
「全く手塚は何やってるんだか」
いつもの井戸端会議のメンバー三人(菊丸・乾・不二)はジャージ姿のまま色々と話し合っている。
「おいおい…三人とも着替えないで何やってるんだ?」
副部長兼、メンバーの纏め役でもある大石が不思議そうに輪の中に入ってきた。
「やぁ大石、丁度良いところにきたね」
不二がニコニコといつものつかみ所無い笑顔を大石に向けながらリョーマの方を指で差す。
「越前がどうかしたのか?」
リョーマを見ながら大石は訪ねる。
「オチビ元気無い…っていうか機嫌悪くない?」
「確かに…機嫌が良いとはいえないな」
菊丸の台詞に大石も頷く。
「桃城、何か心当たりはないか?」
大石は後で着替えていた桃城に声をかける。
「俺もわかんないっス!」
桃城はシャツを着ながら首を軽く横に振る。
「部長なら分かるんじゃないっスか?」
桃城の反対側で着替えている海堂が小さく呟く。
「生憎、手塚は今竜崎コーチに呼ばれていてな」
大石は困ったといった風に眉を寄せる。青学の母と呼ばれる気遣い性の大石はどんな些細なことでも自分の事のように気にする男だった。
「大石、そんなに悩まなくても手塚が来れば直ぐに解決すると思うよ」
「まぁそうだな。手塚が来れば越前の機嫌は99%は治るな」
不二と乾の2人にそう言われて大石は「そうだな」と相づちを打つ。
「そろそろ手塚が帰って来るよ」
ドアの近くにいた河村がメンバー達に声をかける。
「越前の機嫌が治るといいんだけどね」
大石同様人の良すぎる河村もリョーマの態度を心配していた。
何はどうあれレギュラー陣達は皆リョーマの事が可愛くて仕方ないのだった。
カチャー
っと部室のドアが開くと同時に皆が手塚の方を見る。
「?」
手塚は一斉に集まる視線に眉を軽く寄せる。
そして自分のロッカーに向かうと着替えを始める。
「ねぇ手塚」
「何だ」
不二が手塚の隣に来るとリョーマの方を視線で促す。
「わかっている」
不二の顔を見て手塚は頷く。
「ならいいんだけど、皆心配してるのを忘れないでね」
不二はニッコリと笑うと手塚の元を離れて自分も着替えを始める。
手塚は不二の台詞を聞いて後を振り返ると、大石が苦笑していた。
「まぁ宜しく頼むよ」
「あぁ」
手塚は急いで制服に着替え終えると、リョーマの元に行く。
「リョーマ」
後から呼ばれてリョーマは首を上げる。
「何?」
いつもならニッコリと笑顔で返事をするリョーマなのだが、やはり機嫌が宜しくないらしく無表情で手塚の顔を見る。
「前を向いてくれ」
手塚はリョーマの髪を撫でると、右手から小さなスプレー缶を取り出しリョーマの背中の中に吹きかけた。
「ひゃ…っ」
突然冷たい感覚が背中を襲いリョーマは躰を強張らせる。
「少しは気持ちよくなったか?」
手塚は小さく笑いながらリョーマの背中にスプレーを何度か吹きかける。
「…何でわかるの?」
リョーマ手塚に背を向けたまま小さく呟く。
「別にリョーマは機嫌悪くはないだろう?」
手塚の台詞に皆がリョーマを一斉に見る。
「まぁね」
リョーマは視線を無視して手塚の方に振り向く。
(((あんなに眉間に皺寄せて、不穏なオーラをばらまいといて機嫌悪く無かったのか?)))
部員達は皆心の中でそう思った。声にだして言うのは何だか自分たちに良からぬ事が起こりそうだったので言えなかった。
一方周囲の様子を全く気にすること無く2人の世界に入りつつあるリョーマと手塚はというと…。
「だからタオルを持ってこいと昨日言っただろう」
「持ってきたんだけど、1枚じゃ全然足らなかったんだもん」
「仕方ないな。両手を上に…バンザイをしてくれ」
リョーマはバンザイの格好をすると、手塚がシャツを脱がせていつの間に用意したのか自分のタオルでリョーマの汗を拭いている。
「ねぇ、今度は俺が国光の体拭きたい!駄目?」
手塚に背中を拭いて貰いながらリョーマはお願いをする。
「別に構わないが、リョーマは届かないと思うのだが」
手塚は苦笑しながらリョーマの背中から腕にタオルを移動させる。
その表情は酷く楽しそうに見えるのはきっと、気のせいでは無い…ハズ。
「モチロン国光は椅子に座ってくれるんでショ?」
リョーマは手塚の腰に腕を回すと首を上げてて少し首を傾ける。
「あぁ。リョーマのお願いだからな」
そんな遣り取りを2人は部室の中で堂々と繰り広げていた。
部員の半数以上がその光景を直視できないというか、見てはいけないものを見たという感じでそそくさと部室を後にした。
一方2人の事情を知っているレギュラー陣達はというと…
「毎回毎回本当に周囲の事を無視してるカップルだね」
不二は開眼モードで手塚とリョーマを見る。
「散々心配させておいて」
何だか黒っぽいオーラが周囲に漂ってきている気がするが、他のメンバー達はこれこそ見て見ぬふりをした。
「まぁまぁ。何はともあれ越前があんなに嬉しそうにしているんだからいいじゃないか。手塚も幸せそうだし」
親友でもある手塚の今まで見たことも無い幸せそうな顔を大石は嬉しそうに見る。
「確かに…手塚と越前のあんな顔は普通に見られるモノではないからな」
乾はノートに書き込みながらも大石に同意する。
「俺も乾と同じ〜オチビのあんな嬉しそうな顔なんて滅多に見られないもんね」
さすがは強者レギュラー陣というべきか、あちこちにピンクのオーラを出しまくっている2人の事を温かい目で見守っている。
そして等の本人達はというと…
「ねぇ?またこういうのやってくれる?」
「リョーマがよければ毎日でも俺は構わないぞ」
「本当!?やっぱり国光が一番好き〜」
「俺もリョーマが一番好きだぞ」
相変わらずのバカップルぶりを発揮していた。
完璧に周りに人がいることも忘れて終始2人の世界に入りっぱなしだった。
「でも流石にここまでやられるとチョットはムカツクな」
誰が言ったがその台詞に部室に残っているレギュラー陣は全員頷いたのだった。
ちなみに他の部員達はとっくの前に帰っていた。不二のオーラが出始める時に皆ダッシュで帰宅したのだった(笑)
翌日。
今日も王様と王子様のラブラブっぷりは健在していた。
ちなみに今日は…
「あ…ここも刺されている〜」
「そうだな」
「もう、国光の体は俺のモノなのに!」
リョーマは手塚の腕にかゆみ止めの薬を塗りながら文句を言う。さっきまでは手塚がリョーマの蚊に刺された所を塗っていたのだが、リョーマが手塚の刺された所を見つけたため、今の現状になっている。
「体だけか?」
手塚は先程のリョーマの台詞に質問をする。
「そんな訳ないじゃん!国光の全部は俺のなの!」
「じゃぁリョーマの全部は俺のモノなのか?」
「当たり前でしょ!」
その勢いは昨日より更に上がっていたのだった。
END
コメント
一体何なんだろう?この話…。自分で書いてて正直自分の頭の中がヤバイと思いました(滝汗)。
こんな話をバイト帰りにチャリこいでで思いつきました(しかも5分以内に)ふと、頭に浮かんだので!
取りあえず久々のバカップルが書けて楽しかったですv