声を聞かせて
「ど〜しよう…」
リョーマはベットの上で何度も寝返りを打ちながら携帯の画面を見つめている。
「でもな〜」
先程から画面を見ながらリョーマは悩んでいた。
その原因は…
「国光の声が聞きたい…ってだけで電話するのも何か恥ずかしいし」
リョーマは小さく呟く。枕に顔を埋めながらも携帯の画面は開きっぱなしで、画面には手塚の番号が出ていた。あとは通話ボタンを押せばいいのだが、リョーマはそれを押すかどうかで迷っていた。
いつもなら電話はしたい時にするのだが、リョーマはちらっと目覚まし時計を見る。
時刻は深夜の1時半過ぎ。普通の人ならとっくに眠りに入っている時間帯だった。
勿論リョーマもいつもならぐっすりとベットの中で寝ているのだが今日は何故か目が冷めてしまった。
「くにみつとあんまり会ってないからかなぁ」
リョーマは寂しそうに画面を見る。
最近は手塚は本当に多忙らしく部活も少しだけ顔を見せるが、直ぐに生徒会室に戻ってしまう。帰りも遅くなるということで一緒に帰れなくなってしまったのだった。
そんな日が今日で丁度一週間続いている。
手塚は学校で一番忙しい生徒だという事もリョーマはわかっていた。
だから電話も安易にはかけられない。疲れている手塚を無理矢理起こすのは悪い気がして仕方が無いのだ。
自分が電話をしても手塚はいつもと変わらず優しくしてくれるのは分かっている。だけどそれで手塚の貴重な休む時間が減ってしまう事にリョーマは抵抗があり、悩んでいた。
「は〜何か俺って女の子みたい…」
まさか自分がこんなに相手に事を心配して考えている事にリョーマは苦笑する。
「それでも国光のこと好きなんだよな」
リョーマはそう呟くと、携帯をベットの端に放り投げる。
「明日の朝練で声聞くので我慢しよ…」
リョーマはもう一度寝ようと布団を被ると同時に携帯が振動を始めた。ちなみに夜はマナーモードにしているリョーマだった。
「?」
長く続くバイブの音はメールではないらしい。リョーマは携帯を取り着信者の名前を見て驚く。そして反射的に通話ボタンを押す。
「もしもし国光っ」
「…起こしてしまったか?」
リョーマの声に少しだけ間があき手塚が申し訳なさそうにリョーマに言う。電話越しだからいつもと少し違う手塚の声にリョーマはドキドキしていた。何より自分が先程まで電話をかけようかどうか悩んでいた相手から電話がかかってきて嬉しくて仕方なかた。
「ううん!起きてたから平気だよ」
「こんな遅くにか?」
いつも寝るのが早いリョーマが深夜に起きているのが珍しいのか手塚は聞き返す。
「国光だってこんな遅くに起きてるでしょ」
「そうだな」
携帯から手塚の苦笑が聞こえてきた。
「…久しぶりだね」
「そうだな」
久しぶりに二人だけの会話。何だかそれだけの事でもリョーマにとっては今凄く幸せだった。
「すまない」
手が謝る。
「どうして国光が謝るの?だって国光は俺よりすごく忙しいんだから!」
リョーマはいつも凄く忙しそうにしている手塚を知っている。それに手塚自身すごく責任感の強い人間だから途中で投げ出す事が大嫌いなのもリョーマは知っている。
だから手塚が謝る必要はどこにもないのだ。
「…ありがとう、リョーマ」
手塚が優しい声でリョーマの名前を呼ぶ。
「でもね…国光」
リョーマは手塚の声に泣きそうになった。あまりにも優しい声だったから。
「少しでいいからもうちょっと話しても平気?」
本当は声を聞いた途端、すぐに手塚に会いたくなった。会って抱きしめてもらいたかったのだが、流石にそれは無理なことだ。だったらもう少しでいいから手塚の声を聞いていたかった。
「リョーマが平気なら俺ももう少し声を聞いてたい」
「本当?」
「あぁ」
「そっか…」
手塚の返答に心がほんわかと温かくなった。リョーマは携帯を両手で握りしめながら手塚と、今日の部活のことやクラスの出来事などを話していく。
手塚も生徒会の話をしたりと、今までの会話できなかった部分をお互いに埋めようとしていた。
「もう2時半過ぎか…」
「そうだね」
「明日も学校だから今日はもう寝よう」
「…うん」
手塚の意見は最もな事はリョーマにもわかっていたがもう少しだけ話していたいという気持ちがまだあった。だが、手塚もまた明日から忙しいのだ。
リョーマは自分自身にそう言い聞かせる。
「じゃ…おやすみなさい国光。また明日ね」
寂しさを出さないよう明るめな口調でリョーマはおやすみを告げる。
「おやすみリョーマ。また明日」
手塚も穏やかな口調で告げる。
そしてリョーマは電源を切った。
「余計本物に会いたくなっちゃった…」
リョーマは視界がぼやけるのを感じながら携帯をギュっと両手で握ると、手の甲に濡れる感覚がした。リョーマの目にはいつの間にか涙がポロポロと流れてそれが両手を濡らしていたのだった。
リョーマは携帯を枕元に置くと、パジャマの裾で涙を拭い、そのまま布団を頭から被る。
「明日もまた会えないのかな…」
そんな小さな呟きが布団の中だけに響いたのだった。
翌日
リョーマは従姉妹の菜々子に言われてあわてて起きたのだった。
「手塚さんが迎えにきてますよ」
菜々子のその一言でいつもよりリョーマは15分も早く起き、急いで顔を洗い制服に着替えた。
リビングに行くと、母親にパンだけもらいそそくさと家から出ていく。
南次郎はそんなリョーマの様子を不思議そうに見ながら菜々子に聞いてみる。
「なぁあいつ今日はずいぶんと早くに出て行ってどうしたんだ?」
菜々子はクスクスと笑うと、
「リョーマさんの大事な人が迎えに来たので」
その言葉に南次郎は驚愕する。
「あいついつの間に彼女なんかできたんだ?」
南次郎の台詞に菜々子は笑いっぱなしだった。菜々子は知っていた。可愛い従姉妹の恋人が同姓でしかも部活の部長であることも。
「とても素敵な方ですよ。叔父様v」
ニッコリと笑う菜々子に南次郎はそうか〜と笑いながら新聞の中の雑誌に再び目を通したのだった。
「ごめんね国光っ」
玄関を出るなり、家の塀にもたれかかっていた手塚にの元にリョーマは飛びつく。
「いや、勝手に来たのは俺だから気にしないでくれ」
手塚はテニスバックを肩にかけているリョーマを両手で受け止める。
「どうして来てくれたの?」
リョーマはまず第一にそのことが頭に浮かんだ。手塚の家と自分の家は結構離れている。しかも手塚の家の方が学校に近い距離だったりする。
「…昨日電話した後、リョーマに会いたくなってな」
手塚はリョーマを見ながらそう言う。
「もしかして迷惑だったか?」
「全然そんな事ないっ!」
リョーマは首を左右に振ると手塚の腰に両手をまわす。
「俺だって昨日声聞いたら凄く会いたくなたんだもん」
リョーマは手塚の胸に顔を埋める。
「だから朝から一緒にいられるなんてすっごい幸せv」
リョーマは顔を上げてにっこりと微笑む。
(だって国光も俺に会いたいって思ってくれてたなんて嬉し過ぎ)
「俺も幸せだ」
手塚もリョーマの背中を軽く抱きしめるとお互いの躰を離す。
「そろそろ行かないと朝練に間に合わなくなるな」
手塚は時計を見ながらそう言うと、リョーマの手を握る。
「行くぞ」
ニコっと優しく微笑む手塚にリョーマの顔は真っ赤に染まる。
(そんな顔反則っ!)
心の中で悪態をつきながらもリョーマは手塚の手を握り返す。
「たまにはこういうのもいいね」
「そうだな」
「じゃぁこれからも会うの一週間に一回くらいにする?」
リョーマはニヤリと小悪魔な笑みを浮かべる。
「リョーマがそうしたいなら俺はかまわないぞ」
だが手塚の答えはリョーマの予想と違かった。
「俺はいつも国光といたいよ」
リョーマは慌てて手塚の顔を見上げる。
「俺も毎日リョーマと一緒にいたい」
小さくだが微笑まれてリョーマは「ずるい」と小さく呟く。
「何がだ?」
聞こえてたらしい手塚は立ち止まってリョーマと目線を合わせる。
「だって国光ていつも俺より上手だから…」
リョーマはプイっとそっぽを向く。手塚はリョーマのその台詞に苦笑する。
「リョーマの方が俺より上手だと思うぞ」
手塚はそれだけいうと軽く周囲を見た後、リョーマの唇に触れるだけのキスを送る。
「そういえば『おはよう』がまだだったな」
唇を離した後真っ赤になっているリョーマの耳元にそう囁く。
「もう国光なんか…」
リョーマは手塚から躰を離す。
「嫌いになったか?」
「もっと大好きになっちゃったんだから責任とってよね!」
リョーマはそれだけ言うとスタスタと早歩きで公道を歩いていく。
「早くしないと朝練遅れちゃうんでしょ?」
リョーマの表情と台詞に手塚はクスクスと笑いながらリョーマの元に行く。
そしてリョーマの手をもう一度握り、二人は学校まで歩いて行ったのだった。
コメント
とまぁ何か無性にイチャイチャラブラブな話が書きたくなり書きました。こんなんでも2時間以上かけて書きました。最近は本当に鬼畜エロな話ばかりを書いていたので(苦笑)
私自身バカップルを目指したのですが、これはバカップルというよりラブラブカップルですね。次回はまたバカップルな話にしたいなぁと思いつつ、何になるかは私自身わかりません。いつも唐突に話を思いつくので(笑)