| おそろい
「リョーマ明日は襟元をはだけさせるな」
「何で?」
「鏡を見れば分かる。だから明日は部活の時もシャツのボタンはきちんととめるように」
「…ズルイ」
「は?」
「おればっかり我慢するなんて…だったら国光も俺と同じ思いをしてよね!」
そもそもはここからが始まり。
だって俺一人だけ我慢するなんて不公平だから。
あの人も最後は苦笑しながら俺の我が儘を聞いてくれた。
だけどコレが切っ掛けで明日は一騒動起きる事を俺達はまだ知らないー。
夏至を過ぎた後は梅雨の時季だとせても気温は高かった。ほぼ夏と同じくらいの気温でとてもじゃないが部員達の殆どはジャージを脱いでTシャツ姿だった。
「あつい〜サイアクっ!」
海堂と撃ち合いながらリョーマは誰に言うでもなく文句を言っている。
海堂のスネイクを難なく打ち返し、ちゃっかりワンゲームをリョーマは海堂から勝ち取った。
「………」
一方海堂は半ばキレかかっていたのだがリョーマは全く関係なしとでも言う様に相変わらず暑さに文句を言いながらコートの外に出ていく。
「…オイ、テメェ何処に行く?」
海堂の地を這った声がリョーマに向けられる。
ちなみに他の部員達は海堂のキレた後は手を付けられないので遠くから息を飲んで見守っていた。
「水道だけど?」
リョーマは全く気にもせず首を軽く捻らせて海堂を見る。
「だって暑いんだもん」
ーブチッ
静かなコートの中で何かが切れたような音が部員達に聞こえた。
リョーマのその台詞に海堂が切れた音だった。
((どうして他のレギュラー陣がいない時に限って〜))
部員達は一同、同じ思いをしていた。
本日に限って3年生は進路ガイダンズがあるのでいつもより少しだが部活参加が遅れるのだた。2年生の桃城は何でも午後の授業で居眠りをしていたせいで、今日に限り先生の手伝いに借り出されてしまった。そして残ったレギュラーがこの二人という訳だ。
「俺だって暑いんだよ」
海堂がリョーマに聞こえるように態と言う。
「んじゃ、センパイも一緒に水浴びします?」
リョーマはニヤっと笑って海堂に躰を向ける。
「でもセンパイの格好ってすっごい涼しそうなんだよな〜」
リョーマが海堂の頭から足元まで眺める。
確かに海堂の格好は夏っぽかった。ランニングとハーパンにバンダナという姿にリョーマは唇をとがらせた。
「ちょっとまて!お前も充分涼しそうな格好だぞ」
今度は海堂がリョーマお服を見る。
半袖のTシャツにハーフパンツ、それに帽子。
(充分な格好じゃねぇか)
海堂は心の中で愚痴る。
「でも俺は暑いの!」
リョーマは猫の様に目をつり上げて海堂に宣告する。
「…越前。暑いのは皆同じだから我慢しろ…」
この我が儘な王子様は自分の手にはおえないと感じ取った海堂が半ば諦めた声で告げる。「先輩も暑いの?」
リョーマはキョトンとしながら海堂を見上げる。
ードキッ
一瞬だが海堂の鼓動が大きくなった。
「ねぇ?」
黙ったままの海堂にリョーマは催促する。
「…当たり前だ。こんな暑い日に暑くない奴なんていない」
一瞬だが、海堂はリョーマの事を可愛いと思ったが、リョーマに気付かれないように態と冷静に言い放った。
「ふ〜ん」
「遅れてすまない!」
奇妙な沈黙が流れる中明るい声がコートの中に響いた。副部長の大石だった。その後には他の3年部員達もいて次々とコートの中に入って来た。
テニスコートの中は先程に沈黙とはうってかわって賑やかなものになる。
その時、部員達は心の中で安堵したのは言うまでもないが。
「どうしたんだい?」
河村がリョーマと海堂の元に向かってくる。何となくだが河村には違和感が感じられた。
「別に」
「何でもないッスよ」
リョーマと海堂が同時に言うと、ラケットの無い河村はオドオドと謝った。
「ごめんね。何だか二人とも恐い顔だったから何かあったんじゃないかな…って思って」
「何でもないんで気にしないで下さい…」
海堂が河村を見ながら言う。
「そう?ならいいんだけど」
「…別にただ暑いって話してだだけだし」
リョーマがボソっと誰に言うでもなく呟く。
「確かに今日は暑いね。越前も暑さには弱いのか〜」
河村はリョーマの台詞が聞こえて笑いながら帽子を撫でる。ふと、河村は気付いた。
「だったら襟元くつろげた方がいいんじゃないかな?」
暑いと言いながらリョーマのシャツは襟元まできちっとボタンがとめてあった。暑ければ少しでも風通しの良いように開けておくのが普通である。
実は海堂もそう思ったのだが、何だか言わない方がいいのかもという直感がその時感じたのであえて口にしなかったのだった。
「……そっスよね」
リョーマは一瞬躊躇うが、河村に暑くて倒れたら手塚がすごく心配すると言われリョーマは一瞬ドキっとした。実はリョーマは手塚と付き合っている事はまだ誰にも言っていねい。なので河村が手塚が心配するというのはきっと『部長』という立場という意味で言ったのだとリョーマは察する。が、
今度は本当に小さな声だったので河村も聞き取れなかた。
リョーマが襟元のボタンを外していくと、幾つかの赤い跡があった。
「越前それは…」
河村がリョーマの鎖骨の辺りを見て驚く。
「あぁコレっスか?」
リョーマは内心焦る。実は昨日手塚にキスマークをあちこちに付けられたため本日は襟をきちんと止めとくようにと言われたのだった。そのせいで着替えもこっそりと人目につかない所でした。が、やはり暑さにはかなわないし、まさか自分が抱かれているとは誰も思いはしないだろうと思い「虫に刺された」と言い訳をする。
「もうそんな時季かぁ。俺も気を付けないと」
河村はリョーマの言葉を信じて「帰りに蚊取り線香でも見て帰るかな」などと口にしている。
リョーマはそれを聞いて内心安心した。もともとそういう事に奥手な河村だという事には気付かずに…。
「オイ。お前…ボタンとめとけ」
リョーマの近くまで来た海堂が微かだが顔を赤らめてリョーマにだけ聞こえるように告げる。
「何で?」
リョーマはキョトンとしながら海堂に言う。
「お前……そんなモノ付けてたら他の連中に襲われるぞ」
(バレテル!?)
「とにかくボタン止めとけ。部長とが呼んでる」
海堂はそれだけ言うとスタスタとコートの入口に向かっていく。
「え?」
周りを見回すといつの間にか河村も入口に向かって走っていた。どうやらレギュラー陣だけ呼ばれているらしく他の部員達はいつも通り練習をしている。
リョーマは少し早歩きで手塚の元に行く。シャツのボタンをしめながら…
「今日の練習メニューを言う」
手塚がクリップボードに目を配らせながらレギュラー陣全員に言い渡す。
一通り顧問である竜崎コーチの連絡事項も伝え練習開始という時に突然不二が手塚に声をかける。
「手塚首どうしたの?」
不二がいつも通りニコニコと笑いながら自分の首筋と鎖骨の中間を指て突く。
「何がだ?」
手塚は無表情で不二の質問を軽くかわす。が、相手は曲者の中に1,2を争う不二である。そうそう簡単にはいかなかった。
「ココ赤くなってるから虫にでも刺されたのかな〜って思って(ニッコリ)」
「手塚虫に刺されたの?」
不二の言葉に菊丸が手塚に聞く。
「…あぁ…そんな所だ」
少し間があいた気がしたが、無表情で淡々と語る手塚なのでそれで話は終わる所だったのだが思わぬ人物が会話に参加したのだった。
「手塚も虫さされかぁ。越前もそうらしいんだ。でも二人して同じ所を刺されるなんて珍しいね。越前なんて鎖骨の辺りかなり刺されてたし」
リョーマは顔を今度こそ耳まで真っ赤に染めた。
手塚も少しだか頬が赤い。
「へぇ一体ふたりはどんな虫にっされたのかなぁ?」
河村のその台詞で不二は開眼モードになり手塚にニッコリと微笑みかける。
乾はどこから出したのかノートとシャーペンを取り出して何かを猛スピードで書き始めている。密かにリョーマを狙っていた桃城は力無くその場にガクッと膝を折り両手を地面に付けながら「先を越されたー」と一人大声で嘆いている。大石と河村の天然ペアは何が何だかとお互いの顔を見合わせるだけだった。海堂はこっそりと溜息をつく。
ちなみに本日のレギュラー陣の部活動は手塚とリョーマの事で結局誰一人やらなかったのだった。
そして目出たく手塚とリョーマは皆に恋人同士として認められたのだが、不二と乾の「これから凄く楽しくなりそうだ」という台詞にリョーマと手塚は嫌な予感がした…。
リョーマは知らないが、不二はリョーマの事を可愛がっていたいたのだ。手塚がおそれていたのはこれから不二が自分達にというか自分に一体何をしてくるのか本気で気が気じゃなかった。
せめて命は残して貰いたいと手塚は本気で思った。
その後ひらきなおり過ぎたリョーマと手塚は周りが呆れ、砂を吐く程のバカップルになっていくのだった。
END
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