| アナタの存在
放課後。 生徒達が部活や帰り支度をする中、リョーマも部活に参加するため階段を下りて下駄箱に向かう最中だった。 と、その時二人の男子生徒が隣で何かを揉めていたがリョーマはそのまま通り過ぎて行く。だが言い争っている男子の一人がリョーマの背中を誤って肘で押してしまった。 「!!」 リョーマは一瞬何が何だか分からなかった。自分の体が軽く宙に浮く感じがしたと次の瞬間には廊下に倒れ込む形になっていた。 「大丈夫?」 「誰か先生読んできてー」 ざわざわと自分の周りで色んな声が取り巻いている。リョーマは内心「ウルサイ」と思いつつ立ち上がろうとするが体が動かない。 「何があった」 声と同時に周りが一気に静まりかえった。 「越前っ!」 声の主が驚いたような口調でツカツカと自分の元に走ってくる。だがリョーマにはそれが誰だか分からないまま意識を手放したのだった。
「ーん……」 目をあけると見知らぬ天井が視界に映った。 リョーマはそのまま上半身を起き上がらせると辺りをキョロキョロと見回す。 (俺たしか部活に行く途中だったはず…) リョーマはぼんやりと放課後を思い出そうとした瞬間ベットを仕切っていたカーテンが開かれた。 「くにみつ…?」 「気が付いたか」 リョーマが手塚を不思議そうに眺めていると、手塚はそのままリョーマの元に近づいてくるとリョーマの右頬に左手を添えた。 「よかった…」 手塚がリョーマの目を見ながら小さく呟く。 「ねぇ、俺何で保健室にいるの?確か階段からこけて…もしかして運ばれたの?」 リョーマは段々と記憶が戻ってきたらしく手塚に答えを求める。 「あぁ。俺が運んだんだ」 手塚はベットの上に腰を下ろし、頬に添えていた左手をリョーマの頭に持っていくとそのまま自分の胸に招き入れた。 「!?」 腰から上だけを手塚に抱きしめられるというよりは引き寄せられたリョーマは瞬間パニクっていた。 上手く息ができなくて手塚の胸の中でもがくリョーマに手塚は更にギュっと抱きしめる。 「リョーマがこのまま目覚めないのかもしれないと思った」 手塚が低く小さな声でリョーマの耳元で話す。 「階段から落ちる瞬間俺は心臓が止まりそうになった」 手塚は言うのと同時に胸の中にいるリョーマの顔を両手でそっと包む。 まるで壊れ物を扱うかのような仕草。 「く…にみつ…」 「お前が無事で本当によかった」 手塚はもう一度リョーマを全身で感じ取るかのように抱きしめた。 「心配かけてごめんね」 リョーマも手塚の背に両腕を回す。 「リョーマ」 「でも俺…嬉しいかも」 リョーマは手塚の胸に右頬を軽く擦りつけながらそんな事を言う。 「だって国光がそれだけ俺の事大事にしてくれるって…わかったから」 後半はちょっと照れくさそうにかすかに頬を赤く染めながらリョーマは言う。 「当たり前だろう」 手塚はハッキリと強い口調で話す。 「俺も国光が目冷めなかったら凄く悲しいもん」 「…リョーマ」 お互いが自然に顔を見合わせると、手塚が顔を近づけてきた。リョーマも自然と両目を閉じるとそのまま唇を合わせたのだった。
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