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寝坊の対処法

 





「越前遅刻だ。…グラウンド20周」

 朝早い青学のテニスコートに本日も恒例となっている男子テニス部部長手塚国光の声が響いた。

「かわいそーおちびまた手塚に怒られてるにゃ〜」

「本当リョーマ君可哀想だね。それに手塚もいつも同じ台詞ばかりで芸が無いよね」

「英二も不二も手塚は好きで怒ってはいないんだぞ。それに芸とかという問題じゃないと思うんだが…」

「確かに非は越前にあるな。データを見てみると越前の遅刻は今週で3回。ちなみに今週はまだ1度も無遅刻は無し」

 アップを終えたレギュラー陣の曲者3人と唯一の常識人はコートの端にいる2人を(性格にはリョーマだが)微笑ましく見ていた。元々リョーマを可愛がっているレギュラー陣は手塚がいなかったら遅刻も堂々と見逃していたに違いないという程の猫っ可愛がりようだ。そんなレギュラー陣とは少々違う目で他の部員は“またか…”という風に呆れた感じで声の主の方を見るが、すぐに練習に戻る。すっかり朝練の恒例行事となってしまった期待の1年生ルーキー兼男子テニス部アイドルの越前リョーマの遅刻とそれを注意する手塚の姿。初めは他の部員達もルーキー遅刻を改善しよう対処法を考えていたが(特に1年3人組)一向に直らないリョーマの遅刻のおかげで今はある意味関心されている程にまでなっていた。

 

 

 

 

「おまえは何でそんなに遅刻ばかりするんだ?」

 手塚は腕組みをしたまま心底不思議そうにリョーマに問いかける。手塚からしてみれば、月に1度の遅刻でも多いのにこのルーキーは週に3日は必ず遅刻をする。真面目がそのまま地でいっている手塚にしてみれば越前の遅刻は少々考えものになっている。

「だって朝弱い…」

 リョーマは未だに寝ぼけ眼で手塚を見上げる。身長差28pのおけげでリョーマは首疲れるのでは?と思う位首を傾ける。

「それはこの前も聞いたぞ」

 手塚はリョーマの自分を見上げる姿勢に内心苦笑しながら答える。

「…でもそれが理由だし」

「ならもっと早く寝ればいいだろう」

「でも起きれない」

 リョーマは拗ねた口調になり俯き足で地面を軽く蹴っている。小さい子供の拗ねた仕草を連想させるその姿に手塚は可愛らしいと素直に思ったが、表情には一切出さないというか出ない手塚である。

「………」

「………」

 両者の無言が続く中、先に折れたのは手塚だった。軽いため息を吐き、身を屈め目線をリョーマに合わせる。が、リョーマは相変わらず俯いたままの姿で地面を蹴っている。

「努力はしているんだな?」

 正面から聞こえた声にリョーマは顔を上げる。そこには2人きりの時に見せる、手塚の穏やかな顔があった。少し甘さを含んだ口調でリョーマに問う。

「してるよっ!」

 リョーマは少しムキになって目の前にいる大好きな相手に訴える。

「だって俺が遅刻したら部長に迷惑かけるし……だから何とか起きようと目覚ましかけたり、夜はなるべく早く寝たりしても全然駄目だし。……俺アンタに嫌われるのだけはやだもん!」

 リョーマの必死の顔と可愛い恋人の自分への思いを聞けて手塚は滅多に見せない笑みを浮かべる。幸い向かい合っているのと手塚の方がフェンスに背中を向けている状態なので手塚の笑顔は誰にも見られてはいないが、真っ正面にいるリョーマは一気に顔が真っ赤に染まった。

「〜〜そんな顔すんの反則」

(まぁ俺しか見てないからまだイイケド)

 いきなり顔で反則と言われた張本人は今度こそ呆れた口調で恋人に聞く。

「顔に反則も何もないと思うが」

「アンタの場合は例外なの!」

 リョーマは手塚が人目のある所であんな顔をされたらますます女子生徒からの人気が増える事は目に見えている。今でもかなりの人数がいるのに、しかも後輩のレギュラーというだけで、リョーマにまで手紙やプレゼントの橋渡し約に使われるのだ(もちろん全部断ってはいるが)全く何考えているんだか。とリョーマは1人愚痴る。

「(よく分からないが)次からは善処しよう」

 手塚は取りあえず恋人の機嫌が少し治まってきた事に安堵しつつ、左手で頭を軽く叩撫でる。

「……でもさ、俺と2人きりでいるときはそういう顔してよね」

 気持ちよさそうに撫でられるリョーマは目線を足下に移してボソボソと話す。

「あぁ」

 恋人の可愛いお願いに鉄仮面と言われた手塚でさえも嬉しさを隠せないでいた。

「だ〜か〜ら〜俺の話聞いてた?」

「もちろんだ」

 じゃあっ…と言う前に手塚がリョーマに顔を近づける。

「嬉しいからに決まっている。それにお前以外に笑えと言われても無理だぞ」

「…国光って時々真顔で凄い殺し文句言うよね」

「そうか?」

「そうだよ」

 リョーマはクスクス笑い出す。対する手塚はいつも通りも仏頂面に戻っている。

「いいこと思いついた!」

 突然のリョーマの声に手塚は目で返事をする。

「あのね、俺と一緒に夜寝て♪」

「……どういう事だ?」

 手塚は軽くこめかみを押さえる。

「だって一緒に寝れば俺は遅刻しないし、国光も怒らなくてすむでショ?」

「それはそうだが」

「だったら俺今日から国光の部屋で寝るね」

 リョーマはナイスアイデア〜言いながら早速手塚の家に行くための計画を立てていた。

「おいリョーマそれは勘弁してくれ」

 流石の手塚も毎晩リョーマと一緒に寝るのはいつ理性の糸がキレてもおかしくない事が目に見えてるので焦りはじめる。

「国光は俺と一緒は嫌なの?」

 リョーマは不安な顔で手塚を見る。

「嫌ではないが、お前にもちゃんと家があるだろう」

 手塚は小さい子供に言い聞かせるように話し始める。

「中学生が親元から離れて暮らすのは日本では良くない事なんだ」

「そうなの?」

「あぁ。だが明日からきちんと電話をかける事にする」

「電話してくれるの?」

 一緒に眠る事はできないと聞いてショックだったが、手塚が起きれない自分の為に毎朝電話してくれると聞いてリョーマは嬉しさを隠せない。

 何せ手塚は青学1多忙な生徒なのだ。テニス部の部長と生徒会長という2つの肩書きを背負っている。それ故あまり自由な時間が無いのだ。そんな手塚が朝自分のためだけに電話をかけてくれるというのはリョーマにとって嬉しいことこの上なかった。

「約束する」

「国光大好きー」

 ガバッと目の前の男の首に両腕を回し抱きつく。手塚もそのままリョーマの背中と裏膝に手を伸ばし立ち上がる。

「俺もだ」

 向かい合った形で手塚はリョーマの耳元に囁く。

「必ず俺を起こしてよね!」

「お前の寝起きの悪さは分かっているが、頑張らないとな」

「期待してるから」

 お互いに見つめ合いながら軽く微笑む。

 

 

 

 一方バカップルの行く末を最初から最後まで観察していた4人はショッピングピンク並みの色濃い花畑をまき散らしている原因を見つめている。

「うわ〜ピンクのオーラが見えるにゃ〜」

 呆れながらもラブラブで羨ましい〜と言う菊丸。

「……手塚のキャラが違う。」

 2年以上も1番近くにいた親友の普段とは全く違う態度に呆然とする大石。

「これは良いデータになったな。あの2人は名前で呼び合う程の仲と。不二……!!」

 2人を見ながらずっとデータを書いていた乾が隣にいる不二に声を掛けようとするが、かけられなかった。

 <<<不二が開眼してる>>>

 3人揃って背筋に冷たい汗が流れる。

「まさか手塚に越前君を持って行かれるとはね」

 開眼したまま口元に笑みを浮かべ、ドス黒いオーラを回りに放つ不二。

「楽しくなりそうだな〜」

 黒いオーラを隠すことなく不二はそのままコートに入っていった。そして的にされた桃城には皆が心の中で<ご愁傷様>と思われていた事も

 

「週末は国光の家に泊まってもいい?」

「かまわないが」

「やったー彩菜さん作るのご飯好きなんだもん」

「ご飯が食べたいのか?」

「それに朝も夜も大好きな国光とずっと一緒にいれるしね」

「では週末まで遅刻しなければ泊まりに来い」

「でも明日から毎朝電話で起こしてくれるんでショ」

「責任取って起こさないとな」

 

 こんな会話のやりとりをしているバカップルには知れることはなかった

 

 

 〜余談〜

 ちなみにその日の朝練は部長とルーキーの犬も食わないイチャつきぶりと不二の恐怖現象で開始30分で幕を閉じたのであった。そして大量の胃薬を飲む大石が始業前に目撃されたとか(笑)