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A destructive birthday
「羽柴センセ〜」 本日の最後の授業終了のチャイムが鳴り、オレは一人数学教論室に戻るために廊下を歩いていると女子生徒達に呼び止められた。 ちなみにいつもなら水都と一緒に教論室に行くのだが先程水都は放送で呼び出されたのだった。 「どうした?」 オレは声のした方に体を向けると、そこには三人組の女子生徒がいた。 「あのね、羽柴センセーお願いがあるんだけど…」 真ん中にいる生徒が少し困ったような顔をしてオレを見る。 「うん?」 オレはなに?という顔を女子生徒に向ける。 「これ…水都先生に渡してもらえませんか?」 顔を赤らめて言う生徒にオレは驚愕した。 「水都…に!?」 目を丸くしているオレに女子生徒は綺麗にラッピングされている小さな箱を手渡した。 「今日って水都先生の誕生日だから…」 その台詞を聞いてオレは顔を微かにしかめる。正直あまり聞きたくない人物の名前だから。 「だったら自分で渡した方がいいと思うぞ」 自分でもわかるくらい、固い声で即答するオレに女子生徒は少し驚く。 「…でも…」 プレゼントを渡してきた女子生徒は戸惑うように言うと、オレの顔をじっと見る。 「?」 (オレなんかしたか?) オレを見て段々と泣きそうな顔になる女子生徒にオレは狼狽える。 「あのね、センセー」 「実は…」 ふと、両隣にいた女子生徒が困ったような顔をしてオレに話しかけてきた。 「水都先生、誰のプレゼントも受け取らないんです」 「今日も朝から女子達が渡していたんですが、全員断られちゃって」 その台詞でどうしてオレにプレゼントを渡してきたのか理解できた。 ようするに、オレが渡せば水都は嫌でも受け取ると思ってるらしい。けど… 「悪いけど、例えオレが渡しても水都センセイは受け取らないと思うぞ」 苦笑しながらオレは女子生徒に話す。 「そんな事ないです!」 そう言った瞬間、プレゼントを持った女子生徒が真剣な顔をしてそう言ってきた。 「だって、羽柴先生が学生時代の時、水都先生は先生のプレゼントを受け取ったんでしょ!」 疑問ではなく断言するようなその台詞にオレはギクリとする。 確かに…水都は兄チャンだから、昔は当然誕生日にはプレゼントを渡していたのだが。 「だから羽柴先生、これ水都先生に渡して下さい!」 どうやら受け取ったと確信したらしい女子生徒はオレをギロっと睨む。 そしてオレの手に自分が持っていた小箱を渡すと女子生徒はそのまま自分の教室にかけって行くと、右側にいた女子生徒がその子の後を追いかけるように教室に向かっていった。 (なんでオレ睨まれたんだ?) オレはその後姿を呆然と見送っていた。手には小さな包みを握って。 「羽柴先生…」 控えめな声が呆然とするオレの耳に届いた。 「…何?」 少し間をあけてオレは返事をする。三人組の残り一人がどこか困った笑みを浮かべてオレに話しかけてきた。 「あの子ね…先生の事ライバルだと思ってるから」 「は?」 オレはマヌケな返事を返してしまう。 (なんでライバル?) 「だって先生学生の頃から水都先生と仲よかったんでしょ?その話すごく有名だから。でも水都先生って誰とでも平行だから唯一特別視されてる羽柴先生は水都先生のファンの子達には…ちょっとね」 「…特別視…って」 女子生徒のあまりの台詞にオレは呆然とする。 「まぁ、あの子の気持ちも分からなくもないから…そのプレゼント水都先生に渡してあげて下さい」 それだけ言い終えると女子生徒も教室の中に戻っていった。 その後姿が消えてもオレは暫く廊下で佇んでいると、生徒から心配されて慌ててその場を後にする。 手には預かったプレゼントを持ちながら…。
数学教論室のドアを開けるとそこには水都の姿は無かった。 オレは少し安心して教論室に入り机の上に教材を置くと、ソファにドサっと躰を預ける。 いつもなら日誌とか書いているのだが、今日は何だかそんな気分じゃなかった。 原因は先程の女子生徒の台詞だった。 「にしても水都なんかのファンがいるのが…」 (兄チャンならまだ分かるけど…今の水都は兄チャンじゃないし) そして先程預かったプレゼントの小箱を持ち上げて暫く眺める。 (あんな奴のどこがいいんだか。顔はまぁ兄チャンだから整ってるけど性格は最悪だし) だが、自分はその水都のペットなのだ。 「…おかしいの」 そう呟くと同時にガラっと教論室のドアが開いた。 「何がおかしいんだ?」 入ってきたと同時にそう聞かれて空は躰を強張らせる。 「あ…水都…?」 「水都先生だろう?ところで…お前は私以外の誰がこの部屋に来ると思ってたんだ?」 中指で眼鏡を軽く押し上げて水都はオレの座っているソファの前までやってくると、ポケットから取り出した指示棒でオレの頬を軽く叩く。 「空?」 「……っ」 名前を呼ばれただけ、それだけの事なのにオレの躰は恐怖で縛られる。水都はオレの事を空と呼ぶ時はペットとして扱う時だ。 「主人の質問に答えられないのか?」 水都は冷たい、支配者の目でオレに訪ねる。 「…水都以外…思い…つかない」 オレは水都の目を見ながら小さくそう呟く。 「ハン…どうだか。連れ込むのが得意だからな」 「なっ!!」 水都の台詞にオレは怒りで躰が震えた。 (誰がいつ連れ込んでるんだよ!それを言うならアンタの方だろうがっ) 心の中でそう思っていても声に出して言えなくてオレは拳を握りしめる。 「どうやら事実らしいな」 水都はオレが何も言わないのを肯定と取ったらしい。 「全く…淫乱なペットだな」 流石にその台詞にはオレも我慢できなくて、言い返してしまった。 「アンタの方が毎回色んな奴と犯ってんだろ!何せアンタにモーションかける生徒は結構いるみたいだからな。脚開けば誰とでも犯るあんたの事だ、どうせ今日の呼び出しもそういう類だったんだろっ!」 一気に捲し立てたオレの喉を水都が右手で思いきり掴む。食い込む程指で締め上げられオレの視界は歪む。 「もう一度言ってみろ」 水都の鋭い視線がオレを貫く。オレはその瞬間体が凍ったように動けなくなてしまう。 「誰とでも犯るのはお前だろう?私だけでは満足できなくて生徒にも相手をしてもらってるんじゃないのか?」 ニヤリと口の端に笑みを浮かべながら水都はそう言う。 オレは悔しさと苦しさで涙が目の端からポロポロと零れる。 その瞬間水都がオレの首から手の力を緩めた。 「ゴホッ…ゲホ…っ…ッ」 オレはソファのに崩れ落ちながら咳き込んむが、直ぐに水都が覆い被さり、ソファの上に押し倒される。 「先程女子生徒と随分楽しそうに話していたじゃないか?」 水都は耳元でそう囁く。 「主人がちょっと目を離せばもう他の奴に目移りするようなペットにはお仕置きが必要だな」 その台詞にオレの中の怒りが一気に吹き出た。 「アレはアンタのせいで捕まったんだよ!今日アンタが生徒達からの誕生日プレゼントを貰わないからオレが変わりに渡すように押しつけられたんだからなっ!」 水都を力任せに押しのけてオレはソファの下に転がっている小さな包みを水都に押しつけた。 「よく見ろ!誰宛になってる?」 リボンに挟みこんであるカードには水都の名前が入っていた。 「…私の名だな」 「だろっ!」 オレは勝ち誇った目で水都を見る。だが水都はばつの悪そうな顔所か、ニヤリと楽しそうな顔をオレに向ける。 「で、お前は無いのか?」 ふいに、そう聞かれてオレは言葉に詰まる。 何せオレは水都のペットになってからというもの、奴の断り無く出かける事はできなかった。寮に帰る時も水都が送ってくれる。 それ以前に毎日何度も犯され続けてとてもじゃ無いが、寝る時間を確保するので精一杯の生活だったりする。 それを承知で水都はそう言ってきたのだ。 楽しそうに自分を見ているのが何よりの証拠だし。 「…プレゼントは無い」 オレは諦めてそう呟く。 「主人の誕生日にプレゼントも用意しないとはな」 わざとらしく溜息をつく水都をオレは睨む。 「まぁそれくらいわかっていた事だからな」 (だったら初めから言うなよ) 心の中で罵倒すると、水都はスーツのウチポケットから小さなビンを取り出す。 オレはその存在にギクリとする。 「だから相沢から面白い薬を貰ってきたぞ」 水都の台詞にオレの頭は真っ白になる。 「や…だぁ…」 弱々しくオレはソファの上で首を左右に小さく振る。 「反抗してもいいのか?」 水都はオレの顎を持ち上げて言う。 「あ…」 その台詞にオレはビクっと震える。 「さて…まずは私に反抗的な態度を取った事のお仕置きと、今日は私が満足するまで付き合ってもらおうか。年に一度の誕生日だからな」 毎回お前が気絶するから仕方なく途中でやめているのだからな。 耳元で水都がそんな事を言う。 「そ…なっ…むり…」 震えて弱々しい声で空は水都を見る。 「この薬は意識を飛ばす事を防ぐ効果があってな、私が満足する頃には薬の効果は切れているハズだから安心しろ。勿論、ちゃんと催淫効果も含まれているぞ」 ニコっと楽しそうに笑う顔は真一朗にそっくりだった。 いつも何か楽しい事があった時にみせるあの顔を水都は空に見せる。 「…兄…チャ…ッ」 一瞬だが兄チャンを思いだしてオレはそう呟く。 「何だ空?」 優しく頭を撫でる水都にオレは困惑する。 当たり前のように返事をした水都にオレは泣きたくなった。 本当に水都真一朗は壊れてしまったんだ…。 あの時、オレが兄チャンを刺した時にこの人は消えてしまったんだ。 だけど、この人は生きてこうして目の前にいる。 この人に恨まれても仕方無いことをオレは犯してしまった。 だから…この人の残りの人生でオレができる事ならなんでもしよう。 例えそれがオレにとってどんなに辛いことでもオレは償わなければいけないから。 ただの自己満足かもしれないけど…それでもオレは……。 水都の腕の中に躰を預けると、温かい腕に抱き込まれた。 「空」 水都はオレの名前をよびながら頭を撫でる。本当にペットにするのと同じ扱いだが、オレは気にしない。 「言うの遅くなったけど、誕生日オメデトウ」 オレは水都の胸にもたれ掛かりながらそう言う。そして水都の手から薬のビンを奪い、自分から飲み干した。 「プレゼントちゃんと受け取ってよね」 笑みを浮かべるオレに水都は唇を近づけてきた。 「勿論だ」 唇が重なる直前に水都は小さく呟いた。 そしてオレはそのまま水都の首に両手を絡めて、自分から水都にキスを送った。
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