毎日、毎日俺に届くもう一人の自分の声。
その声はー泣き声。
いつももう一人の俺は泣いている。
決して外には見えないように、見せないように、強がっている。
でも俺はそれを止めよとは思わない。
否、止めることができないんだ…。
視線の先
「あれ…?」
空はゆっくりと瞼を開ける。
周りを見渡すとそこは落ち着く空間で…直ぐにそこが、もう一人の自分のテリトリーであることに空は気付いた。
「夜?」
空間の持ち主でもあるもう一人の自分の名前を空は呼ぶと、後から思いきり抱きしめられた。
「空〜元気か?」
ぎゅぅぅっと抱きしめながら、夜は空の耳元で囁くように名前を呼んだご、耳の中に息を軽く吹きかける。
「ひゃぁ…ぁ」
空は鳥肌をたてながらビクッと躰を跳ね上がらせた。
「相変わらず感じやすい躰してんな〜」
夜は空の反応を見てケラケラと笑う。
「いきなり何すんだよ!夜のバカっ」
空は顔を赤く染めながら首を捻らせて夜を見る。
「悪い。あんまりにも空が可愛かったんでつい…な」
夜はそう言いながら空の頭をポンポンと優しく撫でる。
「可愛いは余計だってーの」
「そういう所が可愛いっんだよっ!」
「だから可愛いは……って、もういいや」
空ははぁ…っと、軽く溜息を吐くとそのまま夜の胸に背中を預ける。
夜も黙って空の躰を優しく抱き留める。
「なぁ…夜」
空は前を向いたまま夜に話しかける。
「何だ?」
夜も抱きしめたまま返事を返す。
「兄チャン…生きてるかな?」
空はポツリと呟く。
「生きてるだろう!真一朗なんて殺しても死なないタマだろう?」
「でもっ…俺が、血が…いっぱいで…」
夜の台詞に空はフルフルと首を左右に振り、そして自分の両手の平を見る。
「だって、俺結構深く兄チャン刺して…兄チャンが死んじまってもあの状態ならおかしくないだろう?」
小刻みに全身を振るわせる空を夜は、キツク両腕で抱きしめる。
「空、大丈夫だから落ち着け。死んだかなんて、お前の目で確かめるまでは分からないんだぞ?」
夜は、空に言い聞かせるように何度も大丈夫だと繰り返す。
あの日から普段通りに生活している空だったが、精神は限界にまで達していたのを夜は大分前から感じ取っていた。時々だが、空の心が悲鳴を上げる寸前に夜はこうして自分のテリトリーに空を来させる。
本当なら自分が昔の様に少しの間…傷が癒えるまで変わってやりたかったのだが、空は断固として賛成をしなかった。
『兄チャンの事を俺はもう、忘れたくないんだ。』
空のその台詞を聞いて夜は空の願いを聞き入れた。ただし、それは夜の出す条件を空が聞き入れてくれればの事だった。
「約束覚えてるか?」
夜は唐突に空に問いかける。
「やくそく?」
「あぁ。俺と約束したよな。『もしどうしても辛かったりしたら俺の所に直ぐ来る』っていう約束だ」
夜の腕の中で空は首を縦に振る。
「覚えてる…俺が駄目だって思ったら夜の所に行くっていう約束」
「そうだ。ここでは強がらなくていい。俺はお前なんだってこと忘れてるんじゃないのか?」
夜は少しだけ眉をしかめる。
「別に強がってはいなけど…もしかして俺そんなにヤバかった?」
空はきょとんとした瞳で夜を見上げた。
「気付いてなかったのか?」
「…うん」
夜の驚いた顔に空はバツの悪そうな顔で返事をする。
「そっか…んじゃ仕方ないな」
夜はやれやれと言いながら、空の顎を持ち上げる。
「よる?」
顎を固定されて、夜を見あげる事しかできなくなっり空は不思議そうに夜の名前を呼ぶ。
「今度は自分からココに来いよ」
真剣な顔で夜は空の目を見ながら言う。
「うん」
空も滅多にない、真面目な夜の姿に一瞬驚きつつも素直に聞く。
「んじゃ、約束の印な」
夜はニヤリと笑みを浮かべると、そのまま空の唇を塞ぐ。
「よっ…んぅ…っ」
驚いた空は夜の名前を呼ぶが、唇を開けた瞬間夜の舌が口内に入ってきた。
そのまま歯列をなぞられ、舌をねっとりと絡め取られる。
クチュ…という音が聞こえ、それが更に空を煽る。
「あふ…っ…ん…」
角度を変えて、何度も舌を吸われ、痺れるような感覚が空を襲う。互いの混じり合った唾液が唇の端を伝って流れる。
ようやく夜の唇が離れた時には、空は顔を赤くしてせわしなく息を吸う。
「はぁ…はぁ……夜っ…舌までっ、…入れるなよな!」
荒い息が元に戻る頃に空は夜の方に躰ごと向けて、文句を言う。顔を真っ赤に染めて…。
「俺はお前なんだからそんなに固い事言うなって!それにこうしておけば次はちゃんと自分から会いに来てくれるだろ?」
夜はニヤリと笑いながら空の頭をポンポン軽く叩く。
「〜〜〜っ、もう今日は帰る!」
怒りながら夜に背を向ける空。
「はいはい。あんまり無理はするなよ」
その背中を見ながら夜は手をひらひらと振った。
「……サンキュな夜」
消える間際空は夜の方をチラリと見て、小さく笑いなが言う。
夜はそんな空に何も言えなかった。
一人になった空間で夜はたたずむ。空が帰っていった方向を見ながら、左腕を右手で力強く握る。
「空、頼むから…もう二度と壊れないでくれ」
夜は小さな声で呟く事しかできなかった。
願うことしかできない自分。
もう一人の自分の心が壊れそうなのを助ける事もできない。
守るために生まれた存在なのに…
一番守りたいモノを守れない。
もう一人の自分にはもっと大切な存在がいるから…
だから俺は少しでももう一人の自分の壊れ行く心のペースを遅くする事にした。
それは自分の逃げ道なのかもしれない。
「守護者」という名目で出来た自分自身の存在理由の。
それでも俺は失いたくない。
もう一人の…誰よりも、何よりも愛しい存在を。
例えそれが叶わない想いだとしても俺はもう一人の自分「空」を守りたい。
俺の願いはただ…ただ、それだけ…。
「どうか、『俺達』を助けてくれ……真一朗…お前じゃなきゃ……いや、お前しか『俺達』救えないんだ」
コメント
すみません……駄目っぽい(色々な点が)
生まれて初めての夜空の文章です。もう夜空ファンの方、すみません(滝汗)
設定が真空←夜になってるので、夜の片思い。全然夜空じゃないし(涙)でもキャラ的に夜と空しか出てないので(言い訳)少しづつ壊れていく空を守りたい〜みたいな夜が書きたかった。
やっぱり慣れないキャラは難しいですね。と、一言で纏めてみました(←纏まってないし)