大好きな人
俺の名前は「空」。
真一朗がつけてくれたんだ!
あ、真一朗っていうのは俺のご主人様。
格好よくて、優しくてとにかく俺の事凄く可愛がってくれるんだv
何もわからなかった俺に微笑んでくれて、ギュっと抱きしめてくれて名前まで付けてくれた一番大好きな人。
でも真一朗には恋人がいるから俺は真一朗の一番にはなれないんだ。
恋人の相沢さんは少し怖いっていうか…近よりにくい人かな。何となく雰囲気が近寄りがたい。
ちょっと悲しいけど、でもペットだからご主人様を困らせるようなワガママは言っちゃ駄目だってこと俺だって分かってる。
でもやっぱり沢山可愛がって貰いたいっていうのはワガママなのかな。
本日の授業終了のチャイムが鳴り響いた。
(もうすぐだ!)
俺はソファの上から起きあがると、ドアの前で帰りを待つ。
(早く帰って来ないかな〜)
ドアの前をグルグルと回りながら俺は真一朗の帰りを待つ。
今日は午後は授業が全部入ってるので真一朗とは昼休みに可愛がってもらっただけだったりする。
本当はずっと側にいてもらいたいけど、ワガママ言って真一朗を困らせたくない。
そんな事を考えていると、教論室のドアがガラッと開いた。
「おかえり〜真一朗」
俺は条件反射で真一朗に向かって抱きついた。
「私は真一朗ではない」
だが、返ってきたのは待ち望んでいた人の声じゃなくて…。
「あいざわ…さん…?」
俺は首を上げて声の主を恐る恐る見上げる。
だけど、見上げた相沢さんの顔は無表情で、だけどまっすぐ俺を見下ろしている。
俺は何だか気まずい感じがして相沢さんから一歩後ろに下がった。
「どうした?」
俺の様子に相沢さんはちょっと機嫌悪そうな顔をした。
(俺、何かイケナイ事したかな?)
心の中で疑問を抱きつつも、俺は首を横にフルフルと振る。
「だって相沢さん…無表情なんだもん…って…」
思った事を口にしてから、俺はヤバイと口を両手でふさいだ。
(俺のバカーそんな事言ったらますます嫌われるじゃっん!!)
相沢さんは黙ったまま俺を見つめる。
「あ…えっと……俺、その……」
何て言ったらいいのか分からなくて、オロオロとする俺に相沢さんが近寄って来た。
(もしかして、殴られる?)
そんな事が頭に過(よ)ぎって、俺はギュっと目を瞑る。
相沢さんが目の前にやってきて、何かが落ちてくる感覚がして俺は覚悟を決めるが、次の瞬間、痛みが…こなかった。
「?」
恐る恐る目を開けると、俺の頭の上には相沢さんの手が乗っていた。
「恐がらせたようだな」
ポツリと呟く相沢さんの声に俺はビックリした。
「私は表情豊かではないもんでな」
クシャっと俺の髪を混ぜながら苦笑混じりに言う相沢さんにビックリした。
「へ…?」
返事らしい返事じゃないけど、本当に今もの凄く驚いている。だってあの相沢さんが俺の頭を撫でながら苦笑するなんて事、一度もして貰ったことも見たこともない。
そんな俺の様子に相沢さんはクスッと小さく笑う。
「あの…俺、相沢さんに嫌われてないの?」
いつもと纏(まと)う雰囲気が違かったから、思わず今まで疑問に思ってみた事を聞いてみてしまった。
でも、不思議と相沢さんに対していつもの怖いという気持ちが無かった。
「別に嫌いではないが…どうしてだ?」
相沢さんは少し怪訝そうに答える。
「えっと…だって俺、いつも相沢さんに睨まれてるし」
ちょっとだけ勇気を振り絞って今まで思ったことを思い切って言ってみる。
「別に睨んだ覚えは私には無いのだが…たまに嫉妬はするがな」
相沢さんは俺の頭をもう一度撫でながら話す。
「嫉妬って俺に?」
全く思ってなかった、むしろ俺の方が思っていた事を相沢さんが言ったので思わず大きな声で聞き返してしまった。
だって相沢さんは真一朗の恋人で真一朗が一番大事にしてる人で、ペットの俺よりもずっと真一朗の近くにいられる立場なんだから。だから俺に『嫉妬』だなんて絶対にありえない筈だから。
「お前はいつも真一朗のすぐ側にいるからな」
相沢さんはちょっとだけ遠くをみながら俺に言った。
「でも、相沢さんは真一朗の恋人で…俺はただのペットだし」
だって相沢さんがそんな事思ってるなんて俺には信じられない。
「だが、いつも側にいるのは空だからな」
フッと口元だけで微笑む相沢さんを見て俺は何だか胸がギュッと苦しくなって、相沢さんを抱きしめる。と、いっても相沢さんの方が背が高いから、胸を抱きしめる感じになってしまったけど。
「空?」
相沢さんがビックリした顔で俺を見る。
「初めてだね、相沢さんが俺の名前読んでくれたのv」
俺は嬉しくて、笑いながら相沢さんの顔を見る。
「俺真一朗も好きだけど、相沢さんの事も好きだよ?」
自分の出てきた言葉に俺自身驚いていた。だって今の今まで相沢さんが苦手だったのだから。
「私も…嫌いではない」
ちょっと眉間を寄せながら言う相沢さんに俺は苦笑してしまった。
相沢さんが照れているというのが分かってしまったから。
「よかったv俺真一朗の好きな人には嫌われたくないもん!」
「そうか」
言いながら相沢さんが俺の体を軽く抱きしめる。
「これはどう受け取ったらいいものかな?」
突然、聞こえた声に俺はビックリして教論室のドアを見る。
そこには、眉間に皺をクッキリ寄せた真一朗がいて…。
「あ…しんいちろ…」
俺はパッと相沢さんから離れる。自然と背中から冷や汗が流れてしまうのは真一朗が放つオーラがとっても冷たいモノだったから。
「随分と早かったな」
相沢さんは普段と変わらない顔と口調で真一朗に向かって言っていて、俺は色んな意味でビックリした。
(やっぱり恋人って怒っていても全然平気なんだな。俺なんてすっごい恐いのに…)
ちなみに空の意見の方が正しかったりする(笑)真一朗の周囲からは青黒いオーラが飛び散っているのだから。
「別に、いつもより少し遅かったが?」
真一朗はツカツカとこっちに向かってきて、そして相沢さんの白衣の襟を両手で掴みあげてグイっと自分の方に顔を寄せるとそのまま唇を塞いだ。
「!!」
突然の事に俺は顔を真っ赤にしてしまう。
クチュ…という音が二人の間から漏れて、俺はその場で固まってしまった。
暫くボ〜っとしながらその光景を見ていると、ようやくキスが終わった真一朗がこっちに向かってやってきた。
「空」
「あ…あの…」
何て言ったらいいのか分からなくて俯いてしまった俺の頬に真一朗は右手を添えると、ペチっと軽く頬を叩かれた。
「空は私だけのペットなんだから相沢になつくな」
「真一朗?」
俺はマジマジと真一朗を見上げる。
見上げると真一朗は困ったように笑っていた。
「空は私だけを見ていろ」
「うん…ごめんなさい真一朗…」
謝る俺に真一朗は「仕方ないな」と小さく呟くと、さっき叩かれた右頬にチュッと音の鳴るキスをしてくれた。
「相沢、お前も私の恋人なんだから勝手にペットを可愛がるなよ」
真一朗は相沢さんをジロっと見ながら、だけど口元に笑みを浮かべながら忠告していた。
「それは残念だな。せっかく空は私の事が好きだと言ってくれたのだが」
「あっ、相沢さん!!」
本当にこれ以上真一朗の期限を損ねたくなくて俺は焦って相沢さんの名前を言うけど、真一朗には当然聞こえていたりする。
「悪いが私はこれから学会があるから急遽出かける」
相沢さんは俺と真一朗の側までやってきて、俺の髪をクシャっと混ぜる。そして真一朗の頬と額に軽いキスをして教論室から出ていった。
相沢さんが出ていった後、ちらりと真一朗の顔を横から覗くと幸せそうな顔をしていた。
見過ぎていたせいか、真一朗が俺の視線に気付いてこっちを見る。
「何だ?」
「真一朗、幸せそうだな…って思って」
俺は思った事をそのまま言葉にする。
「そうだな。恋人と可愛いペットがいるのだから私は幸せ者だな」
真一朗も柔らかい表情で語る。
「だが、私のいない間に他の人間を抱き合うというのは躾不足だったようだな。しかも『好き』だと言ったそうだし?」
真一朗がニヤリと…お仕置きする時の顔を浮かべた。
「でもっ、相沢さんは真一朗の恋人だし…」
「私はさっき言った筈だ。『私だけのペット』だと。恋人でも私以外の人間には変わりない。今日は相沢も学会で出かけたから夜までたっぷり可愛がってやろう」
楽しそうに言う真一朗に対して…俺はちょっとだけ焦った。だって真一朗は意地悪な笑顔で言っていたから。
結局その日は朝方まで俺は真一朗だけのペットだという事を嫌という程教え込まれたのだった。
あれからもやっぱり変わらない日々が続いている。
恋人の相沢さんとペットの俺。だけど、一つだけ変わった事がある。
それは相沢さんに対して俺は恐いとか苦手という意識が全くなくなった。相沢さんも俺に会うと頭を撫でてくれて可愛がってくれる。
そしてもう一つ変わった事は、どういう訳だか俺と相沢さんが仲良くしていても真一朗に叱られる事が無くなったんだ。
相沢さんに聞いたら「企業秘密」と言って教えてくれなかった。その時ソファに座っている真一朗が何故か顔を赤く染めていたのを俺は偶然にも見てしまった。でも理由は…今でもわからない。何となく聞くのは野暮だと思ったからと、聞いたらまた真一朗に『お仕置き』されそうな予感がしたからだ。
俺の名前は「空」
俺は毎日優しいご主人様とその恋人に可愛がってもらって、幸せな毎日を送っているペットなんだ。
コメント
初めての相真ベースの空視点の話です。でも相真設定なので相×真部屋にアップしました!
何なのだろうこの話は…と1人突っ込みをしながら書いてました(失笑)
微妙に相空&水空チック(汗)相沢と空は水都真一朗が大好きです!愛されてますね〜真一朗。3人とも幸せなエンドが水空のペットエンドなので私はペットエンド大好きです!!
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BGM VAGRANCY様 「タカラモノ」