Tell me
誰もいない静かすぎる部屋。
その部屋の扉が開かれる。
そして入ってくるのは…俺を監禁した張本人。
だけどアイツはコレっぽちも悪いとは思ってないのだろう。
いつも唇に薄く笑みを浮かべて俺の元にやてくる。
本当に楽しそうな顔をして。
俺は鎖に繋がれた足を引きずりながらアイツの元に歩いていく。
「良い子に待っていたか?」
出迎えた俺の髪をクシャリと混ぜてあいつはそう言う。
俺は小さく頷く。
俺の反応に気をよくしたのかアイツは俺を抱き上げるとベットの上に優しく降ろす。
大切に扱うような仕草に俺はどうしてだか泣きたくなった。
いっそ酷くしてくれた方がどんなに楽だろう。
時々優しく接するから…だから嫌だ。
本気で憎めればどんなに楽だろう。
酷い事をされてるのにどうしてだか俺は水都の事を殺したい程憎んではいない。
それに何となく感じてしまった。
コイツは寂しいのだと。
漠然とだがそう思った。
どうしてだろう…一体いつ気が付いたのなんかわからないけど、水都の心はとっても脆い気がする。
考えてみればここまでするなんてよっぽどの事があったからに違いないのでは?。
人を拘束してまで自分の側にいさせるほど人の愛情に飢えてるのかもしれない。
そんな考えが思いつくと同時に今までただ憎らしかっただけの水都が酷く悲しそうに見えた。
そして少しだけど、水都との距離を縮めることにしてみた。
今みたいに帰って来た水都を出迎えたりしたり…。
初めの時はすごく驚いた表情をしていたが、次の瞬間俺が見てもわかる位水都は嬉しそうな顔を見せた。
何だかその表情を見ていたら俺まで嬉しくなったりして。
それから少しずつだけど、水都と会話をしてみた。
段々とお互い口数が増えていき、水都も普通に俺と何気ない会話をする。
だけど、絶対お互いが言わないのは学校の事。
水都が言わないのはきっと俺がここから逃げだそうと考え起こす事を防ぐためだと思う。
でも俺が学校の事を言わないのは、どうしてだか理由が見つからない。
ただ、学校の話を水都から聞いて俺も楽しそうに話したら水都が悲しむのかな?と思ってしまった。
何故そう思うのかは俺にも全くわからないけど…。
ただ、言えることは水都とのこの生活が死ぬほど嫌ではないというだけ。
もう外に出よとなんて考えなくなったといえば嘘になる。
今でもやっぱり外に出て、太陽の光や風や自然の息吹を躰で感じたりしたい。
思いきり動き回ったりしたい。
だけど、いざ帰る場所はどこに行けばいいのだろう。水都が自分で決めろと言われたら俺は寮に行くべきなのだろうか?元の生活に戻れるのだ。何も問題は無い筈なのに…水都の悲しそうな顔が一瞬頭に過ぎった。
ーツキン…
胸の辺りがチクリと小さな痛みを訴える。
「ッーー」
俺は胸に手を寄せる。
「どうした?」
水都が俺の頬に手を添える。
「さっきから様子がおかしいぞ?」
両頬を手で挟まれ、そっと顔を上げさせられる。
水都の両目にジッと見つめられて俺は微かに頬が熱くなった。
何だか恥ずかしくて思わず目線を水都から外す。
「…何でもない」
水都は怪訝な顔で俺を見ると、両手を俺の頬から離した。
「私から逃げるつもりか?」
言うと同時に水都は力任せに俺の躰をベットの上に貼り付ける。
「そんなことっーんんっ!」
『考えてない』という台詞は水都の唇によって塞がれた。
口腔に水都の舌が入り込んで俺の舌に絡まり、思いきり吸い上げられる。
「んぅ…ん…」
ジーンと痺れる感覚が広がり俺の躰から自然と力が抜けてしまう。
水都はそのまま俺の舌を何度も吸い上げる。もはやキスとはほど遠い仕草を水都は続ける。
ようやく唇が離された時、俺の躰は酸素を吸い込もうと胸を上下させる。そして先程から吸われ続けた舌はジンジンとした微かな痛みだけを感じていた。
口の端には飲み込めなかった唾液が流れシーツに小さな染みを作ってしまった。
息が整わない俺を水都は組み敷くと、耳元に囁く。
「絶対に逃がさない」
その台詞を聞いて俺の背中にゾクリという感覚が起きあがった。
「お前は私のモノなのだから」
その言葉を聞いて俺の胸はまた小さく傷んだ。
俺は水都の「所有物(モノ)」なんだ。それは今更言われなくても分かっている事だけど、どうしてか胸がチクチクと小さな棘で刺されたように痛かった。
「空?」
水都が俺の名前を呼ぶ。
どうしてだか、胸のチクチクとした痛みが微かにだか減った気がした。
「…水都」
俺は水都を呼ぶ。どうしてだか、水都の名前を呼びたかった。
後に続く言葉なんて何もない。
ただ、名前が呼びたかっただけだから。
俺は水都の首に両腕を絡ませる。
「どうした?」
俺のらしからぬ行動に水都は驚いた顔をしつつも口元に笑みを浮かべる。
「別に…こうしたかっただけ」
俺は水都の片口に顔を埋めるように抱きつく。
「そうか」
水都は特に何も言わず、俺の頭を優しく撫でる。
俺は大人しく水都に躰を預ける。
躰から伝わってくる水都の体温がとても心地良い。
いつの間にか俺の背にも、水都の腕が添えられて、抱きしめるような形いなっていた。
大嫌いな奴だったのに。
俺をこんな目に合わせて、憎い相手なのに。
許せない筈の男なのに。
でも…本気で嫌いになれない。
憎むことができない。
許せないと思えない。
俺は一体どうしてしまったのだろう。
自分の気持ちが全くわからない。
この現状を誰か助けて欲しい。
自分ではもうどうにもできないこの状況を。
俺の心はどこかで壊れてしまったのだろうか?
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