伝えないキモチ
昼休みの学校の屋上。本来なら生徒の立ち入りは禁止になっているが親友の本城祭がどういう訳だか屋上の鍵を持っていた(一体何をして手に入れたのかもの凄く気になるが言えない)ので俺達は屋上で昼休みを過ごすことにした。今日は朝からポカポカと陽気で気持ちがいい。こんなひに屋上の鍵を持っていた祭には感謝をする。
「やっぱり今日は絶好の屋上日和だよね」
「そうだね。祭ちゃん」
祭が言うと、ともう1人の幼馴染みだという(記憶喪失で覚えてない)最近転校してきた元ルームメイトの藤守直が返事をする。
「早く飯食べようぜ〜俺マジ腹が減った…」
俺がそういうと2人とも笑いながら、その場に腰を落とす。
「はー食った、食った」
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
食事が終わり、折角の昼寝日和でもあるのだから、俺はそのまま昼寝に入ろうとした矢先、祭がいきなり俺に聞いてきた。
「空は水都先生のこと好き?」
−ブーッッ!!
「うわっ!空汚いな〜」
「いきなり吹き出さないでよね!」
祭の台詞に驚いて、思わず飲んでいたコーヒー牛乳を吹き出してしまった。幸いにも友人2人には被害は無かったが、いきなりの祭の質問に俺は驚きを隠せない。
「なっ、まっ、ちがっっ!!」
<何で、祭、違う!!>と叫ぼうとしたが上手く口が回らず最初の単語しか出てこない。
「だって空最近は昼も放課後も教論室に出入りしてるし、なんだかチョット色っぽくなったしね〜ナオ君!」
「…うん」
藤守は一応俺と水都の関係を知っているが、その返事はどちらに対して頷いてるのかまでは分からなかった。
「で?実際どうなの?」
祭は興味津々で俺に聞いてくる。
「祭サン何かあった?」
『目がコワイんですケド…』
ビクビクしながら俺は祭の質問に質問で返した。今目の前にいる祭の俺を見る瞳はハッキリいって恐怖の対象だ。口元にはいつもの笑みを浮かべているが目は完全に据わっているに近い。そしてすごい威圧感を感じる。その感じは怒った時のアイツを思い出だす。アイツの場合は震えがくるうらいの威圧と恐怖を受けるが…。でもそれよりもその後のお仕置きの方がもっと恐ろしい。快楽という名の拷問と言っても過言ではないのだ!
「僕に質問したくせに何考え込んでるの?」
「いやっ、別に何も考えてない…ケド」
「ふ〜ん」
祭の顔が目の前にあり内心ビビリながらも俺は何とか答える。
「で、空は水都先生のこと好きなの?」
「別に好きとか…そういうのじゃないから……」
『わかっているのはアイツが変態陰険サド教師ってだけだしなぁ』
別に俺は初めから水都を好きではないのは確かだと思う。
「じゃあ嫌いなの?」
「嫌い」
間髪入れずに俺が返事をすると祭はちょっと以外な顔をする。
「嫌いなのに毎日教論室まで足を運んでるんだ」
祭は少し以外な顔をして俺を見る。
「ナオ君はどう思う?」
「え!?俺?」
「そう」
いきなり話を振られた藤守は考えている。そういえばコイツって人数多いとあんまり会話とかに入ってこないよな〜やっぱり転校生だからか?でも一応俺達3人は幼馴染み(らしい)だし。
「別に水都先生の事を嫌っているようには見えないかな」
「え?」
「やっぱり〜」
まさかの藤守の台詞に驚く俺と「そうだよね」と頷く祭。
「だって羽柴結構水都先生に懐いてるし。それに本気で嫌いならたとえどんな事があっても絶対近づかないよ」
どうやら藤守はどこまでかは分からないが、俺達の関係に気付いているみたいだ。
「違うかな」
藤守は俺と祭を交互に見ながら話す。
「違わないね」
祭は笑いながら藤守の言葉を肯定する。
「なんで当事者の俺を差し置いて2人で完結してんだよっ!!」
自分のことなのに親友といえど、他人に自分の気持ちが分かられてしまうのも何だか癪に障るのだ。しかもお互い俺の文句なんて聞いてないという風に、「やっぱりそうだよね」なんて顔を見合わせて笑いながら言ってるし…。
「で、何でいきなりそんな話をしてくんだよっ」
俺は拗ねた口調で言う。この際高校生ということは一切忘れることにした。
「空ったら一応16歳なんだよ。もうちょっと大人にならないと駄目だよ」
『不愉快の原因を作った第一人者がしゃあしゃあとよく言うよな』と声に出しそうになったが喉の奥に引っ込める。
「…というかドコまで知ってんの?2人とも…」
「ドコまでも何もいつまでも空が言わないからこうして聞いてるの」
「何を?」
「水都先生との関係。恋人同士じゃないの?」
「………」
絶句。どこをどうしたら恋人同士なんて可愛らしい関係に見えるのだろうか?
「ちがうの?」
何も語らない俺に祭は再度聞いてくる。
「違うっ!!絶対そんな事は無い!どこをどうみたら俺とアノヤローが恋人同士に見えるっていうんだよ」
「一応噂も流れてる位に有名な話だけど…ね?」
「うん」
「そうなのか」
脱力している俺に2人は更に追い打ちをかけてくる台詞を言ってきた。
「だって頻繁に教論室に行くのってやっぱり恋人に会いたいから惜しげもなく毎日教室からは遠い数学教論室に通っているわけだし…それに最近呼び出しされてないしねぇ」
「それはっ」
行かなければ次の日一日が地獄だから−。
「空と水都先生って結構仲よさそうに話してる姿見かけるし」
どうみても俺は苛められているだろう−。
だって俺はアイツが大嫌いだから。
「少なくとも先生は空の事大事にしてるよ」
−−ドキッ−−
「そんなこと……あるわけ…ない」
祭の言葉に驚いた。大事にされているのだろうか?俺は。いつも会うたびに変なことされるのに、大嫌いなのに……なのに自分の心臓がドクンドクンと早鐘を打っている。
わからない。
自分の気持ちが…
おれは水都が嫌いな筈だ。アイツは俺の事を面白い玩具みたいな感覚で扱っているだけ。俺達の関係はアイツのお遊びが飽きるまでの間だけだ。
だから、だから−
「どうやら余計な事を言っちゃったみたいだね。僕は用事を思い出したから先に失礼するよ。」
ハッとして頭を上げるとそこにはちょっとだけ困ったような笑みを浮かべる祭がいた。が、すぐのいつもの笑顔に戻る。
「……祭」
「待って、祭ちゃん!俺も図書館に用事あるから一緒に行く」
藤守もあわてて立ち上がる。そして俺だけに聞こえるような小声で
「羽柴、自分の気持ちに鈍感すぎなんじゃない」
どこか怒ったような口調で言い、2人は屋上から姿を消す。
「何なんだよ2人とも」
そのままバタンと仰向けに体を倒す。
遠くから窓を開けているらしく、かすかだが生徒達の声が聞こえてくる。
ぼんやりと空を眺めていると視界一杯に大きな雲が現れた。
「…このまま雲と一緒に流れていきたいかも」
「それは困るな」
「…何でアンタがこんな所にいるの?」
俺は目線だけ屋上入り口の扉に向ける。そこには先程までの話題の主の水都真一朗が立っていた。
「たまたま廊下を歩いていたら本城が教えてくれたんでな」
「ふーん」
水都は俺の方に向かってくると、頭上前にしゃがむ。
「羽柴」
「今日は午前出張だったからお昼もいないと思ってた」
昼休みも最近教論室で食べるようになったが、水都は出張や外出が多くて昼は滅多に学校にいない。だから今日みたいに昼休みに教論室以外で会うのは初めてだったりする。
「用事が思ったより早く終わったからな」
「ふ〜ん」
水都はそう言うと俺の頭をクシャっと撫でる。俺は思わず目を瞑ってしまうが正直水都に頭を撫でられるのはそんなに嫌ではないと最近思っていることに気付いた。
「本城達と何を話していたんだ」
俺の頭を撫でながら唐突に水都は聞いてきた。
「へ?」
俺はガバッと勢いよく起き上がると、腰を下ろした水都と目があった。
「本城がお前は今大切な考え事をしているから温かく見守ってろと言ったからな」
「そうなんだ」
祭の台詞に正直驚く。それよりこの男が他人の意見を直に従っているのも珍しい。俺はまじまじと顔を覗き込むように見ていると、一瞬だが水都がニヤリと笑うとそのまま顎に手をかけられキスをされる。
「ちょ…っ、んんぅ…っ」
初めからの深い貪りつくような口づけに俺は息継ぎがうまくできない。顎を軽く押されれれば口唇は自然と開かれ水都舌がすんなり入ってくる。空の舌を軽く吸いながら口腔の中を蹂躙していく。チュクチュクと濡れた水音が鼓膜に響いて興奮を煽る。
「ふ…ぁっ」
空の顎にはどちらのともいえない唾液が唇の端から漏れる。
「…っ、はぁ…はぁ…」
長い口づけが終わり水都が空を解放する。空は酸素を求めるようにハァハァと足りない酸素を体内に吸収している。その様子は走り終わった選手が一生懸命酸素補給をしているのと似ていた。水都は立ち上がり、空を見下ろしながらハァとわざとらしくため息をつく。
「いい加減キス位慣れろ」
そんな空の様子を傍観していた水都は少し呆れた口調で言う。
「っせーな。慣れないもんは慣れないんだからしょうがないだろっ!」
「そうだな。その代わり上の口より下の口の方はすっかり慣たみたいだしな」
ニヤッと笑う水都に空はかぁぁっと顔を羞恥で真っ赤に染める。
「な、なっ…この変態、陰険、サド教師−」
(信じられねーこんな所でそんな事言うなんてっ!しかも真っ昼間からー!!)
キッと水都を睨みつけるが水都はそんな空の反応が気に入ったらしく喉の奥で笑いながら、髪を混ぜながら撫でる。
「教師に暴言を吐くとは言い度胸だな。躾もどうやらまだ手緩(ぬる)かったようだし放課後は覚悟しとくんだな」
態と無表情で少し低い声音で水都は空に告げる。
「横暴だぞっ!最初に変なことしたのは水都じゃねーか」
空も負けじと何とか反論する。
「変な事とはどんなことだ?言ってみろ。私はお前を可愛がっているだけなんだがな」
「…それは……」
顔を赤く染めたまま空は“変なこと”を思い出す。だが恥ずかしくてとてもじゃないが、言えない。言ったら言ったで水都に犯られるのも想像できる。
「早く言わないと私も暇では無いんでな、帰るぞ」
水都は時計を見ながら空に言うとニヤニヤ笑いながら空に促す。どうみても苛めて楽しんでいるという風にしか見れない水都に空はムカムカと腹が立ち始める。
「〜もう水都の事なんか絶対好きになってやんねーからな!俺もう教室帰るっ!!」
言うのと同時にダッシュで屋上から姿を消す空の後姿を水都が悲しそうに見ていた事を知っている者はいなかった。
一方廊下をダンダンと足踏みをするかのように歩く空を皆異様な目で見ていたが、本人は先程の事で全く気付いていない。
(何でいつも水都は余裕かましてんだよ、俺1人いっつも真剣に悩んだりして馬鹿みたいじゃん)
水都と自分は年が大体一回り違っている。だからどうしても自分が子供扱いされるのは仕方ないと頭では分かっているのだが、精神(ココロ)はまだ追いつかないのだ。それに自分は水都の事が大嫌いなのに毎回毎回油断してしまう。嫌いな奴には警戒心が強くなってしまうのが当たり前なのに水都(アイツ)の前だと全て空回りになるのでどうしようもない。
(さっきのキスも拒めた筈−。顎に手をかけられる所で俺は次に何が起こるのか理解していたのに。………それなのに避けることもできなかった)
自分の気持ちが段々とハッキリしてくるが、認める訳にはいかない。この気持ちは嘘だ。俺は水都の事が憎い−。俺の大事なモノを簡単に奪っていったアイツが−。だから俺は絶対にこの気持ちを認めない…いや、認められない。万が一俺が好きだと言っても水都は俺の事を“毛色の違うペット”や“珍しい玩具”としてしか見ていないだろうし。
空は目頭が熱くなるのに気付きダッシュで教室まで走っていく。
「失礼シマス」
「入れ」
今日もいつもと変わらない放課後の教論室。
お互いにお互いの事を思っていながら知らないまま、知らせないまま体を合わせる恋人達の逢瀬の時間がやってきた。
END
コメント
ネットで初めてのSS。短い上、シリアスに…(汗)当初はギャグで行くはずだったんですが、どこがどうなってこんなオチに…。文才の無さを痛感(泣)