心理テスト
のどかな昼下がり。
たまたま午後一番の授業が教授の都合により自習になったので生徒達は皆それぞれ仲の良い友人達と話したりと自由な時間を過ごしていた。
「ねぇ、この心理テストキラに試してみない」
ミリアリアがパソコンで見ていたサイトをトールとカズイに見せる。
「お、面白そうだな」
トールは心理テストの内容を面白そうに見る。
カズイもトールの後からサイトを覗くと「本当だ」とトールに同意する。
「それじゃぁ、キラに早速質問しに行きましょう」
この心理テストが思わぬ事態になる事を、この時まだ三人は知らなかった。
トール、ミリアリア、カズイの三人も自習と分かり直ぐにキラの机へとやってきた。
「なぁキラ、ちょっと質問してもいいか?」
「何?」
トールの楽しそうな顔にキラも笑みを浮かべる。そしてトールの両隣にいるミリアリアとカズイも何だか楽し気な笑みを浮かべていた。
「これからキラに4つ質問をするんだけど、答えてくれないか?」
少し真剣な顔をするトールにキラは不思議そうな顔をしながらも頷く。
キラの反応を見た3人は、お互いに目を合わせて頷く。
「そんじゃ質問するけど、質問の答えに両親を入れるのは無しだからな」
トールがキラの目の前で指を突きつけて忠告する。
「うん…でも何で両親は駄目なの?」
キラが最もな事を言う。
「あ〜それは……なぁ、カズイ」
トールは頭を掻きながらカズイに助けを求める。
「えっと…両親を入れると質問の答えがちょっと違っちゃうんだ」
いきなり話を振られたカズイは少し困りながらも無難な事を言う。取り合えず、これからする質問の答えに父親や母親というのはありきたりなので省く事にした。
「そうなんだ」
キラは特に疑問に思うことなく、カズイの言葉をそのまま鵜呑みにする。
トールは内心「もう少し突っ込んだ方がいいんじゃないか?」とキラの態度を見て思ってしまう。だが、隣にいるミリアリアから『余計な事は言うな』という笑顔の圧力を感じでトールは一度コホンと咳払いをしてキラに質問を始める事にした。
キラは全く自分の事に無頓着な上、性格はかなりの天然ぶり。今まで恋愛関係の話は全く無かったので、これがきっかけでキラの好きな人が分かるかも知れないと三人…特にミリアリアは期待に胸を膨らませるのだった。
「さっきも言ったけど、これからキラ4つ質問を出すから答えてくれ。答えに両親は無しだからな」
「うん」
念を押すトールにキラも再び頷いた。
「じゃ、初めにキラは森と林があったらどっちに入りたい?」
「森と林?そうだな……森に入ったら一人じゃ無理だから林かな」
「キラは林なのね。ちょっと意外」
ミリアリアの呟きにキラは「え?」と首を軽く傾げるがトールから「ミリィ最後まで口出さない」と注意する。
ミリアリアも「ごめん」と謝りトールに次の質問を言うように促す。
「次の質問は、林に入ると、突然目の前に壁が現われました。この壁の高さはどのくらい?低い、中くらい、高いならどの辺り?」
「壁っていうならあまり低くは無いよね…なら僕の身長と同じくらいかな」
キラは顎に手を当てて答える。
だが、トール達にとってはココまでは大した意味の無い質問だった。問題はここからなのだ。
「キラは暫く林の中を歩いていると、「乞食(かたい)*こじき」に出会いましたが、この人はあなたが知っている人で驚きました。さて誰でしょう?」
「乞食…でも僕の知っている人なんだよね。う〜ん…それってココにいる人じゃなきゃ駄目なの?」
キラの問いにトール達は『この教室内の人物でなければいけないのか』という意味で捉えて「別に教室意外でもいいよ」と返事をする。
まぁこの中にに乞食の意味に当てはまる人物はいないと思ってた
「う〜ん…じゃぁ、サイかな」
「サイ!?」
キラの答えにトール達は驚く。
「理由聞いていい?」
ちょっと意外というか、考えてなかった人物を言われて三人は驚く。
いかにも良いところの育ちなサイが乞食という発想はちょっとできなかった。
「だって、サイが乞食になってたらビックリだもん」
「まぁそれはそうだな」
「確かに、サイが乞食っていうのは思いつかないし、もし本当にそうなったら驚愕よね」
「現実になる確率はかなり低そうだけどね」
キラの発想に、トール、ミリアリア、カズイの順に自分の思いを口にする。
「でしょ?だからサイ」
キラはクスクス笑ながら話す。
「でも選択した人物はちょっと納得ね」
ミリアリアは心理テストの内容を思い出して頷く。
「…どーせ、サイには敵わないよ」
トールがつまらなさそうに呟く。
そんなトールの姿にミリアリアはやれやれと呆れた顔をする。
「トール、ごめん…」
トールの態度を見たキラは、まさか友人を傷つける結果になってしまいすまなそうに謝る。
「いいのよキラ。勝手に拗ねているだけなんだから」
ミリアリアはキラに向かって微笑みかける。
「キラ、本気で気にするなって!…というか、ごめんな」
トールが慌ててキラに謝る。
キラはそんなトールをみて、思わず"ぷっ"と笑う。
「そこで笑うなよ!」
トールはわざと眉を少し上げて怒った態度をとる。
「だって、トールこそそんなに真剣に謝んないでよ」
「ほらほら、二人ともまだ質問は残ってるんだから、次行くわよ」
二人のやりとりにミリアリアはパンパンと両手を叩く。
「あぁ、そうだった」
トールが思い出したようにキラを見て、わざとらしくコホンと一回咳をする。
「これが最後の質問な。そうこうしているうちに、キラは林を抜けてしまいました。その時最後に出会ったのは 誰?」
「アスラン!」
今までとは違い、非常に嬉しそうな顔で即答するキラに、トール達はかつてこれ程まで嬉しそうに、しかも素早く返事を返したキラはいただろうかとカレッジで出会ってから今までの月日を思い出す。
<<<無いな(わね)>>>
そして三人して自分自身に突っ込みを入れた。
同時に「アスランって一体誰?」という考えが浮かんでくる」
「アスランは僕の幼馴染みで一番の…親友なんだ」
キラは三人の疑問を感じ取ったように、俯きながら説明する。
キラに一番の親友がいたという事実を今更ながら知らされ、自称『親友』のトールは違う意味でショックだった。
トールの心中を察した、恋人のミリアリアはそっとトールの肩を叩いた。
「ところで、この質問ってどんな意味があるの?」
少し(?)へこんでいるトールには気付かず、キラは当然の疑問を口にする。
「意味は充分あるぞ」
いつの間にか回復したトールが力一杯力説する。
「キラに一つ聞きたいんだけどアスランって男?それとも女?」
トールは、少し気になる点をキラに問う。
「アスランは男だよ」
同じ同性の親友がいた事にトールはかなり落ち込みそうになったが、隣にいるミリアリアから「さっさと先に進めろ」という威圧感たっぷりの視線で睨まれてしまい、トールはへこみそうになる気持ちを捨てて話を先に進める。
「ねぇ、この心理テストってどういう中身なの?」
キラは自分の答えた内容がどんな結果だか興味があった。
「単なる心理テストだし、当たってない点もあるかもしれなけど、まぁ所詮テストだから気にするなよ」
トールは少し目を泳がせてキラに言いづらそうに説明すると、一度咳払いをする。
「一問目の『森か林』というのは内面の性格を現すんだ。森を選んだ人は女性的、林を選んだ人は男性的って意味」
キラはうんうんと頷くと「次の答えは?」と、トールを見る。
「二問目の『壁の高さ』はその人のプライドの高さを表すんだ」
「そうなんだ」
「三問目の「乞食」に選んだ人は自分が尊敬している人で、四問目の最後に会った人は、あなたの運命の人っていう結果だったんだ。まぁキラには当てはまらなかったみたいだけどね。何せアスランって男だし」
トールは苦笑する。何せ運命の人が幼馴染の同性というのは当てはまらないとトールは思う。
「凄いね。この心理テスト!殆ど当たってるよ。」
だが、キラからは思ってもいなかった返事が返ってきた。
「へ?」
「だからこの心理テスト凄く良く当たるねって言ったの」
キラは再度同じ事を言う。
「え〜とキラ…当たってるのか?この結果がか!?」
トールは思わずキラの机の上に両手を付いて真剣な表情で聞き返す。
運命の人が幼馴染で同性という結果なのに、キラは『良く当たる』と言うのだ。もしかしたら運命の人の意味が良く分かってないんじゃないのかとトールは本気で思った。
だが、キラから告げられる告白を聞いてトールはその考えが間違えだという事に気付かされるのだった。
「だって僕一人で森に入って迷子になったら嫌だから林にしたんだけど…アスランとなら森で全然構わないなぁ。アスランもきっと森を選ぶだろうし…それじゃぁアスランは女性的なのかな…でも手先器用だし、世話好き、綺麗だし何か女性向きって言われてもすっごい納得」
キラは一人頷く。
「プライドが高いっていうか、僕は昔から意地っ張りとか頑固とか色々言われてたなぁ〜それに三問目の尊敬するっていうか、実はサイってちょっとお兄さんっぽくて、いつも落ち着いて相談とか乗ってあげている所は凄いって関心するよね」
サイが選ばれた事はまんざらでも無い様子でキラは話す。
「じゃぁ何気に3問までは合っているって事だな」
トールが何処か安心した表情を浮かべる。
「え?4問目も合ってるよ。実は4問目が一番合っている所なんだ」
だが、キラの発言によりそれは単なるトールの早とちりに終わるのだった。
「運命の人がアスランなんて昔からだもの…別に今更変える気もないけど。心理テストって初めはちょっと嘘っぽいっとか思っていたけど案外当たるものなんだね。今度アスにも試してみようv」
いつも以上に饒舌なキラと普通にノロケ話をするキラに友人達は目が点になる
「えぇと、キラ、そのアスランって人どういう人なの?」
ミリアリアは先程からキラの口から出る『アスラン』という人物の事を聞く。正直、興味津々だった。
その証拠に目が爛々と輝いているのを恋人であるトールにはバレバレである。
ミリアリア…腐女子決定である瞬間だった。
各云うトールも『アスラン』という人物にミリアリア同様、興味があった。
「アスランはね、目が翠で凄いキレイで髪も夜空みたいに青くて触ると気持ちいいんだ。家が近所でいつも一緒で、何でもできてマイクロユニットが大好きで、トリィを僕にくれたの!」
それはもう、笑顔前回でキラはアスランを語る。
一人何処までも突っ走るキラを誰も止められる者はいなかった。
それから暫く惚気以外考えられない『アスラン』という人物との思いで話を三人は聞かされる事になった。
「キラはアスランが本当に好きなのね」
一段落したところで、ミリアリアは少し興奮気にキラに問う。
「勿論!僕はアスランが世界で一番大好きv」
恥ずかしさもなく大胆発言をするキラにトールはちょっとした悪戯心が芽生えた。
「じゃぁさ、アスランにその言葉をメールで送ってみたら?」
キラが照れて困るだろうと思いながらもトールはからかい混じりに言ってみる。
「うん」
が、キラは普通に頷くと、自分のPCの画面を上げるとそのまま本文を入力し相手に送信する。
「多分忙しくなければ直ぐにメールが返ってくると思うよ」
「あ…そう…」
本当に実行した(それもかなり高速なタイピングで)キラにトールはもう突っ込みたい所がありすぎで何とも情けない返事しか返せなかった。
キラがメールを送ってから、まだ1分と経っていない間にキラのPCからメールの受信音が鳴る。
「返ってきたよ」
あまりにも早すぎる返答に三人は呆気に取られる。
キラはメールの受信フォルダを開いて中身を見て「もう、アスったら」と頬を赤く染めながら、しかし凄く嬉しそうに笑う。
その後「アスランらしいな」と微笑みながらメールを見ると、今度はトール達にパソコンを向ける。
「アスからのメール読む?」
キラの言葉に三人は頷き画面を見て…硬直した。
もはや唖然という言葉がピッタリだった。
そして三人とも同時に<<<見なければ良かった>>>と切に思ったのは言うまでもなかった。
三人が見たキラとアスランのメールの内容とは――
『アスラン元気?っても毎日メールしているもんね。僕とトリィは今日も元気だよ。
今日は心理テストをしたんだv
その中で運命の人っていうのがあって、僕の運命の人がアスランだったんだ。
その結果をきいて凄く嬉しかったんだvだって僕は世界で一番アスランが好きだもん。アスランも僕の事一番好き? ――キラ』
『俺は元気だよ。キラとトリィも元気で良かった。
早くキラを抱きしめられる日が来てくれないかと毎日思ってる。
心理テストの結果は俺としてはかなり嬉しいよ。
キラ…俺が毎日メール「愛している」と伝えているのに信じてくれてないのかな?俺はキラの事がこの世界で、いや宇宙でで一番愛してるよ。勿論、俺の運命の人はキラ意外考えられない。覚えておいてね。 ――アスラン』
「何処のバカップルだ!!」と思い切り突っ込みたくなる内容のメールだったが、キラの余りにも嬉しそうな顔にただ脱力するだけだった。
そして、キラは嬉しそうにアスランに返信するためのメールを打ち始める。そして数十秒後またしても受信音が鳴る。
甘ったる過ぎなメールをそれから暫く見せられた三人は胸焼けが酷く医務室に行く羽目になったとか(笑)
そしてそれから三人の中では『アスラン』と『好きな人』というキーワードを言うのは止めようと誰が言うでも無く、暗黙の了解となったのだった。
おわり。
コメント
(2004/03/07)
(2005/07/14)
一部修正しました。多分、修正というか話がちょっと変わったかもしれません。サイを登場させた方が纏まるかな?とか思ったので…あまり変わらないかもですね(汗)
*乞食…〔「傍居(かたい)」の意〕
(1)こじき。物もらい。
(2)人をののしっていう語。ばかもの。
「心なしの―とは、をのれがやうなる者をいふぞかし/宇治拾遺 2」
(3)〔昔、罹病(りびよう)者は放逐され放浪乞食をしたところから〕癩(らい)病。また、それにかかった人。かったい。
情報提供「goo辞典」
![]()