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ここはとある大きなお屋敷。 そこにはとても仲睦まじいカップルが二人きりで住んでいます。 主人の名は手塚国光。 恋人はメイドでもある越前リョーマ。 これはそんな恋人達の日々を書いたものである。
「ふんふふふ〜ん♪」 廊下の調度品を拭いているメイドが一人鼻歌を歌いながら楽しそうにというか嬉しそうに掃除をしている。 この屋敷で主以外の唯一の住人メイドのリョーマである。 リョーマは時計を何度も見ながら掃除を繰り返す。 今日はリョーマの雇い主であり恋人でもある手塚が帰って来る日だった。 手塚は昨年両親を事故で一気に失い、その後莫大な遺産と会社を与えられた。当然周囲の大人達は手塚が成人するまで会社は自分たちの好きにできると思っていたのだが、手塚は自分が仕切ると言い切った。勿論、周囲は反対したが、元来頭の出来がすこぶる良く誰も何も言えなくなった。若干16歳ながらこの辺り一帯の土地を仕切り、事業もどんどんと業績を上げる手塚瞬く間に有名になった。 そしては最近ではあちこちに出張で中々家には帰ってこれなかった。その手塚が今日帰って来るのでリョーマは朝から待ち通しかった。 リョーマが手塚の家に来て2年、恋人同士となったのは1年位前だった。 「早く帰ってこないかな、国光♪」 リョーマの顔が自然と笑顔になる。それもその筈、大好きな恋人に会うのは実に1週間ぶりだったりする。 壺に手をかけた瞬間玄関のドアが開いた。 「ただいまリョーマ」 ドアが開くと同時に優しい声が響く。 「国光っ!!」 リョーマは廊下を走り玄関に入ってきた人物に勢いよく飛びついた。 「…ぅっと」 手塚は少しよろけながらもしっかりとリョーマの躰を抱きしめる。 「何かあったのか?」 腕の中で泣き始めるリョーマを手塚は心配する。 「うう…ん…くにみ…が、帰って…きて…うれしいから」 嗚咽で途切れ途切れの台詞だがリョーマのその言葉に手塚はギュゥっと強く抱きしめる。 「俺もリョーマに会えてすごく嬉しい」 手塚はリョーマの頬に手を添えるとそのまま深い口付けを交わす。 「あ…ふぁぁ…ん」 リョーマの口腔に手塚の舌が進入してくる。そのまま舌を絡め取られ吸われると、足がガクガクしてくる。手塚はリョーマの腰を手で支えながら更に深くリョーマの口腔を犯していく。 いつの間にかリョーマの唇の端からは混ざり合った唾液が流れ出す。が二人は気にせず角度を変えながら何度もキスを繰り返す。 手塚が唇を離した時にはリョーマは手塚の胸にもたれ掛かって何とか立ってられる状態だった。 「早くリョーマに会いたくて仕方なかった」 口元に笑みを浮かべながら手塚はリョーマを見る。 「本当?」 リョーマは顔を上げて手塚を見る。 「あぁ」 手塚は優しくリョーマの髪を梳く。 「俺もすごく、すっごく国光に会いたかった!」 リョーマも嬉しそうにニッコリと手塚に笑顔を向ける。 「そうか」 手塚はリョーマのその台詞に満足して、涙で少し腫れてしまった目元に触れるだけのキスを送る。 「寝室に行くか?」 手塚が唇を離しながらリョーマに問う。 「…うん」 リョーマは顔を赤くしながら首を縦に振る。 「寝室に行こう」 リョーマは手塚の袖をクイっと引っ張りながら小さくつぶやいた。
会えなかった日々を埋め尽くすかのように何度も何度もお互いを求めた。 やっとお互いが満足した時にはすでに疲れ切っていた。 「ねぇ…くにみつ〜」 掠れた声でリョーマは手塚の名前を呼ぶ。 「何だ?」 手塚はリョーマの頬を優しく撫でながら返事する。 「俺、国光のメイドやってて幸せだよ」 リョーマはニッコリと笑う。 「俺もリョーマを雇えて幸せだ」 「う…ん…」 リョーマはそのまま眠りについてしまう。 「…幸せ、か」 手塚はリョーマの頬を撫でながら一人両親が亡くなった時を思いだす。 両親が亡くなったと同時に手塚は使用人達を全員解雇した。 元々あまり広い家が好きではない手塚は一人でこの家に住むのも考え、そして両親には悪いが家を売って小さな一人で充分な広さの家かマンションを建てようと思っていた。 だから使用人達は必要なくなった。 もちろん次の仕事先から暫くの生活費も全て用意して。そして屋敷からは次々と使用人達が消えていった。 だがリョーマだけは違った。手塚がどんなに言ってもここに残ると言い張った。 あまりの剣幕に理由を聞くと途端真っ赤になるリョーマに訝しんでいると小さな声でリョーマは呟いた。 「アンタの事好きだからーそれに凄く寂しそうな目をしていて俺じゃ…何もできないかもしれないけど、それでも何かアンタの役に立ちたいんだ」 最後の辺は小さな声になったが手塚の耳にはきちんと聞こえていた。 一方リョーマは俯きながら目の縁からは涙が溢れていた。 手塚は肩を振るわせて必死に泣くのを堪えているリョーマを見る。 “凄く寂しそうな目をしてー” 手塚の頭にリョーマの台詞が響く。両親が死んだ後もずっと普段通りにしていた。他人に泣いたり、落ち込んだりする姿を見せたくはなかった。だから悲しみもこらえて今日まで普段と変わらぬ動きでいた筈なのに、リョーマは手塚の感情をズバリ言い当てた。周りの誰もが手塚の演技にだまされて『親が死んだのに泣きもしないなんて』『かわいげのない子』だと散々言われてきのに。 手塚は無意識の内にリョーマを抱きしめていた。 「ふぇ?」 気の抜けたような声をリョーマは出す。驚いて涙も止まってしまった。 一方手塚も何故、リョーマを抱きしめたのか分からなかった。無意識の行動に手塚自身焦っていた。 「…これは…」 「俺、ここにいていいの?」 手塚が言うより早くリョーマが聞いてくる。 「あぁ」 手塚は反射的にそう答えてしまった。 「よかったぁ」 腕の中で安心したように微笑むリョーマに手塚の鼓動は早くなる。 (俺はどうしたんだ?何で…) 自分でも自分の行動や言動がよく分かっていないが、リョーマの顔を見るとつい頬が緩んでしまう。 そして手塚にも一つだけ確かに理解できた事があった。それはー 「俺の側にいてくれないか」 手塚はリョーマと視線を合わす。途端リョーマの顔が困惑する。 「側にいて…いいの?」 「あぁ。いてくれ。リョーマ」 初めて名前を呼ばれてリョーマは耳まで赤く染めるが手塚はそんなリョーマが可愛らしくて、そして愛おしいと思った。 それから暫くしてリョーマは恋人になった。だがメイドの仕事も好きだという事で現在もこの屋敷のメイドだったりもする。 売り払う筈の家も何だかんだでリョーマに『思い出がいっぱいあるから残すのは勿体ない』と豪語されこの広い屋敷に二人ですむ事になった。 「ん…んぅ…」 リョーマの声で手塚は我に返る。 (懐かしいことを思いだしたな) 手塚は苦笑すると。リョーマの躰を自分の方に寄せ、そのまま眠りについたのだった。
大きいお屋敷にご主人さまとメイドが二人きりで暮らしています。 だけどとても幸せに暮らしています。 お互いがお互いを誰よりも大切に思っているから。 そしてお屋敷の中は今日も幸せいっぱいの主とメイドの姿がありました。
終わっとけ…自分。
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