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大切な貴方の為に




ある夏の暑い休日、立っているだけでもその暑さで倒れそうな日でも等しく部活は行われる。




「レギュラーはA、Bコートで練習試合。他の者は素振り。各自、暑いからといってだらけるな!」


 こんな暑い日だというのに、そんな事は全く気にしていませんといった雰囲気を醸し出している手塚は、部員に檄を飛ばす。




「全く、こんな暑い日だってのに、手塚もよくやるよなー。もうちょっと頭冷やした方が良いんじゃない」


 コートへ向かう途中、菊丸は隣にいる不二にそんな事を言った。


「英二、あんまり手塚の悪口を言ってると・・」


「菊丸、どうやらお前には個人練習が必要なようだな。何ならグラウンド20周走るか?」


 二人の背後から眉間に皺寄せた手塚が、冷たく言い放つ。


「ほらね」


 手塚のその言葉に、僕の言ったとおりだよと不二は菊丸に微笑みかける。


「ご、ごめんだにゃー!!」


 20周という言葉に、菊丸は小走りでAコートへと入っていく。菊丸が遠ざかったのを確認すると、不二は少しだけ開眼モードになって、


「手塚、あんまり僕の英二をいじめないでくれる。幾ら部長だからって、誰彼構わず走らせて良いってもんじゃないよ」


 と、手塚に一言そう呟く。開眼モードの不二のそれには、普通の人間ならそれだけで竦み上げるものなのだが、手塚の場合はそうでなかった。


「だらだらしているから当然の事を言ったまでだ。それとも・・・、お前が代わりに走るか、不二?」


「僕に意見するなんて良い度胸だね、手塚。言っとくけど、僕に勝つのはまだ早いよ」


 二人のやり取りに周りの部員は、こんな暑い日なのに凍りつかされるのであった・・・。








「第一試合は菊丸、そして越前。二人共コートに入れ!!」


 コートに響く手塚の声。その声に二人はコート内へと入っていく。


「おチビが相手か〜。よーし、おチビ手加減しないからにゃー♪」


 ラケットをくるくると回しながら、菊丸のテンションは良い感じに上昇していく。


「・・・・・・」


 だが、そんな菊丸にリョーマからの返事は返ってこない。何時もなら、自信に満ち溢れたような台詞が返ってくるというのに・・・。


 周りのレギュラーもその姿を始めは不思議そうに眺めていたが、それだけ気合が入っているのかと思い、何も言わなかった。


「ザ・ベスト・オブ・ワンセットマッチ。菊丸サービスプレイ!!」


「よーし、おチビ行くぞー!!」


 菊丸はリョーマにサーブを打つべく、ボールを頭上へと上げる。そして、それを打とうとした瞬間、


「待て、菊丸!!」


 手塚のその一言に、菊丸はサーブを打つのを止める。


 手塚の行動に他のメンバーはどうしたのかと見ると、もうその時には手塚はリョーマの傍へと行っていた。そして、手塚はリョーマの額に手を当て、


「やはり・・・な。どうして熱があると言わなかったんだ」


 とリョーマに言うと、まるでそれが最後の砦とばかりに、リョーマは持っていたラケットを落とすと、手塚の胸に倒れ込んだ。


「おい、越前!!」


 手塚はリョーマに呼びかけるが、リョーマからの返事は無い。その身体を抱き留めただけで、リョーマの熱がかなり高い事が分かる。


 手塚はすぐさまリョーマの身体を抱き上げると、保健室へ向けて歩を進めた。




「手塚、俺も行くにゃ!!」


「しかし・・・」


 保健室へと向かう手塚の隣に菊丸は並ぶ。だが、他の者にまで迷惑は掛けられないと思い、手塚が断ろうとすると、


「僕達が行った方が、あれこれ雑用とか出来るし、君一人でやるより効率が良いと思うよ」


 同じく隣に並んだ不二がそう言ったので、手塚は分かったとだけ言うと、保健室へと急いだ。






 生憎今日は保健医が出張で、保健室には鍵が掛けられていた。菊丸はすぐさま職員室から鍵を借りてきて扉を開けた。


 手塚はリョーマをベッドに優しく寝かせた。


 体温計で熱を測ってみたら、38度を超えていた。それでもリョーマは部活では何時もと変わりないように過ごしていた。普段口数が少ない事も手伝って、余計にそれが分からなかった。


 リョーマの恋人である手塚でさえ、菊丸がサーブを打つときまで気付かなかった程だ。あの時・・・一瞬だけ、本当に一瞬だけ、帽子の影から見せた辛そうな顔を見るまでは・・・。





「手塚、氷ないにゃー」


 冷凍庫の中を見た菊丸は手塚に声を上げる。


「何だと」


「どうやら、出張に行くから全部片付けていったんだね。全く、こんな所はしっかりしなくても良いのに」


 一緒に冷凍庫を覗き込んだ不二はどうしたものかと考えた。だが、無い物は仕方ないし、何処かから貰ってこようと席を立とうとすると、


「俺が行く」


 手塚がそれを制止し、自分が行くと言った。


「良いよ、手塚。俺達が行ってくるにゃ!」


「そうだよ、君は越前の傍に居てあげなよ」


「俺が行く。その件に関してはあてがあるからな。お前達はそれまで越前の事を看ていてくれ」


 そう言うと、手塚は保健室を飛び出し、ある場所へと向かった。















「珍しいな、手塚。お前が部活中に尋ねてくるなんて」


 手塚が向かった先は野球部。部長同士の会の時に知り合って以来、ここの部長は手塚によくしてくれた人物だ。


「お前に折り入って頼みがある。すまないが、氷を少し分けてくれないか?」


「氷?一体何に使うんだ?」


 そう聞かれたので、手塚は手短に状況を説明した。それを聞いた野球部の部長は納得し、了承したのだが・・・


「氷を分けてやるのは別に構わないのだが・・・。うちの氷は砕いてないから、大きいままだぞ?それに・・・実はな手塚、うちの部員が不注意で昨日桶を壊してしまってな。保健室まであれを運ぶのに、良い物が・・・って手塚!?」


 目の前で起こった光景に、野球部の部長は目を見張った。何と手塚は素手で冷凍庫から大きな氷を取ると、手に持って運ぼうとしている。


「おい手塚、お前テニスやるんだろ。だったらそんな手に負担が掛かるような事はするな。俺が何か良い物を探してきてやるから」


「事は一刻を争う。すまないが、俺は行かせてもらう。それと、後で改めて礼を言いに来るから」


 そう言うと、手塚はすぐさま保健室へと向かう。普段クールなイメージが強いから、こんなにも熱くなる手塚を間近で見た他の野球部員は皆、あっけに取られていた。





「・・・お前がそれ程まで大切に想う奴・・・か。初めて見たぜ、お前がそんなにまで余裕がないところを・・・」


 手塚の後ろ姿を見ながら、野球部の部長は一言そう呟いた。














「手塚遅いにゃー。一体何やってんだろう・・・」


 手塚が保健室を出てから、もう10分が過ぎようとしている。菊丸はリョーマの容態を看ながら一言そう呟く。




「菊丸、すまないがドアを開けてくれ!!」


 ドアの向こうから聞こえる手塚の声。菊丸は席をすぐさま立つと保健室のドアを開けた。


「にゃ、て、手塚!?」


 菊丸がドアを開けると、其処には両手いっぱいに大きな氷を持つ手塚の姿。しかも、床にはこの暑さで溶けたのであろう水が至る所に落ちている。


「早く入って手塚!今からこのアイスピックで砕くから」


 驚く菊丸を他所に、不二は手塚に早く入るよう促し、近くにあったアイスピックで持っていた氷を砕いた・・・。












「おチビ・・・少し落ち着いたみたいだね」


 手塚の持ってきた氷のおかげで、リョーマの容態は落ち着いた。それにはその場に居た三人も安堵の表情を浮かべる。





「不二先輩、頼まれてた薬買って来たっスよ!!」


 ガラっと保健室のドアを勢いよく開けた桃城は、不二に薬を渡す。


「ありがとう、桃」


「不二、これは一体・・・?」


「ああ、これ?手塚が氷を取りに行ってる時に、電話で桃に頼んだんだよ。ほら、桃って自転車通学でしょ。だから、走って買いに行くより早いと思って」


「そうか・・・」






「う・・・・ん・・・・・」


「大丈夫か、越前?」


「おチビ、大丈夫?」


「越前、大丈夫?」


 すると、リョーマはゆっくりと目を開けた。おぼろげな目でメンバーを見詰めるリョーマ。そんなリョーマにそれぞれ言葉をかける。



「俺・・・倒れて・・・・たんスか・・・」


「心配したんだぞ、おチビ」


 菊丸はぎゅっとリョーマの身体を抱きしめる。


「ありがと・・・」


 リョーマは荒い呼吸を繰り返してはいるが、それでも目の前の菊丸にちゃんと礼を言う。





「さて、越前が目を覚ました事だし、邪魔者はさっさと退散するよ。・・・それと、はい手塚。これ越前の薬とお水」


 不二はコップに注いだ水と、先程桃城から受け取った薬を手塚に渡した。


「すまない、不二。そして、菊丸も桃城も色々とすまなかったな」


「俺達はおチビに早く元気になってほしいからやったんだよ。おチビ、風邪治ったら一緒に試合だかんな!」


「俺はただ薬を買いに行っただけっスよ。それより越前、あんまり先輩達に迷惑掛けんじゃねぇぞ」


「ありがとう・・・先輩達」


 先程からの話を聞いていて、自分のせいで皆に色々と迷惑を掛けた事を知ったリョーマは四人にそう言った。


「素直な君も良いけど、やっぱり何時もの生意気な君の方が僕は好きだよ。早く元気になりなよ、越前」


 不二は優しくリョーマの頭を撫でて微笑むと、他の二人を連れて保健室を去っていった。







 一気に人が減り、静かになった保健室。二人共、余り口数が多い方ではないので会話が無い。


 それでも何とか話をしようと、リョーマは必死に言葉を探した。




「すいませんス、部長・・・。倒れた俺を此処まで運んで来てくれて・・・」


「もう俺達以外誰も居ないのに、それでも部長なのかリョーマ・・・」


 手塚はベッドサイドに腰を下ろすと、部長としての瞳ではなく、恋人としての瞳でリョーマを見詰める。




「ごめん・・・、国光」


 手塚の真っ直ぐな瞳に一瞬ドキっとしたリョーマは、赤くなって俯きながら謝った。その時リョーマの瞳に、何時もとは違う手塚の手が映った。


「!?」


 すぐさまリョーマはその手を取ると、


「ど、どうしたんスか、これ・・・」


 僅かに震えながらそう呟いた。


「問題ない、直に元に戻る」


「問題なくない!!もしかして・・・俺のせい?」


 病人だというのに、リョーマは必死に声を発した。リョーマがそう思うのも無理は無い。手塚の手は何時もの健康的な色とは違い、まるで血の通っていないような・・・そんな色をしていたのだから・・・。


「話してよ・・・。俺、国光の恋人っスよね?恋人なら隠し事なんてしないでよ」


 最後には泣き出してしまったので、手塚もまいったなと小さく息を吐くと、リョーマに事の全てを話した。






 話を聞き終えたリョーマは、手塚の左手を優しく握りしめている。勿論、リョーマの手ではその全てを包み込むことは出来ない。だから、リョーマはその足りない分を自分の心で補った。


「ごめん・・・・」


「だから気にするなと言っているだろう。俺はお前の為にそうしたいと思ったのだから・・・」


「でも・・・・・!?」


 手塚に反論しようと、リョーマが顔を上げた瞬間、手塚に唇を塞がれ、口移しで口内に何かを入れられた。


「んぅ・・・・」


 手塚はリョーマがそれを飲み込むまで唇を塞ぎ、飲み込んだのを確認すると唇を離した。


「今は何も考えずに寝ろ。元気になったら幾らでも話を聞いてやるから」


 手塚がそう言うと、やはり限界だったのだろう。リョーマはその後直ぐに眠りについた。


「あんまり俺を心配させないでくれよ、リョーマ。お前が倒れたのを見ただけで、心臓が止まるかと思ったぞ」


 手塚はリョーマを起こさないよう、ベッドに寝かせると、彼の額にキスをしてそう言った。








 二人の傍にあったカーテンは、まるで二人を隠すかのように優しく靡いていた・・・。





ミナトさんから頂いた暑中見舞いSSですv手塚さんが何だか熱いです!リョーマの為なら無茶もする手塚さんがとっても好きです。格好良すぎですね〜そしてラブラブvv
このSSが届いたとき私は午前中からテンション上がってました(笑)
ミナトさん有り難うございました。