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ひかりのさき

 

『空、午後六時に駅前で待て』

 見知らぬ番号から、オレの携帯にメールが入ってきたのは、今日の午後五時。

 知らない番号のヤツから六時に来い、なんて不気味だから、速攻削除してやったけど……頭から離れなかった。

 イタズラメールや悪徳商法の類いかと思ったから、忘れようかと思ったんだけど。

 なぜか、無性に気になっちまって。

「……寒ィ」

 オレは、がたがたと体を震わせながら、駅前に立ってた。

 最初は来るつもりなんかこれっぽっちもなかったんだぜ?

 けど、気付いたら足がフラフラ〜っと駅の方に向かってたんだよ。

「……はぁ。何で来ちまったんだろ、オレ」

 溜め息をつきながら、近くにあった時計を見る。

 午後五時五十六分。

 後少しで、六時だ。

 呼び出しといてオレに待たせるたぁいい度胸だぜ。

 普通呼び出したんなら、早目に来て待ってるってのが礼儀ってもんだろ。

 それにしても、寒ィ。

 今日は風が冷たく、体感的に寒いってのもあるけど……

 駅前を歩いてる人達。

「……何でカップルばっかなんだよ」

 腕を組んだり、肩を寄せ合ったり、手を繋いだりしているカップルばかり、通りすぎていく。

 あったかそうなラブラブカップルと、誰か分かんねぇヤツを待つ、独り身のオレ。

 比べると、心まで寒くなるっつーか……

「……何か空しくなるから、比べるのよそ」

 そう呟き、視線を下に俯けた。

 それにしても、一体誰がオレをこんなとこに呼んだんだ?

 イタメルって考えた時、祭の顔が思い浮かんだけど……

『駅前で待て』なんて、祭の文っぽくないし。

 藤守や七海ちゃんは論外だ。

 二人はイタズラでメールなんか送ってこねぇし、もし用でメール送ってきたとしても、

オレのこと『空』なんて書かねぇだろ。

 んー、他には……広夢? も、文章的に違うか。

 広夢のメールだったらもっと絵文字入ってるし。

 市川ー……も違うよなぁ。

 大体、今思い浮かんだヤツらって、みんな番号登録されてるしな。

 んじゃ、誰だよ? 他に思い当たるのって……

 と考えてると、ある人物の顔がポンと頭に思い浮かんだ。

 ――分かった。多分、間違いねぇ。

 オレをココに呼んだのは――

「3・2・1……ゼロ!」

 背後からそう声がして、オレは何事かと振り返った。

 瞬間。

「――……っ!」

 心臓が、止まるかと思った。

 目に飛び込んできたのは、光の世界。

 色々な色の光が、様々な形を作り、一つの世界を創り上げている。

 その真ん中に立っているのは……

「にいちゃ……」

「ンだぁ? そんなに驚いたか?」

 笑いながらこっちに歩いてくるのは、兄ちゃん。

 オレは声もなく、眩い光の世界と、歩いてくる兄ちゃんをただずっと、瞬きもせずに見ていた。

 キラキラ……と、光り輝くいくつもの光。

 その光を受けて、艶やかに光る、兄ちゃんの跳ねた黒髪。

 キレイだと思った。

 あまりにもキレイすぎて……何だか分からないけど、胸が切なくなった。

 幻想的すぎて、目の前にあるものは全部幻なんじゃないかと思ったからだろうか。

 手が届く距離のようで、届かないくらい遠くのように感じたからだろうか。

「お、おい、どうしたんだ、空」

 兄ちゃんが、心配そうにオレの顔を覗き込んでくる。

「……何でもねぇよ?」

 心配させちゃいけないと、オレは兄ちゃんに笑いかけた。

 目の前にいる兄ちゃんが、光とともに消えちまうんじゃねぇか……って、そんな気がしたんだ。

 そう思ったら、何だか不安になっちまって。

 そんなこと言ったら、兄ちゃんは笑ってバーカって言ってオレの頭をグシャグシャッと撫でてくれるんだろうけど。

「そんなことより兄ちゃん、コレを見るために、オレを駅前に呼び出したのか?」

 いけね、また思考が沈んだ。

 オレは咄嗟に訊きたかったことを思い出して、兄ちゃんに尋ねた。

「おぅっ。今日からイルミネーション始まるから、空と一緒に見たいと思ってさ」

 ニッと笑って言った兄ちゃんの言葉に、何だか胸があったかくなった。

 今年一番の相手にオレを選んでくれたのが、何より嬉しかったんだ。

 しかも、みんな一緒じゃなくて、オレと二人で……ってのが、何より。

 絶対そんなこと、言ってやんねぇけど。

「それはいいけどさ、あのメール簡潔すぎるぞ。オレ、誰からか分かんなくてビビったって」

「あれ? 空、オレの番号知らなかったか?」

「今のは知らねぇよ。前の番号なら知ってるけどさ。……兄ちゃん、最近までいなかったの忘れてねぇか?」

 兄ちゃんがいなくなってから、何度か兄ちゃんの携帯にかけてみたんだけど……

 携帯は解約されてた。……多分、相沢が兄ちゃんを連れてった時、オレ達に繋がるものがあったらマズイ、

と兄ちゃんの携帯を解約させたんだと思う。

 兄ちゃんを薬か何かで洗脳してたわけだから、もしオレ達の誰かから連絡が来て何か思い出されでもしたら、

相沢としてはマズかっただろうからな。

 ってもういねぇヤツのことなんか考えても仕方ねぇか。

「そいや、教えんの忘れてたな。いやーワリィワリィ! 兄ちゃんすっかり忘れてたよ」

 ハハハッと笑いながら、兄ちゃんがオレの背中をバシバシと叩いた。

「いててッ、兄ちゃん、ちょ、イテェって!」

「なに? コレくらいで痛いだと? 空くん、まだまだ修行が足らんぜよ〜」

 兄ちゃん、自分の力を基準に考えてんじゃねぇのか……

 兄ちゃんってホントバカ力だからな〜。腕なんか掴まれたら最後、振り解くのは不可能だからな……

「またこれから兄ちゃんがビシバシシゴいてやっから、覚悟してろよ〜?」

「ハハ、覚悟しておきます……」

 やる気満々の兄ちゃんに、オレは乾いた笑いを返した。

「さって、イルミネーション見っかッ! 空、ココのイルミネーション見たことあるか?」

「ん〜、ねぇな〜。駅前なんて寮生活してたらそうそう来ねぇからな」

 というか、街中まで出ることもあんまないんだよな〜。大抵近所のスーパーとコンビニで揃っちまうからな。

 買いに出てくるのなんて、服買ったり、何か特別な買い物する時くらいだもんな。

 高校ん時よかは増えたけどさ。今は高校と違って私服だからな。

「そっか。ココのイルミネーションはスゲェぞ〜? 毎年毎年変わるんだけどな、

遊園地のパレードみたいにいろーんなモンがあるんだ。

 ……って言っても、四年くらい前までのことしか知らねぇけどな」

 そう言って、兄ちゃんは苦く笑った。

 ……そっか。相沢に連れて行かれてから、見てねぇんだ。

 いや、もしかして、見てたかもしんねぇけど、洗脳されてたから、見てても覚えてねぇんだよな。

 ――相沢と二人でイルミネーション見てる兄ちゃんなんて想像できねぇけどな。っつか、したくねぇ……

「今年のテーマは遊園地のメリーゴーランドらしいぞ。兄ちゃん楽しみでさ〜♪」

 曇らせた顔を途端に明るくして、兄ちゃんは笑った。

「メリーゴーランドかぁ〜っ。じゃ、早く行こ! 兄ちゃんっ」

 オレは兄ちゃんの曇った表情に気付かない振りをして、オレはイルミネーションを指差した。

 

 階段を登り、広いところへと出る。

「……っわぁ……」

 小さなメリーゴーランド。中には小さな馬が色んな格好をして立っている。

 馬の間にはキラキラ光る馬車が。

 小さいから、それらには乗ることはできねぇけどな。

 メリーゴーランドの周りにも、馬がライトアップされて置かれている。

 ココは、小さな小さな遊園地。

 道行く人々は、それらに足を止めて見ている。

 子供の頃を思い出しているのか、とても嬉しそうに。

「どーだ? キレイだろ〜?」

 兄ちゃんが得意げに言った。別に兄ちゃんが作ったわけでもねぇのにな。

「うんうんっ。メチャキレイ!」

 内心そう思いながら、オレは大きくこくこくっと頷いた。

 だって、兄ちゃんが誘ってくれなかったら、見られなかったから。

「ありがと、兄ちゃん」

「へへっ、どういたしまして」

 そう言いながら二人で顔を見合わせて笑った。

「わ……ね、ちょっとあの人カッコよくない?」

「あ、ホント〜ッカッコイイ〜」

 その時、ふとどこからともなくそんな声が聞こえてきて、声のした方を見てみる。

 すると、女の子二人がチラチラ兄ちゃんを見て話をしていた。

 やっぱ兄ちゃんってモテんだなぁ。

 学園以外あんまり周りに女の子がいないし、その学園には兄ちゃんは

水都として来てるから、ちょい実感湧かなかったけど……

 兄ちゃんはカッコイイ。女の子からもそうだと思うけど、男から見てもそう思うんじゃねぇかな。オレもそう思うし。

 ……それは身内のひいき目ってのもあるし……その、好きだから……ってこともあると思うけど……

「声かけてみる? 男の子と二人で来てるみたいだしさ。ホラ、隣の男の子も可愛いしv」

「え〜やだぁ、恥ずかしいってばぁ」

 ツンツン突き合いながら、女の子二人はこっちを見て話してる。

 ぐ……隣の男の子って、オレのことか。『可愛い』って……

「ん? どした、空?」

「へ? い、いや、何でもねぇって」

「そーか? 階段の上にもイルミネーションあるけど見に行ってみるか?」

「あ、あぁ、行く行く!」

 兄ちゃんの言葉に、オレはぶんぶんと頭を振った。

 兄ちゃんは階段の方へと歩き出し、オレも兄ちゃんの隣を歩く。

 さっきの子達が、ホラ、アンタがボサッとしてるから行っちゃったよ〜、なんて言ってるのが聞こえてきた。

 残念だったな。まぁ、声かけてきたってダメだったと思うけど。

 だってさ、兄ちゃんは……オレの、なんだからな。

「……兄ちゃん」

 何となく、名前を呼んじまってた。

「何だ? 空」

 兄ちゃんが、こっちを振り向く。

「何でもねぇよ」

 オレは兄ちゃんに向かって微笑みかけた。

 兄ちゃんは不思議そうな顔をしてオレを見てきたけど、オレはずっと笑ってた。

「変なヤツ。……っと、着いたぜ〜」

 話しながら歩いてたら、階段を登りきって上に出た。

「はぁ〜……」

 出た途端視界いっぱいに広がったのは、大きな光のトンネル。

 赤、黄、青……いろんな色の光が、アーチを描き、トンネルを作っている。

 その下を歩いているのは、沢山のカップル。

 上を見ながら、手を繋いで歩いている。

「キレイだな〜」

 アホみたいに口をぽかんと大きく開けながら、オレは上を見上げて声を上げた。

「そうだな〜。あっちの方までずーっと続いてて、下を歩きながら見ると違って見えると思うぞ。……歩いてみるか?」

 兄ちゃんはトンネルを指差しながらそう言う。

「……いいのか?」

「何が?」

 何がって……あんなカップルばっかなのに、兄ちゃんは何とも思わねぇのかな。

 あんな中を、オレと二人で歩く、なんてさ。

 ――確かに、オレと兄ちゃんは恋人同士、だけど……

「オレと一緒に、って……」

 オレがそう呟くと、兄ちゃんはニッと笑って、頭をポンポンっと撫でてきた。

「なーにバカなこと言ってんだよ。お前と一緒だから、歩きたいんだよ」

「兄ちゃん……」

「さって。歩くか」

「……うん」

 二人でゆっくりとトンネルの方へと歩いていく。

 そして、トンネルの中へと入っていった。

「わ……」

 そこは、外とは全く違う、光と幻想の世界。

 どこを見ても、キラキラキラ、と色々な色の光が輝いている。

 上を見ても、右を見ても、左を見ても、光。

 少し、まぶしいくらいだけど、心地いい光。

 万華鏡の中って、こんな感じなのかな。

「……!」

 その時、手が、キュッと握りしめられた。

 手を見ると、兄ちゃんがオレの手を握っていた。

「兄ちゃん……?」

 どうしたんだろう。外で、しかも人がいっぱいいるところで手を繋ぐなんて。

 こんな、カップルで来るような場所で、男同士で手を繋いでるところなんて、見たら絶対変に思われるのに。

 兄ちゃんは、変な目で見られても、何か言われても、平気なんだろうか……

「大丈夫だって。こん中だったらだーれも見てねぇから。みんな、上見てるしさ。

 ……それに、今、こん中にいるヤツらにとっては、自分達だけしか存在してねぇよ」

 そう言って兄ちゃんは握っている手に力をこめてきた。

「兄ちゃん……」

 繋いだ手から、兄ちゃんのぬくもりが伝わってくる。

 寒いから手は冷たいはずだけど、オレにはあったかく感じられた。

「それに、一回くらい見せつけてやってもいいんじゃねぇ? ……オレ達がラブラブなのをさ」

「……兄ちゃん」

 ニッとイタズラっぽく笑う兄ちゃんに、オレは呆れたような一瞥を向けてやった。

 ラブラブって、何だよ……

 ――けど、そうだな。たまには、いいよな。

 オレだって、ホントは兄ちゃんはオレのものだ……って、言ってやりたいんだ。

 けど、それが無理なのは分かってる。

 だからこうやって、手を繋いで、兄ちゃんはオレのものだって主張するくらいは、いいよな。

「……そーだな。たまには、兄ちゃんに付き合ってやっか」

 オレは兄ちゃんと同じようにニッと笑い、兄ちゃんの手に自分の指を絡めた。

 兄ちゃんは驚いたように目を見開いたけど、すぐに笑ってオレの手を握り返してくれた。

 手を繋ぎ、指を絡め、光のトンネルを二人で歩く。

 出口は、ココからでも見えるくらいすぐ先にある。

 だから、この時間はすぐに過ぎてしまうのは分かってるけれど。

 この時間が、ずっと続いてほしい。

 無理ならばせめて、今のように、一緒に歩いていきたい。

 もう二度と、離れることのないように。

 そう、思いながら、オレは兄ちゃんの隣を歩いた。

<END>

 

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好きしょ真空小説でした。何気に真空久々でした……。オフではそこそこに書いていたんですけどね。

こちらフリーとなっております。ので、お持ち帰りはご自由にどうぞ♪ 報告も特に必要ありません〜、

が、メールか掲示板でご報告していただけると泣いて喜びますー。

11月23日の名古屋好きしょオンリー前日に見たイルミネーションを見て思いついた話です。

名古屋の方は知ってると思いますが、駅前にイルミネーションがあるんですよね。

何気に名古屋駅前がモデルになっております。

知ってる方はそこを想像して読んでいただければと思います〜。

マイ設定な真空になってしまいました;

4の真相後なのですが、空は真一朗さんが好きだという……(笑)真相EDじゃありえね〜。

「真相EDって何?」な話になってしまいましたね……;

このフリーは何気に色々兼ねたものになってしまいました。本当は2万HITフリー予定なだけだったのですが……

クリスマスイブに完成してしまったので、クリスマスフリーと、年末新年もですかね;

2万フリーって3万直前にUPすんなよ! という感じでスミマセンなのですが……(汗)作業遅くてスミマセン〜!

っていうかフリーやる前にキリリクやれよ! という感じですな……

ラブラブっぷりが少しでも出ていれば幸いです。それにしても真空好きな割にオンラインで書く機会が少ない〜。

 

 

 

コメント

あまねさんのサイトでフリーだったのを頂いてきました〜v

実はサイトにアップするのは初めての真空です。クリスマス万歳です!お祭好きなので(笑)私の中ではお祭=どんちゃん騒ぎという形式があるので、クリスマスも新年もハロウィンだって飲みまくってます!皆でわいわいがやがや食べたり飲んだりするの大好きなのです!時と場合によってですが(〆切近いとまた違いますが)

 

話を元に戻しまして、ラブラブな真空…感じですねv幻想世界に包まれて二人だけの世界〜ロマンチックです!

あまねさん、有り難うございます!フリーにして下さって!!

 

水城あまね様のサイト「ぴこぴこはんまー同好会」には当サイトのリンク集から行けます。