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あなただけ

 

 

 

 目を開けたら一人の男性がいた。

 オレは一目でこの人がオレの大切な人だって判ったんだ。

 どうしてかは知らない。

 知らなくてもいい。

 だって、考えてもどうしようもない事だから。

 その人はとても優しい目でオレを見てくれるんだ。

 オレを自分一人の物だって言ってくれるんだ。

 オレはこの人のことを“真一朗”って呼ぶ。

 誰かが、この人のことを真一朗って呼んでた気がするから。

 どうしてそんなことを思うのか分からないけれど、とても優しい人。

 思い出せないけど、とても優しい人がそう呼んでた気がするんだ。

 今、真一朗がオレに笑いかけてくれるのと同じくらい優しい笑顔で、オレに笑いかけてくれた気がするんだ。

 でもそんなこと、どうでもいいよね?

 真一朗がここにいて、オレに笑いかけてくれるんだから。

 ねえ、真一朗。

 どこにも行かないで。

 どうしてだか分からないけど、真一朗が傍にいてくれると、とても、嬉しいんだ。

 オレの傍にいてくれるだけで、とても、嬉しいんだ。

 どうしてだろうね?

 真一朗に連れられて大きな扉をくぐった。

 そこは白い無機質な広い場所だった。

 しばらく歩いていたら髪の長い綺麗な人に出会った。

 オレは初めて真一朗以外の人と出会ったことに嬉しくて声をかけたんだ。

「こんにちは。オレ、空。よろしく」

 その人はオレが声をかけるとすごくびっくりした顔をしたんだ。大きな目をそれ以上に見開いて。

「どうしたの?」

「…………羽柴」

 はしば? オレに向かって言ったの?

「違うよ、オレは空。真一朗がつけてくれたんだ」

 オレはにっこり微笑みながら言った。

 真一朗がつけてくれたこの名前を褒めてもらいたくて、真一朗がオレにつけてくれたんだっていう事を知ってもらいたくて。

 なのに、この綺麗な人は褒めてくれなくて、ただオレを見つめるだけだったんだ。

「……この名前、オレに似合わないかな?」

 オレは哀しくなってそう、聞いた。

 しばらくオレをじっと見つめてたんだけど、ふっと笑顔を向けてくれたんだ。

「似合うよ」

 真一朗に笑いかけられるのとは違う嬉しさがオレの中に溢れるのが分かった。

 あれ? どうしてだろう。オレ、この人に会ったことあるのかな?

「……オレ、君と会ったことある?」

「ないよ。今日が初めてだよ」

「そうだよね」

 そんなはずないもんね。

「君の名前は?」

「藤守 直」

「ナオくんか。よろしくね」

「! ――よろしく」

 …また会えるかな? 会ってもいいのかな?

「真一朗、ナオくんとまた会ってもいい?」

 オレは真一朗のものなんだから聞かなきゃダメだよね。

「だめだ」

 ……やっぱり。

 オレが項垂れると、真一朗の大きな手が頭をぽんぽんって叩いてくれた。

 嬉しい。

「私がいるだろう? 他は何もいらないだろう?」

「うん」

 そうだよ。真一朗さえいてくれたら良いんだ。

 初めて真一朗以外の人と会って、ちょっと浮かれたんだね。

 真一朗がつけてくれた名前を褒めてもらったから、嬉しかったんだ。

「行くぞ」

「うん」

 どこ行くんだろう。ちょっとわくわく。

「あ! 羽柴っ」

 誰かがオレの袖を掴んだ。

 それにオレ、空って名前なんだけど……。

「君、誰? オレ、空だよ。“羽柴”なんて名前じゃない。真一朗がつけてくれたんだ」

「!!」

 綺麗な人だな。誰だろう?

 真一朗の知り合いかな?

「………聞きたいことあるんだ」

「何?」

 それくらいなら良いかな? オレが他の人と話なんてしたら真一朗が哀しむし。

「“夜”って、知ってる?」

「“夜”? 今は夕方だよ」

 変なの。

 答えたら掴まれてた力が緩んだ。綺麗な人は大きな目を開いて動かなくなった。

 …どうしたのかな?

 ま、いっか。

 真一朗が行っちゃう。

「さよなら」

 オレは別れの挨拶を綺麗な人に向けてした。すると、綺麗な人の顔が歪んで目から涙が出てきたんだ。

 せっかくの綺麗な顔が涙で覆われる。

 ……どうしたのかな?

「空」

 遠くで真一朗がオレを呼んだ。

 いけない、行かなきゃ。

「じゃあね、さよなら。もう行かなきゃいけないから」

 オレは手を振って綺麗な人と別れた。

 走って真一朗の元へたどり着く。

「…気になるのか? あれが」

「どうして?」

 何でそんなこと聞くの?

 オレが不思議そうな目で真一朗を見つめたら、引き寄せられた。

 真一朗の胸に抱き寄せられる。広い、胸。

「私以外と話をするな。お前は私のものだ」

「うん」

 真一朗の声が震えてる。

 ごめんね、真一朗。不安にさせちゃって。

 もう二度としないから。

「ここ、どこ?」

「私の部屋だ」

「真一朗の部屋?」

 ここが、真一朗の……。

 嬉しいな。

 真一朗の中に入ったみたいで。

 真っ先に連れて来てくれたところが真一朗の部屋。

 他のどこでもない、真一朗のテリトリー。オレが入っていいんだ。

「空」

「何?」

 嬉しくて部屋中を見て回ってたら、真一朗がオレを呼んで腕を引いた。

 そのままベッドに倒される。

「あれだけでは足りないだろう?」

 数学教諭室と真一朗の部屋での激しい行為にオレはすぐ眠りに落ちた。

 身体が眠い、と訴えていた。

 本当は真一朗を残して眠りたくなかったんだけど、真一朗が“寝てろ”って言うんだ。

 それってオレの身体を心配してくれてんのかな?

 嬉しい。

 でも、平気だよ? 真一朗になら何をされても。

 心配する前にオレを抱きしめていて。

 ぎゅっと、抱きしめて離さないで。

 離れるのは嫌だよ。

 真一朗がここにいるって事、ずっと分かるようにしてて。

 オレの名前を、呼んで。

 真一朗がつけてくれたこの名前を。

 真一朗の声を聴いてるととても安心するんだ。

 不安にさせないで。

 オレには真一朗だけだから。

 

 

 

コメント

いわき栄花様からいただきました素敵すぎな作品です!
実は以前キリバンをリクエストした際、4のエンドどちらでも可という申し訳なさすぎなリクストをしてしまい、こちらは指示棒を持っていかないバージョンとなっております。今回ご本人から持ち帰り可という有り難いお言葉を頂きました(感涙)のでサイトにアップさせてもらいましたv
いわき様の書かれる空はとっても可愛くて溜まりません!水都先生も独占欲が強くて私のツボは刺激されまくりです!!
栄花様、本当に有り難うございましたv