明るい部屋に、自分の声が響く。
声に合わせるように濡れた音がやけに大きくて、自分が今どんな状態になってるか嫌でも知らされる。
――何だ、まだこんな事考えれるなんて、オレってまだヨユーじゃね?
狂乱
「空、どこへいく」
昼休み、午後一で講義があるオレは大学部に向かおうとしていた。それを知っているのに水都はオレを引き止める。
「え、講義があるから……」
「相沢に急な予定が入った。私の相手をしろ」
……相手?
朝もやったってのに、まだするのか? ――なんて、思っても無駄か。
オレは水都のペットなんだから……。
「服を脱げ。それとも、脱がされたいか?」
「……自分で脱ぐ」
水都に脱がされるのなんて冗談じゃねぇ。服がメチャクチャになっちまうじゃん。それに、必要以上にいやらしく脱がされるから嫌だ。
今日は一度やっちまってるから替えの服ももうないんだ。
水都のペットになった時から、オレは数学教諭室に着替えを置いておくようになった。そうしなきゃ水都がいつしたいなんて言い出すかわからない。
オレがこうして水都のペットになってれば、皆に被害が行くようなことはないんだから。
「……っ、………っああっ」
水都の指がオレの敏感なところを執拗にいじってくる。数時間前まで水都を受け入れてたそこは自分の意思に反して指を取り込むような動きをする。
朝にやった時は珍しくあのクスリを使われなかったんだ。いつもは朝だろうが、後に授業がまっていようがお構いなしにクスリを使われるから授業中まだ火照っている身体を押さえるのに必死だ。そんなオレを水都は面白そうに教壇から見下ろしてくるからいたたまれない。
「何を考えている」
「……っ、べ、つに……っ。――――っひあっ!」
オレの頭が現実から離れていたことに気付いた水都はいきなり指を増やしてきた。急に広げられたソコが悲鳴をあげる。
「――あ、ああ……」
「ふ。余裕だな」
「あっ、あ――、み、みな……と」
激しく出し入れされると、もう何も考えられなくなってくる。
オレいつの間にこんなんなっちまったんだろう。こんな屈辱的なことをされても、まだ足りないって思っちまうなんて。
「……いくぞ」
言葉と同時に指を勢いよく引き抜かれて、水都の熱く猛ったものが押し当てられる。そのまま息をつく間もなく一気に奥まで挿しいれられる。
「――――っは!」
「直ぐに入ったな。――ああ、そうか。朝のアレだけでは足りなかったのか」
「あっ、――んんっ」
悪態を吐きたくても言葉にならない、それ程水都が入ってくるのを待ち望んでいたかのようにきつく締め上げてしまう。
思い通りにならない身体が恨めしい。
「っく、そんなに締めるな」
そんな身体の反応が水都には嬉しくてたまらないのか、優しく目尻を舐められる。
「――ふ、あっ」
ゆっくり引き抜かれて行く途中、水都の動きが止まった。
背広の内ポケットから携帯を取り出す。
「相沢? ああ、……分かった。すぐ行く」
――え?
うそだろ。
「少し出てくる。そのままで待っていろ」
言うが早いか水都はさっさとオレの中から出て行く。
淡々と乱れた服を直している水都をオレは呆然と見た。
まじ? 帰ってくるまでこのままで居ろっていうのか?
こんな中途半端に煽られた状態で……。いつ帰るとも分からない水都を待つのか?
そんなのは我慢ならないというように無意識に腰が揺れる。早く突いて欲しくてメチャクチャに掻き回して欲しくて…。
「――そうだな。これを入れて待っていろ」
オレの反応を見て少し笑った水都はそう言って丸いローターを取り出した。
それにあの例のクスリを付ける。
「――っ! や、嫌だっっ!!」
「まだ分かってないのか? 私に反抗できる立場かどうか」
……畜生。
おとなしくなったオレの後ろに回りこみ、冷たいローターを入れられる。オレの指では届かない、奥へ。
「静かに待っていられたら後で褒美をやろう」
そう言ってスイッチを入れる。
褒美ったって、どうせオレが気絶するまでやり続けるだけだろ?
悔しくて水都をにらみつける。
「あああああ――――――っっ!」
いきなりの強すぎる刺激に声を抑えられない。
水都の馬鹿やろ。一番強いんじゃねーかっ!
「ああ、すまない。強にしてしまったな。だが、これくらいの方がお前にはちょうど良いだろう」
「やっ、あ、……あ…っふ」
強さを抑えることもしないで水都は笑いながら出て行った。
こんちくしょう!
どれくらい時間がたったのか、中が痺れてもう自分が感じてるのかも分からなくなった頃、ふ…っと意識が揺らぐのを感じた。
――――空君、何も君がそこまで自分を犠牲にすることはないんだよ?
ああ、奏司さんだ。心配そうにオレを見てるけど、オレ、大丈夫だよ。
――――いいんだ。これが今オレにできる精一杯のことなんだ。オレが水都の元に行けばそれで全てがうまくいくんだ。
――――空君だけをそんな目に遭わせる訳にはいかないんだよ。
――――ありがとう。奏司さん。でも、そうしたら誰が七海ちゃんを見てくれる?
あんな状態の七海ちゃんを任せられるのは、奏司さんしか思いつかないよ。
オレの言葉を聞いて奏司さんの顔が辛く歪む。
――――また、一人で外に出てったんだろ? ……兄ちゃんを捜しに…………。
――――っ、誰から? ……綾野兄さんか…。
――――違うよ。
綾野ちゃんがオレに素直にそんなこと言ってくれるわけないじゃん。
――――青君だね。
そう、チビにも悪いことするな。もう一緒に遊んでやれねぇ。
ああ、いいのか。藤守が遊んでくれるよな? あいつ、オレにムカつくことばかり言ってくるけどチビには優しいもんな。チビもオレより懐いてるみたいだし……。
――――じゃあ、オレもう行くよ。これ以上いたら皆に何か被害が出るかもしれねぇし。
――――空君……。
――――最後に一度、七海ちゃんと話がしたかったけど、やめとくよ。さよなら、奏司さん。
――――空君。真一朗を取り戻す方法を必ず見つけるから……。それまで待っててくれるかい?
――――うん。待ってるよ。
奏司さんもオレもそんなことは出来ないと分かってるのに口は無意味な言葉を綴る。
今まで相沢を追ってて何も出来なかったんだ。兄ちゃんや、奏司さんが本気になってやってきたことを奏司さん一人でいきなり良い方向に進むわけがない。
それでも、今のオレにはその言葉がとても嬉しいんだ。
オレはもう一度言った。
――――ありがとう。
……気が付くと、外は真っ暗だった。
オレの中にあるローターはもう動いてなかった。
そっか、強のままだったから電池が切れたんだな。
下肢が重い。どれだけ放ったんだろう。腹の上には白い乾いたものがこびりついていた。
…放ちすぎて、痛い。
でも、懐かしい夢だったな。奏司さん、元気でやってるだろうか…。七海ちゃんも――。
――やめよう。
結局、オレが七海ちゃんから兄ちゃんを完全に奪ってるんだ。たとえ、兄ちゃんの記憶を持っていなくても兄ちゃんなんだ。
七海ちゃんを一人にしてオレが兄ちゃんを独り占めしている…。
どんな状態であろうがそれが事実なんだ…………。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。オレが兄ちゃんを刺したりしなければ……。いや、もしかしたら藤守を忘れちゃってたから? オレが兄ちゃんに必要以上に懐いちゃってたから……?
――――オレがいなければ良かったのか?
そこまで考えついてオレの目から涙がこぼれた……。
何で…泣いても何もならないから泣くなって言い聞かせてたのに……。どうして涙がこぼれるんだろう。
もうとっくに枯れたと思っていた、涙。
オレがいなければ藤守の両親を殺さなかったし、祭も幼馴染をいきなり失くさなくてすんで、兄ちゃんもオレだから、って油断して刺されることもなくて、七海ちゃんと一緒に相沢を追ってはいるけれど、二人でずっと居れたんだ。チビも相沢に玩具にされずに普通の子供として生まれてきたかもしれない…。
――――なんだ、やっぱりオレがいなければ良かったんだ。
オレがいなければ皆幸せだったんだ。
こんなオレを大事にしてくれてたなんて奏司さんて、人が良いよな。綾野ちゃんも。七海ちゃんも…。
「……っく」
涙が止まらない。このまま壊れちまえば楽なのに……。
「……ら、空」
誰かがオレを揺り起こす。
誰?
っても水都しかいないよな。
何だ、オレ。壊れなかったんだ。案外強かったんだな…。前まで夜に負けてばかりだったのに……そういえば夜はいつから出なくなってたんだろう。もうずっと、夜の声を聴いてない。
夜? いるのか?
…………夜も居なくなっちまった?
俺の周りから大切な人がいなくなる。もうそんな人なんて居ないと思ってたのに……夜を忘れてたなんて……やっぱオレどこかおかしかったのかな?
「空!」
ああ、水都が呼んでたんだっけ。
起きなきゃ。
でも、眠いや。
「空!!」
ったく、うるせーな。眠いんだよ!
「――――水都っ!?」
一言文句を言ってから眠ろうと、目を開けたら水都が血相を変えてオレを起こしてるんだ。
身体に触れてる手も何か震えてて……。
「……空、もう起きないかと」
何だよ、こんな時だけオレの大好きだった兄ちゃんと似てるなんて詐欺だぜ?
メガネはどうしたんだよ。そんな風にしてると錯覚しちゃうじゃん。
オレは水都の髪に手を差し込み、セットを乱していく。すると兄ちゃんが現れる。
何かうれしいぞ。七海ちゃんもこんな感じだったのかな? 自分が水都を兄ちゃんに戻してってるって、実感。兄ちゃんに戻してやるって、決意。
そっか。兄ちゃんだもんな。今更だけど、水都は兄ちゃんだ。
中身がどうであれ、兄ちゃん。
今まで全然違う性格に一線を引いて接してたけど、『水都』と『兄ちゃん』って分けて呼んでちゃいけなかったんだ。
ごめんな、兄ちゃん。
今は水都の部分が強いだけで兄ちゃんはずっとオレと居たんだ。
兄ちゃんを取り戻す…なんて馬鹿なこと考えてたんだ。そんな必要ないのに。
その兄ちゃんが相沢とオレを選んだ。七海ちゃんには悪いけど、兄ちゃんがオレを選んでくれたんだ。
こんなどうしようもないオレを兄ちゃんは受け入れてくれるんだ。
「――空?」
オレは初めて自分からキスをした。
「空、待ってたか?」
「うん。お帰り。兄ちゃん」
あれからオレは大学を辞めた。
何故って、ずっと兄ちゃんのことを考えていられるように。
ここで待ってれば兄ちゃんが帰ってきてくれるんだ。オレの元に。
それにここって、数学教諭室の真下なんだぜ? 兄ちゃんが居ない時でも上を見上げて兄ちゃんの姿を思い浮かべるんだ。
兄ちゃんを待ち続けたあの4年間が嘘みたいだ。
「今日はオレのところに居てくれる?」
「ああ、相沢は今学会で忙しいからな。しばらくここに来る」
「マジ?」
嬉しくて思わず頬が緩んじまった。そんなオレを兄ちゃんは優しく見つめ返してくれる。
「明日の昼から数学教諭室へ来い」
「うん」
「ふ、一から躾け直した甲斐があったな」
やった。兄ちゃんに誉めてもらえた。
兄ちゃんに誉めてもらえるならどんな事だってする。
兄ちゃんに必要とされることが今のオレの幸せだから。
コメント
いわき栄花様に書いてもらいました!キリバン踏んでお願いしました。キリバン…承諾して下さってありがとうございます。もうもう全てが私の好みでこんな素晴らしい話を頂けて幸せですvv相水も入ってますし!!目一杯、堪能させて貰いました♪
いわき様こんな素敵なお話を書いて下さって本当にありがとうございましたv
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