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奇跡の海




「なぁ、水都…」
日課になった数学教諭室での、放課後の資料整理。
と、言っても、今日で学校は休み。
明日からは夏休みなのだから、今整理してるプリントはきっと、月曜から始まる補習授業で使うものなんだろう。
「なんだ…?」
水都はこちらを見ようともしないで、声だけで返事をする。
なんだよ、その態度。珍しくオレから声掛けてんのにさあ。
「…あの…さ…」
どうしようか…。
こんなの自分から言うの、やっぱ…やめようか…な。
「どうした?」
いつまでも言い淀んでいたら、不審そうな顔をして水都が振り返る。
あー…、どうしよう…。
水都って、海、てイメージ、しないよなぁ…。
どちらかと言うと、海って兄ちゃんの方だし。
「羽柴…」
あ、苛ついた顔になっちまった…。
「あ〜…、な、なんでもない!」
「言いたいことが有るなら言え」
「う…」
どうしよう…。
えーい、言っちゃえ!!
「…」
水都だって、こうやってオレが言うの待ってんだし!
「今日さ、これが終わったら海に行こう?」
「…それは…デートの誘いか?」
う…、そ…だけど…。
かぁー、と顔が熱くなる。
「そうか…」
ニヤ、て水都が笑ったけど…。
う、やっぱりこんなこと言うんじゃ無かったかも…。
「や、やっぱと―…」
「では、仕事を早く終わらせないといけないな…」
…りけしにはしてくれないですか…。
なんか物凄く選択肢、間違えた気がする…。
やっぱ兄ちゃんと、て言うべきか?
「な、なあ、そのままで行くのか?」
「ふ…。お前が私を選んだのだろう?」
ぁああああ〜!!
やっぱりか!?
やっぱりオレ、選択肢間違えちまったのか!?
「羽柴、お前も早くその仕事を終わらせるんだな」
「うぅ、分かったよ〜」
ったく〜、んなに嬉しそうに言われたら、兄ちゃんがいい!なんて言えないだろ!?
はー、オレ、最近水都に甘いのかなー…。
て、そんなことあるかー!!
はー、なにこんなに水都のことで悩んでんだろ…。
水都は兄ちゃんなのにさぁ…。
「ふ…、何を一人で百面相してるんだ?」
「へっ!?…っ、人の顔、じろじろ見てんなよっ!!」
ガーッ、て顔が熱くなるのが自分でも分かる。
なんでこんなに水都のこと考えてると、ドキドキしてくるんだろ…。
ドキドキしすぎて、胸が苦しい…。
でも恐怖からくるのじゃないし…。なんだろう、この気持ちは…。
「ふ…」
たまに感じる、兄ちゃんのソレよりも優しい、凄く優しい視線とか、仕草とかに、心がざわめく。
「っと、終わりっ!ほら、水都!」
バサ、とプリントの束を水都の机の上に置く。
水都の方は、もう書類の整理も終わってたみたいだし。
「なら行くぞ」
水都の傍に立つオレの腕を取ると、強引に扉の方に引きずられる。
「いいのかよ、確認しなくて!」
「もう慣れてきただろう?ならば大丈夫ではないのか?」
そ、そりゃあ、ちゃんと一度は自分でも確認してから渡したけどさぁ…。
て、オレの荷物!
「みな、まっ…」
待って、と言おうとして、ふと水都の空いている方の手に目が行ってしまった。
そこには、水都本人の鞄と、オレの荷物が握られていた。
い、いつの間に…。
「ぬかりは無いので、な」
ふ、て嫌味な笑みを浮かべる水都に飽きれた。
あー、もう!なんでそんなに浮かれてんだって!
「…ったく…」
こんな、水都の分かりにくい感情の変化が分かるくらい、オレって水都の傍にいたのかなぁ…。
「なにを呆けているんだ…。行くのだろう?」
「あ、うん!」
だよな、余計なことなんて考えてねぇで、今は水都に付いて行かなきゃ!
誘ったのはオレ…なんだし…さ。


水都の車に乗って着いた海は、人気のない、静かな海だった。
流石、て感じだよな〜、こうゆう静かな場所知ってるあたりは。
凪の水面にキラキラと反射して輝く、オレンジ色の太陽。
あー、もう日没なんだ…。
なんか海って、みんなでワイワイ騒ぐ場所、てイメージだったけど、こうゆうのも、いい…かも…。
「で、なんで海なんだ?」
車の中では始終無言だった水都が、ここに来て初めて口を開いた。
ま、当然の疑問だよなー。
「たんなる思いつきだよ…」
そ、思いつき。
偶然知った、海の日、て休日。
だってさ、オレら学生にしてみれば、今日から夏休みなんだし、休日なんて関係ないんだからさ。
だから…。
ガードレールに背中を預けていた水都に寄り添うように、オレもそのとなりに立つ。
「なんだ、遊んで来ないのか?」
「ん〜と、いい。水都といる」
なんでか知らないけど、なんとなく水都とこうしていたくなったから。たまにはこうゆう日があったっていいよな?
「変な奴だな…」
くしゃくしゃ、と優しい手つきで髪を撫でられて、思わずぽーっ、となっちまった。
な、な、なっ!!?
「クク…、いいのか?私の前でそんな無防備な姿をさらして」
ニヤリ、と笑われたと思ったら、髪を撫でる手が滑るようにオレの顎にまで来て、そのまま持ち上げられる。
「んっ…」
気がついたときには、水都の顔が目の前にあって、唇を奪われていた。
いつもみたいな、呼吸までも奪い尽くされるようなヤツじゃなくて、まるで大切なものを愛でるみたいな、そんな甘くて優しいキス。
「ぁ…ぅン…」
慣れないキスに腰が砕けて、水都のスーツにしがみつく。
「たまには…いいだろう?」
離れていく水都の唇に、寂しさを覚える。
なんでだろう、嫌じゃないと駄目なのに…。
「…うん…」
今日は特別なんだよな?
きっと…、こんなキレイな海と、夕日のおかげなんだよな?
「また来ような、水都?」
「…あぁ…、そうだな」
それでも、こんな風に水都と過ごす時間が愛しいから、また、を期待する。
こんな穏やかな時間をくれた、この日と、海に感謝しながら、太陽が水平線の向こうに消えるのを水都と眺めていた。










コメント

かなえ様有り難うございます!甘いです!今回は空からデートのお誘いだなんてもうラブラブですねvリクエストした時は本当に申し訳無さいっぱいでしたが正直快く引き受けて下さった時は嬉しかったですvそもそも甘いカップリングじゃないですしね(何ていってもTRAIN ENDINGですし…悲劇かよ)
お忙しい中、本当にありがとうございました!
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