激情
「今回も賢者の石の手掛かりは無かったようだね」
そういうと、目の前のソファに腰をかけている子供は眉間に眉を寄せて私を睨む。
私はあえてニッコリと笑顔を浮かべる。
勿論、子供は一層眉を寄せる。
(可愛い顔が台無しだな)
口にしたら子供はもっと拗ねるから勿論声に出して言わないが…。
子供はそれがとても嫌味ったらしく見えるようで(実際、そう見せているのもあるのだが)顔を横に背ける。
「どうかしたかい?鋼の?」
「別に」
いかにも理解できないといった風に声をかけると、ぶっきらぼうだがきちんと返事が返ってくる。
「なら顔をこちらに向けてくれないかな?報告はまだ始まってもいないのだから」
そう、今しがた子供…もとい、鋼の錬金術師でもあるエドワードが東方司令部にやってきたばかり。
今回もいつもと変わらず旅の間に様々な事件に片足を突っ込んでくれたのは、彼らの足取りを逐一報告をするように手配しているからなのだが、それは彼等には教えてはいない。勿論、聡い子供には気付かれていると思うが、何も言われてないのでこちらも答えないだけだが。
「わかってるよ!」
「なら始めたまえ」
両手を交差し、口元を手で隠しながら私は子供に促す。
「あぁ…報告は当たり前だが私の間の前に来てしてくれ」
目で今すぐ来いと伝える。
子供は嫌々ながらも素直に私の前に歩いてくる。
口では何だかんだと言ってもこの子供は最終的には私の命令には逆らわない。
そんな事を言ったらきっと目の前の子供は顔を怒りで真っ赤に染めて、文句を言うので口には出さない。
「さぁ、始めたまえ」
私は口元を少しだけ緩めて、彼の「嫌な笑み」を浮かべて報告を開始する。
その時だけは彼は自分を見てくれるから。
少しでも彼の心の中に自分という存在が入るように。
たとえ、それがどんな形でも…。
君の真っ直ぐな金の瞳に私を映し、綺麗な心の中に存在を入り込ませる。
それだけでどんなに自分が歓喜を上げているのかこの子供はきっと知らないだろう。
こんなにも荒れ狂う心を君は全く気付かないだろう。
本当はその瞳に自分以外の人間を見せたくない。
心に自分以外の人間を住まわせたくない。
今まで全くと言って良いほど沸き上がらなかった『独占欲』。
私の中は焔のような激情にかられている。
勿論、そんな感情を表に出す気も更々無い。
だから今はまだ君にとって私は「苦手な上官」「口うるさい後継人」という立場でいよう。
いつかは、私の側にいて貰うように今からゆっくりと策を練らないとね。
君を手に入れる為の計画を。
コメント
2作目の話です。ちょっと黒い大佐になってしまった…エドの出番も少ないし(汗)
初めはラブラブな感じで行こうと思っていたのに…。どうして?
ラブラブなロイエドが好きなのに自分どんどん逆の方向に向かっているのはどうしてだろう?